クズ家族、異世界に転移、転生する〜代わりに、借金五千万円返済できなかったら、地獄行きとかマジですか！？〜

見つけたり！必殺“神頼み”の技！！

時間は高岩が『金』という単語を聞いて復活するまでに遡る。その時、義喜は妹や父、他の冒険者を放って、自分の策を実現させるための道具を買いに出掛けていた。
その間に義喜が思い出すのはトルスが攻めてきた時の光景。
あの時、太い鞭を持ったトルスは背後に巨大な軍勢を引き連れており、まず真っ先にその光景を見た父の高岩が土下座しそうになった事を思い返していく。

だが、魔王軍を倒すのは自分たちの役目。
地獄に落ちたくない義喜は必死に高岩を説得し、街の他の冒険者と共に戦いを挑んだのである。
武器を持った魔物と冒険者たちが剣をかち合う様はまさしく合戦絵巻。

その光景に義喜は思わず言葉を漏らしていた。「これは草」と。
勿論、彼自身もぼんやりと戦いの光景を眺めていたわけではない。
魔法を使って、音符の爆弾を飛ばし、部下の魔物たちを攻撃していく。

音符の爆弾に当たり、小規模な爆発が起こっていく。
その後に冒険者と共に剣を構えて突っ込む妹の姿。
そして、前世で演じたヒーローのように手袋を用いて、雑魚を掃討していく父親の姿。

これで、戦いは収まると思っており、実際のところ、トルスと父親とが対峙するまでは誰もがそう思っていた。
だが、結果として高岩直人は義喜の父は負けてしまったのだ。
そして、今それを打開するための道具を義喜は買いに戻っていた。

義喜は街の商店街に慌てて駆け込むと、神を宥めるための道具を購入していく。

「あの、すいません。お酒ありますか？いや、あの、そんなんじゃあなくて……その清酒みたいなやつ」

こんな調子で義喜は苦労して、神頼みのための道具を購入し、その道具をまとめ、抱えながら、父と妹の元へと向かっていっているのである。
そして、その父と妹がせめぎ合っているトルスに向かって叫ぶ。

「待ってくれ！トルス！あんたは確か、神だったな！？なら、こういう事が好きだったんじゃあないのか！？」

モアイ像のような顔をした義喜は両手に抱えていた物を一通り地面の上に並べていく。
かと思えば、義喜が唐突にトルスの前で白装束に着替え始めていくではないか。
他にも、義喜は木を並べると、『コ』の字の型へと組み立てていく。
そして、頭には奇妙な鉢巻を巻いていく。

その後に饅頭やら何やらを並べたかと思うと、両手を地面に突き、何度も何度も頭を地面の上へと下げていく。

「義喜は何をしているんだ？」

「さぁ？」

首を傾げる二人に対し、義喜は必死の形相で平伏しながら何やらブツブツと呟いていく。
だが、次第にその声は大きくなり、ハッキリと二人にも聞こえるようになっていく。
その言葉を理解するのと同時に高岩は菜穂子に向かって叫ぶ。

「わかったぞ！義喜は神頼みをしようとしているんだッ！」

「ええ！？ハッ！そうか、お兄ちゃん。神頼みをしようとしているんだッ！ほら、邪馬台国の卑弥呼みたいな感じの事をしようと……」

「そうか、神だからか！？」

はたして、義喜の神頼み作戦は成功するのだろうか。
複雑な顔を浮かべる高岩と菜穂子を他所に、義喜は必死に神頼みを行っていく。
吉と出るか、凶と出るか。それはこの時点ではトルスにしかわからなかった。