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おれにとって勇者なんてゾンビみてーな奴らだ!
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「おれにとっちゃ、冒険者なんてゾンビみてーな奴らだッ!わかるか?」
わかるかの後に『威圧』という中称が付きそうな口調で告げた。
「かつてはヒーローを演じていた者が悪に堕ちるなんて、許される事ではないね」
彼は自身の借金騒動など棚に上げて、そんな事はまるで、なかったかのように言い放つ。
「黙れ」
それに対し、魔王軍の幹部であるラクタはヤクザの様に恐ろしい眼光を向けながら高岩を牽制する。
高岩の言葉通り、ラクタは元ヒーローである。といっても、前世でヒーローを演じていたわけではない。
そう、彼はかつては魔王軍に挑む正義の騎士であったのだ。
だが、次第に人々が自分に金を投げない事に苛立ちを感じ、徐々に苛立ちを重ねていったらしい。
「金貨をくれない人ってなんなの?いい年をした大人が情けない!」
噂によれば、魔王軍の軍門に降る前にこんな言葉が街の酒場で聞かれたという。
また、ある冒険者はラクタが闇に堕ちる前にその兆候を感じていたという。
「彼から、インシアという恐ろしいダンジョンを共に攻略するように勧められました」
彼は初めは満面の笑みで、その冒険者に向かって尋ねたそうだ。
「インシア行かないの?」
「すいません。結婚したばかりなので、ちょっと、そういう危険な任務は行きにくくて」
「頼む!おれからのお願いだ!きてくれ!どうしても、無理ならば、金貨十枚くれ!」
冒険者は悩んだ。当時、彼にお熱だったという事もあり、眠る暇を与えないくらいに悩んだのだそうだ。
それでも、新婚なので、そういった危険を犯したくはないとラクタを断ったところ、不機嫌な顔を浮かべたかと思うと、不意に彼を突き飛ばし、頭を叩いた。
「な、何をするんですか!?」
「黙れ!おれと一緒にインシアに行かないような奴はおれの技、ブラックブロックを喰らうがいいッ!」
ブラックブロック。それは、黒の勇者ことラクタの得意技出る防御魔法。
彼はこの防御魔法と光の剣、『ライケルト』を用いて、魔王の手先を葬ってきたのだという。
だが、それまで、彼はヒーローとしての良識ゆえか、仲間にだけは使わなかった。いや、使うのを信じたくなかったというのが、ラクタを信じてきた仲間たちの言い分というところだろうか。
だが、ラクタは至極あっさりとその魔法を使い、仲間を跳ね飛ばす。
まるで、虫か何かを跳ね除けるように。
冒険者はそれが衝撃であったらしく、しばらくは寝込んでいたのだという。
また、ある女性冒険者は彼が依頼をこなしてから、酒場に帰ってくる際に常に投げ銭を要求されたのだという。
本当は彼女も払いたくはなかったのだが、投げ銭を投げなければ、ムスッと不機嫌な顔を浮かべるのだから、しなくては生きた心地がしない。
しかも、彼女にすれば、そのむすっとした顔が盗賊の親玉か何かのように怖いのだから、しなくては生きた心地がしなかったのだという。
そんな行動が問題視されてか、ラクタは冒険者ギルドから冒険者の資格を剥奪され、彷徨っていたところを魔王軍に勧誘され、魔王軍の幹部となったのだという。
おまけに、魔王の許可を得て、ステーキ屋を経営する事を許されたのだという。
そのステーキ屋は高岩が転移、住んでいる街からなんと二百キロの地点にあり、洞窟にそのステーキ屋はある。
そのステーキ屋に高岩が長男と長女を引き連れて乗り込んだのだ。
義喜がこの情報を仕入れていた事も大きく、今ここに金の心を持つ男と闇の太陽の力を持つ男の両方が対峙するに至ったのである。
