クズ家族、異世界に転移、転生する〜代わりに、借金五千万円返済できなかったら、地獄行きとかマジですか！？〜

新たなる敵が来たんだよ。わかるか（威圧）

「えー、あのちょっとわからないですね」

そう言い訳するのは長男の義喜。彼は集まった冒険者たちに向かって自身の弁護を繰り出していた。

「あの、こちらも、そのちょっと迷惑してるんで」

「迷惑ってなんだよ！」

「あのこちらも扉を叩かれたりして、そのすごく迷惑してるんですよ」

「ふざけんな！親父が払えないんだったら、お前が払え！」

「えー、あの、ちょっとよくわからないです」

義喜は尚も冒険者たちに対し、言い訳を続けていく。菜穂子は奥に引きこもったままである。
地獄のような状況をよそに、高岩は地元の簡易裁判所へと向かう。
長々とした裁判の後に高岩に下された判決は簡素なものである。

「魔王軍幹部のルビス退治によって得た賞金を賠償金に充てる様に」

高岩はまたしても憤慨した。

「ふざけないでねぇぇぇぇぇ」

高岩の絶叫が簡易裁判所の中へと響き渡っていく。
結果として、高岩は賞金を差し引かれた状況で渡される事になったのである。
他にも、神から前世の借金が引き渡される形で渡される事になったので、高岩一家に渡される金は雀の涙ともいえる額であった。

「こんなんじゃ、家賃も返せないぞ！」

その日の夜、居間に集まった家族たちの前で義喜は絶叫する。
流石に引き篭もりがちな二人もこの状況が理解できたのだろう。二人とも苦笑いを浮かべている。
義喜は二人を怒鳴ろうとしたが、彼としても具体的な代替案が存在していない事を思い出し、腕を組んで唸り声を上げていく。

「どうすればいいかなぁ、どうすれば……」

義喜は悩みに悩み抜いたのだが、ある一つの案を思い出し、それを二人に向かって話していく。

「そうだ！魔王軍の幹部をもう一人、倒せばいいんだッ！そうすれば、おれたちに金が入ってくるッ！」

義喜の言葉に家族一同が目を輝かせて、彼に向かって賛辞の言葉を投げ掛けていく。

「よし！やってやるぞ！で、他の魔王軍の幹部っていうのは？」

父の問い掛けに対し、義喜は曖昧に笑うばかり。当然といえば当然かもしれない。
と、いうのも、彼の中には該当する魔王軍の幹部の名前が思い付かなかったからだ。
彼は寂しく笑いながらその場を誤魔化し、翌日に別の魔王軍の収集に向かう。
彼は自称ではあるが、ミュージシャンという事に誇りを持っている。

ミュージシャンというのはファンとの交流があってこそのミュージシャン。
そんな、一種の誇りのようなものが義喜の中には存在していた。
それで、彼は僅かな投げ銭を投げてくれる人に気さくな様子で話し掛けた。
そして、話し合いの結果、彼は新たなる魔王軍の幹部のポスターを手に入れたのだ。

彼は僅かな投げ銭と共にポスターを持って帰って、家族たちの前にポスターを広げる。
家族とりわけ、父の亮二は満面の笑みを浮かべて言った。

「よしッ！これで、家賃を払えるぞ！でかしたぞ、義喜！」

「そうだよ！やったね！お兄ちゃん！」

喜ぶ二人に向かって、義喜はポスターと共に集めた情報を二人に向かって話していく。