クズ家族、異世界に転移、転生する〜代わりに、借金五千万円返済できなかったら、地獄行きとかマジですか！？〜

危うし！高岩！無心拳法最後の日！？

「ぐっ、くそ！」

高岩は敵の攻撃を受けて、吹き飛び、地面の上を大きく滑ってしまう。

「どうした？どうやら、拳法の使い手もここまでらしいな」

新たなる魔王軍の幹部、トルスは高岩に向かって低い声で告げた。
トルスは噂では神だと伝えられてきたのだが、目の前から迫るその姿は神というよりは悪魔に近い。
高岩はそんな印象を目の前から迫る幹部から受けた。

トルスの特徴としては顔の側面に曲がりくねった羊のような角を生やしている事や体全体が緑色に染まっている事などが挙げられる。
他に武器としてロープのようなものを持っている事も大きい。

（ラクタくんの盟友という事だけはあるね。まさか、あのロープで俺の拳法を防ぐとは……）

高岩はなんとか立ち上がろうとはするものの、やはり、体は思ったようには動かない。フラフラと情けなく揺れるばかりだ。
そこを襲われるのだから溜まったものではないだろう。
しなった鞭の音がヒュンヒュンと鳴る音が高岩の耳元にまで響いていく。

（な、なんという事だ。この男にはナイフハンドも、バリアハンドも効かないぞ）

高岩は下唇を噛み締めながら、トルスを睨む。

「あぁ、お父さん！」

「なんて事だッ！親父の攻撃が効かないなんて……」

義喜と菜穂子がそれぞれ悲痛の声を上げていく。

「不味いぞ、このままだと親父が殺されてしまう……」

「やむを得ない。お兄ちゃん、ここは爆裂魔法を使わせてもらうよッ！」

「却下ッ！それ以外で親父を助ける方法を考えよう！」

「無茶を言わないでよ！他にできる事なんて、剣術くらいだよ」

「これでも、めぐ○んよりも使えるところが多いっていうんだから、すごいよな」

呆れたような口調で義喜は誰かに向かって述べる。

「ちょっと、お兄ちゃん！誰に向かって語ってんの？」

菜穂子が腰に手を当てて、呆れたような口調で兄に向かって問い掛ける。

「いいや、なんでもないよ！」

義喜は慌てた様子で言葉を返す。菜穂子は一応は納得したらしく、フーンと相槌を打っていた。

「ともかくだッ！あいつを倒さない限りはオレたちに明日はないッ！そこで、だ。オレは秘策を考えたッ！」

「秘策って？」

首を傾げる妹を義喜は手招きし、彼女の耳元で囁いていく。
全てを話し終えるのと同時に、菜穂子は思わず素っ頓狂な声を上げる。

「えっ！？お兄ちゃん！？そんな事を考えてるの！？頭大丈夫！？」

「なんと言われようとも、この方法を実行するしかないだろう？オレは家に戻って、準備してくるから、お前はその剣技であいつを引きつけておけ」

「えっ、お兄ちゃんは！？」

「オレは家で必要なものを用意してくる！」

義喜はそう叫ぶと、菜穂子に手を振って、慌てて家に向かって駆け出す。
菜穂子は慌てて駆け出す兄の後ろ姿を苦々しげに見つめていたのだが、やむを得ずに腰に下げていた剣を鞘から抜いてトルスに向かって切り掛かっていく。
流石は元公爵令嬢というべきだろう。目の前に迫る鞭を剣で弾き返し、トルスに向かってその剣身を振るう。

そこまではいいのだが、目の前で迫った時には鞭によって剣を防がれてしまう。
剣に鞭がタコの脚のように絡み付いていき、そのまま攻撃に移れないという困った状況に陥ってしまったのである。

「な、なんなの……なんなのよ！もう！」

「伊達に魔王軍の幹部をやっちゃあないぜ。それに、こうして魔王軍我々に歯向かう冒険者どもを殺せば、上から支給される金も多くなるってもんだからな。いやでも、腕を上げるわな」
「なんだと！」

それを聞いて高岩はそれまでの疲労も忘れて起き上がっていく。