クズ家族、異世界に転移、転生する〜代わりに、借金五千万円返済できなかったら、地獄行きとかマジですか！？〜

高岩直人怒る！前世での因縁を思い出させた相手に鉄槌をッ！

高岩の両眉はこれ以上ないほどに大きく吊り上がっていた。
憤りを隠し得ない。気が付けば、両手の拳が強く震えていたではないか。
いいや、拳ばかりではない。全身が強く打ちひしがれ、プルプルと震えている。

聖子ちゃんカットのアフロを震わせながら、高岩は両手の拳を突き出し、ドライバーに向かって告げた。

「言葉に気を付けてもらいたい。こっちはあの台詞のせいで、前世では体重四十九キロになってしまったんだ」

「体重、五十キロ切りましたってか……それで、同情を買おうとしているのか？」

「黙れッ！貴様に何がわかる！？魔王の飼い犬めッ！」

トライバーにとってその言葉は酷く屈辱的な言葉であったに違いない。
その証拠に、トライバーは歯をカチカチと鳴らし、その歯を鳴らす音をセザルドはキチリと聞き取っていた。
だが、暫くすると、その言葉も聞こえなくなってしまう。
古代中国の歴史上の人物のように怒りのあまりに憤慨死したのかと思って、セザルドがトライバーの顔を覗き込もうとすると、不意に笑い声が聞こえた。

それも、ただの笑い声ではない。辺り一帯に響き渡るような大きな笑い声である。
大きく笑い始めたトライバーはセザルドを押し退け、高岩に向かってその剣先を突き付け、胸を張りながら告げた。

「バカめ！この戦いが終わった後には、オレは魔王よりも偉いあのお方よりこの世界の支配者の地位を貰う予定なのだッ！」

「な、なんだって！？」

高岩は意表を突かれたらしく、咄嗟に胸をのぞけさせてしまう。
だが、それ以上に驚いたのは義喜と菜穂子の両名。

「ま、待てよ！完全にこれ、世界的有名特撮ユニットの二作目の設定じゃねーかッ！普段戦っているボスより上位の存在がいるっていう設定は完全にそうだよッ！」

「あぁ、アレだよね？確か、じゃっーー」

「おっと、それ以上言うんじゃあない」

大変なワードを呟こうとした妹の口を義喜は咄嗟に防ぐ。

「……お前たちが何を言っているのかわからんが、ともかく、貴様らはオレの出世のために邪魔なんだよ。さっさと、早く死んでくれないかな」

「次はあいつかよッ！苗字に草が付く雅人の台詞じゃん！」

義喜の突っ込みが冴え渡る。

「口調はどちらかといえば、ドラゴンに変身する敵幹部に近いけどね」

菜穂子が例に出しているのは2003年に放映されたタイトルに5が三つ付くかの有名な変身ヒーローシリーズに登場する敵の幹部の一人である。
だが、トライバーにはそんな事情など知る由もない。
得意げな顔を浮かべたまま、高岩へと切り掛かっていくではないか。

「お、お父さん！」

「親父ッ！」

予想外の事態にそれまでの漫才めいたやり取りも忘れ、父親の危機に向かって悲痛の声を上げていく。
高岩は子供二人のいう事を聞いて、慌てて攻撃を避けたのが、幸いしたのか、彼の体には傷一つ付いていない。
高岩は器用に体を転がしながら、そのままトライバーに向かって転がっていく。

そして、目の前に辿り着くと、彼の正面からナイフハンドを喰らわせていく。