クズ家族、異世界に転移、転生する〜代わりに、借金五千万円返済できなかったら、地獄行きとかマジですか！？〜

魔王軍幹部二人現る！敵討ち実行、高岩はどこだ！

「早くタバコを吸わせろッ！」

「まぁ、待て、トライバー。オレたちの目的である敵討ちが済めば、すぐにでも吸わせてやるからさ」

トライバーと呼ばれた男の相棒が屈託のない顔を浮かべ笑う。

「やったぜ！トライバー！じゃあ、一服が終わったら、パチンコに行くのにも付き合ってくれよ！」

「その時は女も一緒だぜ」

相棒の男は根っからの女好きである。どのくらい好きかと問われれば、魔王の城の麓の街の酒場で宴会を開き、その参加者の女性全てにキスをさせるくらいである。
この男の名前はセザルド。魔王軍の幹部であるのと同時に拳法の達人であり、彼には屈強な弟子の五人衆がいるとされている。
ちなみに、両者ともに強力な鎧で体を覆っている。

トライバーは赤色の頭の先端が尖った兜に胸部にゴツゴツとしたデカイ鎧を身に纏っている他に、それ以外の箇所を黒い鎧で覆い隠している。
セザルドは一見バカ馬鹿としか評する事のできない奇抜な兜で身を隠している他に、全身を覆っている鎧も虹色でやけに派手派手しい。
まるで、戦国時代に現れていたとされる傾奇者のようだ。

そんな二人の背後には五人の胴着を着た鶴に蛇、象、虎、象の怪物が後を付いてきているではないか。
彼らの名称は通称、セザルド四天王。さまさしく、魔王に連なりし、セザルドの弟子にして直属の部下に相応しい名称だろう。
計六名が目指しているのはこれまで、自分たちの仲間である幹部たちを次々と倒したとされる伝説の無心冒険者、高岩直人の住う街。

目的は義喜の言う通り、敵討ちと総攻撃の両方である。
これには、魔王軍の幹部が自分たち二人にまで減らされた事が原因である。
焦りのために、魔王が自分たち二人を高岩直人並びに高岩一家の討伐のために向かわせたのである。
魔王軍を総動員する前に、少しでも勝率を上げるために、一家を狙うというのが理由であるといってもいいだろう。

おまけに上空には魔王軍の秘密兵器である空飛ぶ龍の乗り物までもが控えている。
元々、これは魔王が人間の拳法使いの老子から設計図を盗み取り、作成したものであるとされている。
これを聞いたトライバーは思わず突っ込みを入れてしまう。

「ちょっと待て！それ、完全にアレじゃねーか！金の心を持つ拳法家が主人公の劇場版の設定じゃあねぇか！」

「すごい、今更だけどな。そもそも、この話自体がーー」

「おおっと、それを言い出したら、オレらの存在否定に繋がっちまうぜ！」

トライバーは危うい発言をしそうになった相棒を慌てて宥めていく。
相棒は慌てて両手てで口を塞ぐ。

「ったく、しっかりしろよ」

当初のキャラクターとは打って変わり、トライバーはセザルドを嗜めていく。
こんな風に二人は多少、ヤバめの会話を混ぜながら高岩たちの住む街へと辿り着いたのである。