クズ家族、異世界に転移、転生する〜代わりに、借金五千万円返済できなかったら、地獄行きとかマジですか！？〜

団結せよ！高岩一家！

「まさか、そんな事を堂々と言えるとは、少しお前の事を舐めていたかもしれん」

「フフ、お褒めに預かり恐縮だッ！」

「いや、誉めてねぇから！」

痛烈な突っ込みが高岩を打つ。だが、彼は平然とした表情を浮かべながら言った。

「多くの人に夢を与えられる人間。それが、義喜と菜穂子なんだ。前世だと義喜は音楽で人々を笑顔にし、菜穂子は家に篭りながらも、株で儲けて、おれを助けてくれていた。それが、夢を与える人間でなくてなんだというんだッ！」

「それのどこが夢を与えるんだよッ！っていうか、お前の娘はニートなんじゃあないのかよ！？」

仙石の問い掛けに対し、高岩はチッチッと指を鳴らし、前世における菜穂子の本当の職を鼻高に明かす。

「菜穂子はその筋では知られた株のブローカーなんだよッ！菜穂子はその金でアパートの家賃を払ってくれたり、自転車代を買ってくれたりしたんだよッ！」

その言葉を聞いて唖然とする仙石。あまりにも唖然とし過ぎていたためか、とうとう口にできなかった。

『その金を被害者への返済に充てろよ』

という至極真っ当な発言を。
その後も高岩による自慢話が続いていく。菜穂子の株を見る目は確かであり、数時間、株取引場にアクセスするだけで、一般人の何倍も稼げるという事や父の日には自転車を与えてくれたという事が主な話題であった。
いい加減に、自慢話が続くので、仙石の中の鬱憤も溜まったのだろう。

我を忘れてY談ビームを高岩に向かって放つ。だが、高岩はそれを見越したかのように借り物ハンドを身に付け、反対にY談ビームを仙石に向かって打ち返す。

「ァァァァァ～！！！」

仙石の絶叫が響き渡っていく。一通り叫び終わるのと同時に、仙石はこめかみに怒りの皺を寄せ、激しく人差し指を振りながら高岩に向かって叫ぶ。

「貴様！私はOLのかわいいお姉さんと部屋の中で一緒に弁当とか夕飯とかを作った後にイチャコラして、愛の時間を過ごしたいんだよッ！」

「うーむ。元ネタ的にもっとヤバいY談が来るかと思ったが、思った以上に健全な性癖だったな」

高岩は顎をさすりながら感心したように言った。

「お前はお姉さんの料理が壊滅的でも、自分の腕でカバーできると思ってるのか？」

「無論、思っていないさ。今のはキミにビームを打ち返しただけだからね。だから、トドメにこれを使わせてもらう！カモーン！ミサイルハンド！」

高岩の手には金色に輝くミサイルの付いた手から次々とミサイルを発射していく。
仙石は慌てて逃げ出そうとしたのだが、喰らうはずがないビームを喰らったいう衝撃のためか、体が思うように動かない。
その間もミサイルを喰らい続けていたためか、とうとう仙石は悲鳴を上げて小規模な爆発を起こしてしまう。

その姿は前世で高岩が演じたヒーロー番組の悪役の姿そのものである。

「あれ？おれたちは何を？」

「おお！変な事を言ってない！」

どうやら、仙石を倒した事により、ビームが解けて街の人たちが元に戻ったらしい。

「やったぜ！菜穂子！」

「やったね！お兄ちゃん！」

二人の会話も元に戻っている。これで、万事終了かと思いきやそうでもない。
翌日、義喜がいつも通りに演奏を行うために噴水広場に出かけると、周囲からY談ビームで彼自身が語った性癖の事で揶揄われてしまう。
義喜でさえこうなのだから、菜穂子などもう顔向けできるかも怪しいだろう。

お陰で、彼女の引きこもり具合は更に加速してしまったという。