クズ家族、異世界に転移、転生する〜代わりに、借金五千万円返済できなかったら、地獄行きとかマジですか！？〜

盾の人の対策会議。その中で確信したのは、娘、菜穂子の可愛さである。

「まずいじゃん！絶対、あたし殺されるって！」

菜穂子はその日の家族会議で冷静を保てていなかった。

「いいや、みすみすお前を殺させてたまるものか。菜穂子、お前は必ず、おれが守ってやるさ」

「お父さん」

父娘とが互いに抱き合っていると、義喜がわざと空咳を発し、熱くなっている二人を引き離す。
慌てて二人を見た後に、義喜は二人の目を見つめながら真剣な顔で問う。

「で、どうするんだ？盾の人がここに来たら、親父もおれも多分一瞬でやられるぞ」

「安心しろ、お前たち亮一おじさんはおれの兄貴の事は知っているな？」

「えっ、まさか、亮一おじさんが！？」

「あぁ、お前の考えている通りだ。亮一おじさんもこの世界に来ていた。しかも、この辺りの領主になっている」

「流石は亮一おじさん！前世でも木田家の家督を継いで、中山工業の副社長になっただけの事はあるね！」

菜穂子の絶賛が飛ぶ。

「あぁ、今そのおじさんが盾の人と揉めている。だから、おれたちは近々、おじさんが集める傭兵たちと手を結んで、盾の人の撃退を行う」

高岩は満面の笑みを浮かべながら言った。それから、懐から一枚の紙を取り出す。
それを食卓の上に広げる。食卓の上に広げられた紙の上には多くの人の名前が書かれている。
高岩は人差し指で人の名前をなぞりながら、一人一人の名前と特徴とを述べていく。

「すごいな。ラー○ン三銃士みたいな人もいれば、野○先輩みたいな人もいる」
「それだけじゃあないよ！エ○本さんみたいな人もいるよ！」

菜穂子が楽しそうにはしゃぐ声を聞き、思わず高岩も頬の筋肉を緩ませてしまう。
同時に、前世からの特徴である人懐っこい笑みを見てはしゃぐ様子は天使そのもの。
自分の娘は前世でも今世でもこんなに可愛らしいではないか。

こんなに愛らしい天使のような娘を殺そうとする盾の人には憤りを通り越し、憎悪の念まで湧き出ていた。
そればかりではない。その盾の人は大事な弟までも殺そうとしている。
まさしく外道。許されざる腐れ外道である。

心中、高岩は己の所業や弟や娘の悪事を棚に上げて、盾の人たちを非難していた。
第三者の視点やこの世界の神の視点から見れば、明らかに悪役であるのは高岩一家の方であるというのに。
だが、高岩や高岩の家族から見れば、悪いのは盾の人であり、更に突き詰めれば、悪いのは自分たちを追い込んだ債権者たちなのである。

とりわけ、娘の菜穂子は父の愛情を受けて、育ってきたためか、債権者への憎悪の念が家族の誰よりも強い。
彼女が前世において、匿名掲示板で高岩と同じくらい叩かれていたのも無理はあるまい。
そんな娘だからこそ、高岩は可愛かった。高岩は菜穂子の頭を優しく撫でると、気持ち悪いくらいの猫撫で声で言った。

「大丈夫だ。岸友也が盾の悪魔なんてスーパー閃光月面キックで倒してやるからな」

「やった！流石はお父さん！憲法の達人って事はあるわ！」

「ハッハッ、やっぱり、菜穂子は可愛いなぁ」

高岩はまたしても愛娘の頭を優しく撫でた。