クズ家族、異世界に転移、転生する〜代わりに、借金五千万円返済できなかったら、地獄行きとかマジですか！？〜

高岩家よ団結せよ！

「あっ、すごい美人のバンドマンのお姉さん！」

「盾の人の亜人の相棒の女の子を奪って、完全なる敗北を与え後で躾けたい！」

二人の冒険者がそれぞれ武器を構えながら、街の端へと逃げたデュークを発見する。
そこには父の高岩と対峙するデュークの姿が見えた。

「くっ、バカなわたしが追い詰められるとは」

「残念だったな。ここから先はこのおれ、拳法の使い手である岸友也が相手をする！」

高岩は両手の拳を構えながらデュークに向かって叫ぶ。

「ったく、いつまで、ヒーローの栄光に縋り付いてるんだ。ダサい聖子ちゃんカットしやがって」

「黙れ！これはなぁ、おれのヒーローとしての証拠みたいなもんなんだッ！この髪型を維持するために何万注ぎ込んだと思ってるんだッ！」

高岩は憤慨し、言葉を怒りの炎で煮えたぎらせながら、人差し指を突き付けているのだが、人から借りた金でこの髪型を維持しているのだから救いようもない。
デュークも半ば呆れた様子で高岩のその言葉を聞いていた。
大きく溜息を吐いた後に彼は言った。

「お前さ、他の人に申し訳ないとか思わないのか？」

「……大丈夫だ。借りた人たちとは真摯に話し合っていたからな。カラオケボックスでなッ！」

この時、デュークは『カラオケボックス』という単語を発した際に高岩の両頬が微かにピンク色に染まった事を見逃さなかった。

（もしかしたら、もう一度、ビームを喰らわせれば、奴もY談を話すんじゃあないのか？）

デュークは確信を得るために過去を読み取る魔法を使う。
すると、どうだろう。高岩が過去にカラオケボックスに女性ファン連れ込み、そこでナンパ行為をしていた事を確認したのだ。

（よし、この男にもう一度、Y談ビームを喰らわせれば……）

デュークが掌を広げて、そこからビームを繰り出そうとした時だ。
彼の前に音符爆弾が飛び込み、爆弾が彼に炸裂する。
爆風により双方が吹き飛ばされた後に、慌ててバイオリンを持った義喜と剣を携えた菜穂子の両名が現れたではないか。

「胸の大きなお姉さんに甘えたいんだッ！おれはッ！」

「盾の人と槍の人を屈服させて、私の足でぐちゃぐちゃにした料理を食わせて、泣き面をした二人を見ながらゾクゾクしたいッ！」

二人の兄妹が喋った事。特に妹の方はわりと洒落にならないのだが、不本意ながら高岩には二人の言わんとする事は理解できた。

「ありがとう。義喜、菜穂子……」

涙ぐむ高岩に対し、二人の子供は安心しろと言わんばかりに親指を上げて見せる。

「おれはな、前世で知り合った胸の大きな嫁を愛してるんだッ！」

「槍の人が泣きながら、私の足の指を舐める姿って最高にゾクゾクするよね！とくに、土の上を歩いたブーツの上から舐められると、たまらなく興奮するよ！」

二人の放つ言葉はおおよそ最悪の部類に属する言葉であるのだが、今の高岩にはこれ以上ないほどの心強い言葉であった。

「お前たち、立派に育ってくれて嬉しいぞ」

高岩は涙を流しながら、二人の子供の活躍を見守っていた。
今のところは互角に戦っている。暫くは戦いを見させてもらおう。
高岩は腕を組みながら、自慢の息子と娘を見守っていた。