クズ家族、異世界に転移、転生する〜代わりに、借金五千万円返済できなかったら、地獄行きとかマジですか！？〜

全面対決！真の勇者対金の無心をする男！勝つのはどちらだ！？

「現れたな！盾の人ッ！」

「誰だ。お前は？」

尚弥は盾を構えながら問う。

「おれの名前は岸友也！拳法の使い手だけッ！盾の人ッ！今日はお前に勝負を申し込むッ！」

高岩は黄金の手袋をはめたまま、高岩の前へと飛び降りると、その両手の拳を尚弥に向かって構える。

「尚弥様！気を付けてください！この男の手からは危険な匂いがします！」

亜人の少女は剣を構えると、尚弥を下がらせる。

「マフタリア！危険だッ！あの性悪赤豚の事だッ！どんな卑劣な罠を仕掛けているのかわかったものじゃあないぞ！」

「わかっています！それでも、私は尚弥様が危険な目に遭うのは見ていられないんです！」

恐らく、この光景を見た百人中、百人が主人公とヒロインだと主張する場面だろう。
加えて、この光景を美しき愛の光景だと評する人もいるだろう。
少なくとも、前世では父親を庇って匿名掲示板で被害者を叩いていた菜穂子の親子愛などとは比較にもならない。

だが、高岩にはそんな事など頭にも残らないのか。はたまた、最愛の娘を馬鹿にされた怒りからか、眉間に皺を寄せながら尚弥に向かって人差し指を震わせながら叫ぶ。

「人の娘になんて事を、言葉に気を付けてもらいたいッ！」

「黙れ、おれはそこの赤豚に人生をメチャクチャにされたんだ。おれには復讐をする権利がある」

「黙れ！可愛い菜穂子と一時だけでも、至福の幸せだろうがッ！その代償で、貴様の人生が終わるくらいなんだッ！」

高岩のめちゃくちゃな言い分に直也の中の秘めたる怒りはもはや、限界を超えていた。
だが、尚弥以上に憤りを感じていたのは彼の奴隷であり、剣である亜人の少女だろう。
亜人の少女は両目を大きく見開き、高岩を明確なターゲットにしながら、彼の元へと突っ込む。

顔を青ざめる義喜と菜穂子を他所に余裕のある表情を浮かべる高岩。
彼は瞬時に、バリアハンドを呼び出すと同時に土下座の姿勢へと入る。
可憐な亜人の少女は自身の剣が弾かれた事に関して、驚きを禁じ得ない。

（あり得ない。こうも簡単に弾かれるなんて……まるで、尚弥様の盾みたい……）

「フッフッ、獣風情が慌てているらしいな」

高岩は土下座の姿勢のまま亜人の少女を嘲笑する。台詞といい邪悪な表情といい悪役そのものである。とても、元ヒーローとは思えない。そして戸惑う彼女の前でバリアを解除し、強烈なパンチを喰らわせる。
パンチを喰らった亜人の少女は悲鳴を上げて地面の上を転がっていく。

「みたか！これが踏み倒し拳法第一の技ッ！債権者粉砕パンチだッ！」

盾の人は慌てて、亜人の少女を助け起こすと、キッと高岩を睨む。

「よくも、マフタリアを酷い目に遭わせてくれたな。今度はこのおれが相手だ」

「いいだろう！言っておくが、娘を馬鹿にしたお前を絶対に許しはしないぞ！」

「ほざくなッ！このじゃがいも野郎がッ！」

「黙れ！娘を馬鹿にしたお前はおれは生涯、許さないからなッ！カモーン！ナイフハンド！ナイフ発射！」

盾の人に向かってナイフが突き刺さろうとした時だ。
不意に一羽の鳥がナイフを口に咥えて上空へと飛んでいく。

「おい、デーロ！無茶をするな！」

「平気だよ。ご主人様！早く、そんな奴、やっつけちゃって！」

「ちょっと待て、そいつの名前、デーロ！？外見といい、名前といい、口調といい完璧にアウトだろ！他の奴らもそうだ！下手したら、訴えらるぞ！」

義喜の絶叫が飛び交う。

「大丈夫だよ。ファンだから」

「そういう問題じゃあねぇよ！色々とやべーんだよ！」

菜穂子の指摘を受けてもなお、義喜は叫び続けていく。
だが、そんな慌てた様子の義喜を他所に、高岩と尚弥たちは引き続き睨み合っている。