クズ家族、異世界に転移、転生する〜代わりに、借金五千万円返済できなかったら、地獄行きとかマジですか！？〜

やったぞ！高岩！パワハラ鬼野郎の最期！

車は高岩がアクセルを踏むたびに力が強まっていく。
だが、今度は鬼川も容赦はしない。しっかりと両手で車を受け止め、高岩の突進を受けてめていく。
側で待機している冒険者たちには車と赤ん坊の姿をした怪物とが互角に映っている。

「お父さん、大丈夫かな？」

「平気さ、親父を信じよう。なにせ、親父は金の心を持つ男なんだからな」

義喜は拳を強く握り締めながら、目の前にて繰り広げられる父の車を見つめていく。
中々に激しい接戦が繰り広げられ、車と赤ん坊とが交互にぶつかり合っていく。
その度にお互いの口から放たれる罵倒合戦も聞き応えがある様な気がしてならない。
無論、距離もあるので、二人の子供や冒険者たちの耳には届かないのが惜しまれる。

「この聖子ちゃんカットの老齢の親父がッ！さっさと地獄に行ったらどうだ！？」

「オレは行かないぞ！それどころか、オレは貴様を倒し、貴様の報奨金を得て、その金で今世でも豪遊するんだッ！」

「はん！散々、人から騙した金で刺身や焼き肉を食っておいて、まだ豪遊するというのか！？貴様は！？」

「騙し取った！？ファンのみんなはオレが好きだから、金をくれたんだッ！」

高岩はこの際に絶対に喋ってはならない本音を叫んだ事に気が付き、慌てて口を両手で塞ぐ。
その際にハンドルから手が離れ、車が向きを変えてしまう。
赤ん坊の元から離れ、近くの森へと突入しそうになったところを慌てて元の方角へ戻すものの、今更、方向を変えたところで間に合うわけがない。

高岩の車は蛇行運転を繰り出し、その都度、鬼川の巨大な手が高岩を襲っていく。
高岩は必死にハンドルを切り、鬼川の手を避けていくものの、やはり、限界が来たのだろう。
真上から大きく手を叩きつけられた際には避けきれずに、車の外へと叩き出されてしまう。

「ま、不味いぞ！」

「追い詰めたぞ、格好の悪い聖子ちゃんカット野郎め……大体、貴様、本気でその髪型が似合うとでも思っているのか？ダサいぞ」

「貴様ッ！岸友也をバカにするのもいい加減にしろッ！」

高岩は何度も繰り返し、髪型を馬鹿にされて堪忍袋の尾が切れたのか、ミサイルハンドとナイフハンドを交互に用いながら、鬼川に向かって発射していくが、彼は意に変えする様子さえ見せない。
平然とした調子で彼は言った。

「フフフ、私は無敵だ。貴様の様なヒーロー気取りの無心男程度では相手にもらならんと思え」

「おのれ！ならば、これでも喰らえッ！」

高岩はそう叫ぶと、自身の腕に借り物ハンドを付け、鬼川から巨大な赤ん坊になる変身能力を盗み出す。
高岩の体が大きく光ったかと思うと、高岩の体はみるみるうちに巨大な赤ん坊へと変貌していくではないか。
そして、動揺する鬼川に対し、彼は一切の容赦のない攻撃を仕掛けていく。

鬼川の頬を張り飛ばし、その腹を容赦なく踏み躙る。
その姿はまさしく鬼。暴れ回る姿に元ヒーローの面影はどこにも見られない。
そして、執拗に甚振り続けたためか、鬼川の体力が減り、彼は憔悴していた。