クズ家族、異世界に転移、転生する〜代わりに、借金五千万円返済できなかったら、地獄行きとかマジですか！？〜

助けてーステーキ屋の被害者たち

向かってくるミサイルに対し二人は絶体絶命。このまま自己都合と言い訳を火薬にしたミサイルによって吹き飛ばされたかと思いきや、白い煙が晴れた後に現れたのはホーミを盾に平然とした表情を浮かべているラクタの姿である。

「ありがとう。盾になってくれて」

「そ、そんな……ラクタさん。あたしがあんたの事を支えてやったのに……」

「近くに居たお前が悪い」

ラクタはそう言って、ホーミを投げ捨てると、改めて高岩一家へと向き直る。

「な、なんて奴なの！まさか、ガードベントを実行するなんて！」

菜穂子の頭の中に浮かぶのはかつて、前世で観た光景。紫色のコブラをモチーフとした騎士が銀色に輝くサイをモチーフとした騎士を引き寄せ、盾のように使用した場面である。
そのシーンは名シーンとして語り継がれており、前世でも動画共有サイトなどに大きく転載されていた事を彼女はハッキリと覚えていた。
そのシーンを目の前の敵が忠実に再現してくれていた。

感動といえば感動ではあるが、やはり、見ていて心地がいい場面ではない。
ラクタは自らが盾の代わりに使用したホーミをなんの躊躇いもなく放り捨てると、そのまま光の剣を構えて、高岩に向かって剣先を突き付けていく。
高岩は引き続き、ミサイルを放っていくものの、ラクタは発射されるミサイルをことごとく破壊していくため、高岩は徐々に不利に追い詰められていく。

「不味い。このままではラクタに倒されてしまう。そうだッ！カモーン！メールハンド！」

伝家の宝刀ともいえる手袋を使用し、無心メールの内容をラクタに向かって流し込む。
あまりのメールの量にラクタは頭を抱えながら倒れ込む。

「うぎゃァァァァァァ～！！！わかった！わかった！貸すッ！貸すから、それを流し込むのをやめてくれ！」

「お願いします。岸友也のピンチなんです。このままでは親子揃ってヤクザに殺されてしまいます」

前世で、高岩がよく借金をする際に債権者たちに使っていた常套句であったといってもいい。

「わかった！わかった！貸すから、貸すから」

「お願いします。それに金を借りるというのはそれだけが目的ではないんです。私には夢があるんです。それは今自分こそがヒーローだとか抜かす偽物俳優や歌手たちに代わり、人々に夢屋希望を与えるそれが、私、岸友也にいいや、高岩直人に与えられた役目だと思っています」

高岩がそう言って金を借りようとした時だ。慌てて、義喜が正気に戻り、父親の借金を止めに入る。

「待てよ！親父！これ以上、借りて、借りた後にこいつを倒しちまったら、借金を踏み倒す事になって、おれら全員地獄堕ちたぞ！」

「そうだった！」

「というか、親父、ラクタを倒す事が目的だったんじゃねぇのかよ！なに、しれっと金を借りようとしてんだよ！」

「ちょっと、お兄ちゃん。そんな言い方はないんじゃあない」

菜穂子は止めに入るものの、義喜は止まる事を知らない。
どさくさに紛れて更に無心しようとした父を必死に止めていた。
その間にラクタが精神的なショックから立ち上がり、地面の上から起き上がっている事にも気が付かずに。