クズ家族、異世界に転移、転生する〜代わりに、借金五千万円返済できなかったら、地獄行きとかマジですか！？〜

やったぞ、鬼の首領の最期！＋外伝:一日外出目録ヨシキ前編

高岩の攻撃により、疲弊した鬼川にならば、例の魔法も効くかもしれない。
菜穂子はそう判断し、父にその場から下がる様に叫ぶと、例の爆発呪文を詠唱し始めていく。

「太陽の神よ、我に力を与えたまえ！火の神よ！吾に力を授け、闇を吹き飛ばす力を与えたまえ……そして、我の元に集まる火薬たちよッ！これから、爆裂魔法を放たんとする我に大いなる力を与えたまえ……必殺ッ！エクスプロージョン・フラッシュッ！」

全ての詠唱が終わるのと同時に赤ん坊の怪物を巨大な爆発が襲い、彼に悲鳴を上げさせながら地面の上を転ばせていく。
だが、鬼川はまだ生きている。満身創痍の状態ではあるものの、あの世とこの世の境目となる川を渡る寸前のところで、踏みとどまっている。
だが、高岩はそんな赤ん坊の元へと容赦なく激突し、彼の体にぶつかる事により、彼の体全体を揺さぶり、その隙を逃す事なく、変身を解除し、ミサイルハンドから小型のミサイルを赤ん坊に向かって撃ち込む。

同時に、赤ん坊が巨大な爆発を起こし、高岩はその爆風により吹き飛ばされてしまう。
咄嗟に肩を打ったものの、命に別状もなければ、体に異常もない。
高岩はゆっくりと上半身を起こし、鬼川の最期を確認した。

「やったぞッ！これで、報酬は全てオレのものだぁぁぁぁ～！！」

高岩は両腕を掲げて、喜びを露わにしていた。
だが、この時、彼の頭の中からは渡される報奨金が神により、前世からの借金を差し引かれた状態によって渡される事をすっかりと失念していた。
直後に亮一から渡された金を見て、またしても叫ぶ事になってしまったのだが、それはまた別の話である。















「なぁ、親父。そろそろ、服買いに行きたいんだけど、いいかな？」

鬼川との戦いが終わった一週間後に、義喜は唐突に父と妹に向かって言った。
高岩家の財務の紐は普段は義喜が握っており、要請に従い小遣いを渡すというスタンスなのである。
だが、彼が家の財布を握って、金を使うとなれば、当然、家族に報告をしなくてはなるまい。
義喜はこの時、街の商店街に売ってある服が欲しかったのである。

動機が動機であるので、すんなり通らないとは思ってはいたが、意外とその許可はすんなりと下りた。

「いいぞ、何着も買うのならばともかく、一着だけだろ？なら、大丈夫だ」

「お兄ちゃん出掛けるの？じゃあ、ついでに雑誌買ってきてよ。フィフティーンってやつね。漫画とかいっぱい載ってる」

「前世でいうところの少年ジャ○プみたいなやつだろ？わかった。わかった」

義喜は家族の許可を得るのと同時に、部屋に戻り、得物のバイオリンを背中に背負った後に自宅の金庫を回し、金貨を数枚取り出すと、それをポケットの中へと無造作に突っ込む。
そして、義喜は街へと向かう。彼は買い物に向かう前に、一日の日課であるバイオリンを演奏しながら、自身の歌を披露する事にした。
だが、いつも通りに観客は数人。義喜は気を悪くしながらも、銅貨三枚を獲得し、買い物へと向かうのであった。