クズ家族、異世界に転移、転生する〜代わりに、借金五千万円返済できなかったら、地獄行きとかマジですか！？〜

危うし！高岩のメール攻撃！

「炎の魔神よ！私は求めるッ！我に太陽のような燃え盛る炎をッ！そして、我に燃え盛るようなーー」

「あぁ、オレのハートは太陽さぁ～あぁ、オレの恋は日光さぁ～」

義喜は前世で歌っていた曲を熱唱して、妹の詠唱を阻止していく。
詠唱を阻止されたばかりではなく、そんなに上手くもない音楽を聞かされたために、菜穂子は思わず両眉を寄せてしまう。

「お兄ちゃん。なに変な歌を歌っているの？」

「へ、変な歌ってなんだよ！オレが前世で作詞作曲した曲だぞッ！」

「それが変な歌だって言ってるんだよッ！このヘタクソ！」

「へ、ヘタクソってなんだッ！このクズニート！」

「なんだと、ヘタクソ！」

「ヘタクソ！」

「クズニート！」

この後も兄妹による『ヘタクソ』と『クズニート』の応酬が続くので、堪らなくなったのだろう。
高岩が二人の言い争いに口を挟む。

「お前たち、いい加減にしろッ！早くオレを助けるんだッ！」

これを聞いて、慌てるのは菜穂子。彼女はなりふり構わずにいられなくなったのか、剣を振り回しながら、父を囲む鬼たちに向かっていく。
菜穂子の剣が直撃した他に、義喜が音符の爆弾を発動させる事により、何体かの鬼を葬っていく。高岩の叫びが二人を動かし、結果的に高岩に対し、よい運命をもたらしたらしい。
だが、トランプゲームにおいて、誰かが上がれば、誰かがババを引くように、同じく運命においても、鬼川は高岩により、悪い運命を引き寄せられてしまっていた。

高岩を逃したばかりではなく、折角召喚した自身の手駒の鬼たちを殺されてしまったのだから。
鬼川はもう一度、バチで宙の上を叩くと、どこかで見覚えのある鬼を召喚していく。

「これが、上の方の鬼だ。貴様らでは相手にもならんぞ」

鬼川が呼び出したのは遊郭で働いていそうな風貌をした絶世の美女の妹と醜男の兄という鬼や壺の中に入った性格の悪そうな顔をした鬼。更に天狗のような格好に老人の風貌をした鬼や両腕に黒色の刺青を刻んだ武道家のような格好をしている鬼、そして、宗教家のような青色の服をしている鬼などがいる。
そして、それを率いるのは侍のような格好をした多くの目玉を生やした鬼。

「これが私の自慢である上の方の鬼たちだッ！全員が相応の実力者揃いッ！貴様のようなヒョロヒョロのジャガイモ面の親父などでは相手にもならぬッ！」

「あれ、完全に版権的にまずい奴だろ！？」

「ええ、完全に某鬼退治マンガの上の方の鬼たちだよッ！」

義喜と菜穂子の突っ込みが冴え渡る。だが、鬼川はそんな二人の叫ぶ姿になど考慮する事なく、鬼川は配下の鬼たちを高岩一家へと向けていく。

（不味いぞ、あれだけの強そうな奴らを相手できるわけがない……義喜と菜穂子では勝てない……）

高岩は悩んだ。そして、悩み抜いた末に彼は叫んだ。

「カモーン！メールハンド！無心メール送信開始ッ！」

高岩がメールハンドを向けるのと同時に、強そうな鬼たちは頭の中へと流れ込んでいく無心メールに耐えきれずに、地面の上をのたうち回っていく。
高岩はその瞬間を逃さなかった。すかさず、のたうち回る鬼たちに向かってミサイルハンドを用いてミサイルを撃ち込む。
途端に、鬼たちは小規模な爆発を起こして吹き飛んでしまう。

「おおお！流石は親父！明日の昼頃まで引っ張りそうな敵をこんな一瞬で葬り去ってしまうなんてッ！」

「お父さんカッコいいッ！」

義喜が興奮のために妙な事を口走ってしまった事を除けば、高岩は照れて隙を見せてしまうのも当然といえるかもしれない。
だが、高岩はそこは照れたりはせずに一人になった高岩を睨む。