クズ家族、異世界に転移、転生する〜代わりに、借金五千万円返済できなかったら、地獄行きとかマジですか！？〜

太陽の子だ！マイン・S・ベルマルク！

二人の争いは熾烈を極めていく。高岩がナイフやミサイルを発射したかと思えば、向こうは泥を飛ばしてそれを迎え撃つ。ゴーレムに憑依したアチペチ大吾が大攻勢を仕掛けようかと思えば、バリアハンドを用いての土下座で防ぐ。反対に高岩がメールハンドを用いて精神攻撃を用いようとすれば、すかさずに無数の魔法弾と泥を飛ばし、高岩を苦戦させる。
まさしくジレンマである。戦いの腕は互角といったところだろうか。
借金ヒーローと自称芸能人との果てしない戦いが街の外で繰り広げられていく。

高岩の二人の子供はそれを心配そうに眺めていた。特に父を盲目的に愛する菜穂子は気が気ではなかったらしい。
腰に下げていた立派な宝石を付けた剣を抜くと、その剣先をゴーレムに向かって突き付けて呪文の詠唱を始めていく。

「真っ赤に照り付ける太陽よ！この地上におわす山の精霊たちよ！太陽の子である我に大いなる力を与えたまえ！そう、我こそは太陽の子なのだッ！爆発魔法ッ！エクスプロージョン・フラッシュッ！！」

途端にアチペチ大吾と高岩の周りで大規模な爆発が発生していく。爆発により、地は揺れ、人々は悲鳴を上げていく。
そんな人々は対照的に、ドヤ顔で目を光らせ、剣を鞘へと仕舞う妹に向かって、義喜は地面を叩きながら叫んだ。

「これは草……そんなわけあるかッ！マイナス百九十九点をくれてやるッ！」

「ふん！お兄ちゃんには爆発魔法の良さがわからないんだよッ！この魔法を打つ時の爽快感はお酒を飲んだ時と同等か、お風呂に入った時と同等か、はたまた、それ以上の心地よさがあるし、なにより、今の爆発でお父さんも助かったッ！全員がwin-winになる魔法だよッ！」

「ざけんなッ！転生後のお前にはマインやテンプレ的な悪役令嬢の成分の他にめぐ○ん属性まで、入ってんのか！このクズニート女ッ！」

「く、クズニートってなによぉ、あたしは少しでもお父さんを……」

「おれを殺す気か！？」

その肝心の父は爆発による衝撃でアチペチ大吾と共に地面の上に突っ伏していたらしいが、娘のそんな無神経な発言に咄嗟に我を忘れたのだろう。
黒焦げにアフロという姿で、起き上がると、抗議の言葉を飛ばしたのだ。
愛する父に暴言を吐かれたのが、余程、ショックだったのか、菜穂子はその場にて倒れ込む。

義喜はそれを慌てて両手で支え、妹が地面の上に倒れるのを防ぐ。
同時にアチペチ大吾が立ち上がり、先程の自分に爆発を放った菜穂子へとその憎悪を向けていく。
彼はそのまま菜穂子に向かって魔法弾を放とうとしたが、その魔法弾は義喜が背中に背負っていたバイオリンを弾き鳴らすのと同時にたちまちのうちにかき消えてしまう。

「待てぇ！オレの妹には指一本、触れさせんぞ！この自称芸能人めッ！」

「なんだと！お前だって、自称ミュージシャンの楽器屋アルバイトのくせにッ！」

恐らく、前世で匿名掲示板を通じて知ったと思われる情報を叫んだ後に、アチペチ大吾は反撃を試みた。

「黙れ！アルバイトじゃあない！オレは前世だと正社員に昇格したんだッ！」

義喜は胸を張りながらアチペチ大吾に向かって反論の言葉を叫ぶ。
同時に、バイオリンを弾き、そこから音符を出して、アチペチ大吾に向かって飛ばす。
同時に、浮き上がった音符がアチペチ大吾へとぶつかると途端に小規模の爆発が起こり、アチペチ大吾は地面の上へと倒れ込む。

「これがオレの攻撃魔法さ、音符を出し、それを爆弾に変貌させて相手を攻撃する……まさしく、天性のミュージシャンであるオレに相応しい魔法だッ！お前のその行動はまさしく大草原不可避だ」

「くそ、自称ミュージシャンのくせに……」

アチペチ大吾は小さな声で呪詛の言葉を吐き、自身の魔法で反撃を試みていく。