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卑劣なり!高岩!まさしく悪魔の所業!
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高岩直人はようやく目を覚ます。すると、周りでは勇者一行とトライバーとセザルドの一行が接戦を繰り広げているではないか。
高岩は焦りを感じた。壁の間際へと追い詰められた鼠は一か八かの思いで、猫を噛んで、窮地を脱するというが、高岩もこの際に最悪の方法で窮地を脱する事になったのだ。
彼はミサイルハンドとナイフハンドを両手に装着し、あろう事か、敵味方問わずにミサイルとナイフとを放ち始めたではないか。
当然、両一行からすれば、不意を突かれた形となり、対処などできるはずもなく、多くの仲間たちがその凶刃や凶弾の犠牲となる形になったのである。
なんという卑劣なヒーローだろう。街の冒険者たちも咄嗟の出来事に呆然としている。
が、事態を理解すると、例外なく高岩を罵倒し始めていく。
暫くは黙ってその罵詈罵声を無言で聞いていた高岩であったが、やがて『カネの心を持つ詐欺師』という言葉が聞こえた瞬間にそれまでの深海の洞窟のように静まっていた口を開き、ナイフハンドから一本のナイフを取り出し、その刃を陽に翳しながら低い声で言った。
「……命懸けで、魔王軍の幹部と戦った者に対し、詐欺師だと?言葉に気を付けてもらいたい。よくも、そんな事を言えたものだな」
ただならぬ黒いオーラを放つ高岩を見て、たじろぐ冒険者たち。
高岩により強制的に口を閉ざされると、高岩はある一人の冒険者の目の前にナイフを飛ばす。
「今度、詐欺師などと仰られれば、その頭に突き刺しますよ」
高岩の目は本気である。今にもその眼光だけで殺せそうな程の目である。
高岩はそれだけ呟くと、ナイフを背後に受けて弱々しい息を吐き、憔悴した様子を見せるトライバーに向かって周りに振動を感じさせる程の大きな声を張り上げて言った。
「覚悟しろッ!魔王軍の幹部めッ!ここから先は拳法の使い手、岸友也が相手をするッ!」
この男はあれ程の事をやらかしておいて、未だにヒーローの名前に執着するのだろうか。
恐らく、彼に力を与えた神も真上で呆れ果てているに違いない。
だが、高岩本人は清々しい気分であっただろう。
今にも鼻歌でも歌いそうな顔がそれを証明している。
高岩は弱っているトライバーに向かって容赦なくトドメのミサイルを発射していく。
すると、トライバーは断末魔を上げて、見るも無惨な死を遂げてしまったではないか。
高岩は完全に勝利の感情に酔っていた。そうでなければ、この後に彼自身もどうしようもない窮地まで、追い詰められたりはしなかっただろう。
高岩がスキップでもしそうな程のかろやかな足取りで、セザルドの元へと向かおうとした時だ。
背後に強烈な痛みを感じ、そのまま地面の上へと倒れていく。
「……ッ!ァァァァァァァァァァ~!!」
高岩の叫ぶ声を聞いて、慌てて二人の子供が高岩の背中に寄ると、そこには満身創痍になりつつも、高岩の背中を刺す勇者の姿。
「お前にだけおいしい思いをさせて貯まるものか。この金無心野郎め……オレらが味わった痛みをテメェも味わいやがれ」
勇者はそれだけ告げると、そのまま地面の上へと倒れ込む。
同時に、高岩も。
「そ、そんな親父……」
「いっ、いやぁぁぁぁ~!!!お父さんッ!」
義喜と菜穂子は慌てて、高岩の元へと駆け寄っていく。
高岩は焦りを感じた。壁の間際へと追い詰められた鼠は一か八かの思いで、猫を噛んで、窮地を脱するというが、高岩もこの際に最悪の方法で窮地を脱する事になったのだ。
彼はミサイルハンドとナイフハンドを両手に装着し、あろう事か、敵味方問わずにミサイルとナイフとを放ち始めたではないか。
当然、両一行からすれば、不意を突かれた形となり、対処などできるはずもなく、多くの仲間たちがその凶刃や凶弾の犠牲となる形になったのである。
なんという卑劣なヒーローだろう。街の冒険者たちも咄嗟の出来事に呆然としている。
が、事態を理解すると、例外なく高岩を罵倒し始めていく。
暫くは黙ってその罵詈罵声を無言で聞いていた高岩であったが、やがて『カネの心を持つ詐欺師』という言葉が聞こえた瞬間にそれまでの深海の洞窟のように静まっていた口を開き、ナイフハンドから一本のナイフを取り出し、その刃を陽に翳しながら低い声で言った。
「……命懸けで、魔王軍の幹部と戦った者に対し、詐欺師だと?言葉に気を付けてもらいたい。よくも、そんな事を言えたものだな」
ただならぬ黒いオーラを放つ高岩を見て、たじろぐ冒険者たち。
高岩により強制的に口を閉ざされると、高岩はある一人の冒険者の目の前にナイフを飛ばす。
「今度、詐欺師などと仰られれば、その頭に突き刺しますよ」
高岩の目は本気である。今にもその眼光だけで殺せそうな程の目である。
高岩はそれだけ呟くと、ナイフを背後に受けて弱々しい息を吐き、憔悴した様子を見せるトライバーに向かって周りに振動を感じさせる程の大きな声を張り上げて言った。
「覚悟しろッ!魔王軍の幹部めッ!ここから先は拳法の使い手、岸友也が相手をするッ!」
この男はあれ程の事をやらかしておいて、未だにヒーローの名前に執着するのだろうか。
恐らく、彼に力を与えた神も真上で呆れ果てているに違いない。
だが、高岩本人は清々しい気分であっただろう。
今にも鼻歌でも歌いそうな顔がそれを証明している。
高岩は弱っているトライバーに向かって容赦なくトドメのミサイルを発射していく。
すると、トライバーは断末魔を上げて、見るも無惨な死を遂げてしまったではないか。
高岩は完全に勝利の感情に酔っていた。そうでなければ、この後に彼自身もどうしようもない窮地まで、追い詰められたりはしなかっただろう。
高岩がスキップでもしそうな程のかろやかな足取りで、セザルドの元へと向かおうとした時だ。
背後に強烈な痛みを感じ、そのまま地面の上へと倒れていく。
「……ッ!ァァァァァァァァァァ~!!」
高岩の叫ぶ声を聞いて、慌てて二人の子供が高岩の背中に寄ると、そこには満身創痍になりつつも、高岩の背中を刺す勇者の姿。
「お前にだけおいしい思いをさせて貯まるものか。この金無心野郎め……オレらが味わった痛みをテメェも味わいやがれ」
勇者はそれだけ告げると、そのまま地面の上へと倒れ込む。
同時に、高岩も。
「そ、そんな親父……」
「いっ、いやぁぁぁぁ~!!!お父さんッ!」
義喜と菜穂子は慌てて、高岩の元へと駆け寄っていく。
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