二人はじっと睨み合う。どこか通じるものがある互いの事を。
そして、上述のような罵倒合戦が幕を開いたのだ。
わかるかの後に『威圧』という中称が付きそうな口調で告げた。
「かつてはヒーローを演じていた者が悪に堕ちるなんて、許される事ではないね」
彼は自身の借金騒動など棚に上げて、そんな事はまるで、なかったかのように言い放つ。
「黙れ」
それに対し、魔王軍の幹部であるラクタはヤクザの様に恐ろしい眼光を向けながら高岩を牽制する。
高岩の言葉通り、ラクタは元ヒーローである。といっても、前世でヒーローを演じていたわけではない。
そう、彼はかつては魔王軍に挑む正義の騎士であったのだ。
だが、次第に人々が自分に金を投げない事に苛立ちを感じ、徐々に苛立ちを重ねていったらしい。
「金貨をくれない人ってなんなの?いい年をした大人が情けない!」
噂によれば、魔王軍の軍門に降る前にこんな言葉が街の酒場で聞かれたという。
また、ある冒険者はラクタが闇に堕ちる前にその兆候を感じていたという。
「彼から、インシアという恐ろしいダンジョンを共に攻略するように勧められました」
彼は初めは満面の笑みで、その冒険者に向かって尋ねたそうだ。
「インシア行かないの?」
「すいません。結婚したばかりなので、ちょっと、そういう危険な任務は行きにくくて」
「頼む!おれからのお願いだ!きてくれ!どうしても、無理ならば、金貨十枚くれ!」
冒険者は悩んだ。当時、彼にお熱だったという事もあり、眠る暇を与えないくらいに悩んだのだそうだ。
それでも、新婚なので、そういった危険を犯したくはないとラクタを断ったところ、不機嫌な顔を浮かべたかと思うと、不意に彼を突き飛ばし、頭を叩いた。
「な、何をするんですか!?」
「黙れ!おれと一緒にインシアに行かないような奴はおれの技、ブラックブロックを喰らうがいいッ!」
ブラックブロック。それは、黒の勇者ことラクタの得意技出る防御魔法。
彼はこの防御魔法と光の剣、『ライケルト』を用いて、魔王の手先を葬ってきたのだという。
だが、それまで、彼はヒーローとしての良識ゆえか、仲間にだけは使わなかった。いや、使うのを信じたくなかったというのが、ラクタを信じてきた仲間たちの言い分というところだろうか。
だが、ラクタは至極あっさりとその魔法を使い、仲間を跳ね飛ばす。
まるで、虫か何かを跳ね除けるように。
冒険者はそれが衝撃であったらしく、しばらくは寝込んでいたのだという。
また、ある女性冒険者は彼が依頼をこなしてから、酒場に帰ってくる際に常に投げ銭を要求されたのだという。
本当は彼女も払いたくはなかったのだが、投げ銭を投げなければ、ムスッと不機嫌な顔を浮かべるのだから、しなくては生きた心地がしない。
しかも、彼女にすれば、そのむすっとした顔が盗賊の親玉か何かのように怖いのだから、しなくては生きた心地がしなかったのだという。
そんな行動が問題視されてか、ラクタは冒険者ギルドから冒険者の資格を剥奪され、彷徨っていたところを魔王軍に勧誘され、魔王軍の幹部となったのだという。
おまけに、魔王の許可を得て、ステーキ屋を経営する事を許されたのだという。
そのステーキ屋は高岩が転移、住んでいる街からなんと二百キロの地点にあり、洞窟にそのステーキ屋はある。
そのステーキ屋に高岩が長男と長女を引き連れて乗り込んだのだ。
義喜がこの情報を仕入れていた事も大きく、今ここに金の心を持つ男と闇の太陽の力を持つ男の両方が対峙するに至ったのである。
二人はじっと睨み合う。どこか通じるものがある互いの事を。
そして、上述のような罵倒合戦が幕を開いたのだ。
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