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盾の人、あらわる!
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「ここで合ってるんだよな?」
黒い闇の中で、緑のマントに身を包んだ黒い髪の端正な青年は自身の奴隷であるのと同時に剣である亜人の少女に向かって問い掛ける。
「ええ、噂によればこの街です。尚弥様を苦しめたあの性悪公爵令嬢がいるのは」
「“元”でしょ?あんな奴、もう令嬢でもなんでもないよ」
亜人の少女に向かって忌々しげに吐き捨てたのは、ミルクのように真っ白なワンピースを着た白い肌に長い金髪をした小柄な顔をした幼い少女である。
猫のように可愛らしい耳をした亜人の少女もワンピースを着た少女もどちらも可憐で、それでいて平均以上の顔を持っている。
少なくとも、自称ミュージシャンのモアイ像のような顔をした義喜とは比べるのも気の毒になるくらいの整った顔立ちである。
それは盾の人も同じである。若い上に平均以上の整った顔を持ち、短く整えられた艶のある髪を持つ背の高い青年の背は高岩と比べれば巨人。
おまけに顔の美醜もしわくちゃのジャガイモのような顔をしている老人の高岩とは比べ物にもならない。
「それで、尚弥。お姉様を殺すのはいいとして、もう一つの件はどうするの?」
尚弥に問い掛けたのは公爵令嬢にして、髪をポニーテールで結んだ紫色の髪の少女。
この時の尚弥の頭の中によぎるのはこの近くを治める悪徳領主の存在。
盾の人こと尚弥とは亜人の村の襲撃をめぐる因縁とで結ばれており、この近くにいればその領主に襲撃される可能性も加味しなくてはなるまい。
だが、尚弥は勇者に相応しい淡々とした口調で言ってのけた。
「どちらとも戦う。おれの邪魔をするならな」
だが、亜人の少女にはわかっていた。この時の直也の両の瞳に激しい憎悪の炎が宿っている事に。
ここで、話は盾の人たちがやってくる二日前へと遡る。
「まさか、こんなところでお前と会えるなんて捨てたもんじゃあないな」
大きく突き出た太鼓腹に四角い眼鏡をかけた男は前世では木田亮一という名前で、中山工業という会社に重役として勤めていた男である。今世ではこの近くを治める領主をしているらしい。
「兄さんこそ、領主なんてすごい出世じゃあないか」
「いやぁ、それ程でもあるけどな」
亮一は大きく胸を張りながら自慢気に言った。
それも、大昔から用いられていた謙遜するかと思いきや、後で自慢するという手法のものである。
「しかし、おれの噂を聞きつけたとはいえ、どうして、わざわざ街の酒場にまで?」
「いやぁ、最近、よくない奴らに絡まれてな。それで、お前にそうだんしたくて、ここまできたんだ」
「よくない奴ら?」
「あぁ、盾を使う厄介な冒険者でな。少し前におれのビジネスに首を突っ込んで、そこから、ずっとおれに粘着してるんだよ」
「盾の冒険者……まさかな」
高岩の頭の中によぎったのは菜穂子が話していた盾を使う勇者たちの話である。
菜穂子は彼を嵌めたために、人生が無茶苦茶になったのだという。
それだけを聞くと、高岩の胸の中にふつふつと怒りのような感情が湧き出てていた。
加えて、その盾を使う勇者に兄まで苦しめられている。
こんな事を許してたまるものか。
彼の中には借金を断れた時と同じくらいの怒りの感情が渦を巻いて湧き上がっていた。
黒い闇の中で、緑のマントに身を包んだ黒い髪の端正な青年は自身の奴隷であるのと同時に剣である亜人の少女に向かって問い掛ける。
「ええ、噂によればこの街です。尚弥様を苦しめたあの性悪公爵令嬢がいるのは」
「“元”でしょ?あんな奴、もう令嬢でもなんでもないよ」
亜人の少女に向かって忌々しげに吐き捨てたのは、ミルクのように真っ白なワンピースを着た白い肌に長い金髪をした小柄な顔をした幼い少女である。
猫のように可愛らしい耳をした亜人の少女もワンピースを着た少女もどちらも可憐で、それでいて平均以上の顔を持っている。
少なくとも、自称ミュージシャンのモアイ像のような顔をした義喜とは比べるのも気の毒になるくらいの整った顔立ちである。
それは盾の人も同じである。若い上に平均以上の整った顔を持ち、短く整えられた艶のある髪を持つ背の高い青年の背は高岩と比べれば巨人。
おまけに顔の美醜もしわくちゃのジャガイモのような顔をしている老人の高岩とは比べ物にもならない。
「それで、尚弥。お姉様を殺すのはいいとして、もう一つの件はどうするの?」
尚弥に問い掛けたのは公爵令嬢にして、髪をポニーテールで結んだ紫色の髪の少女。
この時の尚弥の頭の中によぎるのはこの近くを治める悪徳領主の存在。
盾の人こと尚弥とは亜人の村の襲撃をめぐる因縁とで結ばれており、この近くにいればその領主に襲撃される可能性も加味しなくてはなるまい。
だが、尚弥は勇者に相応しい淡々とした口調で言ってのけた。
「どちらとも戦う。おれの邪魔をするならな」
だが、亜人の少女にはわかっていた。この時の直也の両の瞳に激しい憎悪の炎が宿っている事に。
ここで、話は盾の人たちがやってくる二日前へと遡る。
「まさか、こんなところでお前と会えるなんて捨てたもんじゃあないな」
大きく突き出た太鼓腹に四角い眼鏡をかけた男は前世では木田亮一という名前で、中山工業という会社に重役として勤めていた男である。今世ではこの近くを治める領主をしているらしい。
「兄さんこそ、領主なんてすごい出世じゃあないか」
「いやぁ、それ程でもあるけどな」
亮一は大きく胸を張りながら自慢気に言った。
それも、大昔から用いられていた謙遜するかと思いきや、後で自慢するという手法のものである。
「しかし、おれの噂を聞きつけたとはいえ、どうして、わざわざ街の酒場にまで?」
「いやぁ、最近、よくない奴らに絡まれてな。それで、お前にそうだんしたくて、ここまできたんだ」
「よくない奴ら?」
「あぁ、盾を使う厄介な冒険者でな。少し前におれのビジネスに首を突っ込んで、そこから、ずっとおれに粘着してるんだよ」
「盾の冒険者……まさかな」
高岩の頭の中によぎったのは菜穂子が話していた盾を使う勇者たちの話である。
菜穂子は彼を嵌めたために、人生が無茶苦茶になったのだという。
それだけを聞くと、高岩の胸の中にふつふつと怒りのような感情が湧き出てていた。
加えて、その盾を使う勇者に兄まで苦しめられている。
こんな事を許してたまるものか。
彼の中には借金を断れた時と同じくらいの怒りの感情が渦を巻いて湧き上がっていた。
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