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第三部『終焉と破滅と』
姫川美憂の場合ーその⑦
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「今年最後の殺し合いだッ!派手にやろうぜッ!」
2011年も後数日で終わるという日にサタンの息子の招集が行われた。
この戦いで一番張り切っていたのは真紀子であった。彼女は招集先で集められた廃墟の工場の中で手に持った機関銃を用いて派手な乱射を行なっていた。
非戦派と呼ばれる四人は廃墟のあちこちに隠れながら、無限に続く銃撃が止むタイミングを待っていた。
「クソッタレ、何が派手にやろうぜ、だッ!あのイカレポンチがッ!」
秀明が工場の機械の裏に隠れながら未だに機関銃を乱射し続ける真紀子を大きな声で詰っていく。
「だが、戦うしかないだろう。あいつは今回のゲームでは普通は真っ先に攻撃する筈の志恩を攻撃しなかった。そろそろ志恩の願いでその動きを止めるだろう」
美憂のその言葉を聞いて秀明は兜の下で眉を顰めたが、やがてその予測が的中し、真紀子の銃の乱射が止む。
だが、本番がここからだという事は五人での戦いが長い四人だからこそ知っていた。
真紀子は工場の中心部で動けなくなっているところを恭介と志恩によって発見された。動けなくなった真紀子の元へと全員が武器を突き付けながら向かっていく。
真紀子はまさしく袋の中のネズミという状況にあった。このまま追い詰められれば間違いなく彼女は脱落するだろう。
この場にいる誰もが望んでいることであった。今この場には姿を見せていない天堂一族や伊達正彦などの厄介な人物がまだ残ってはいるのだが、少なくともここで真紀子が脱落すれば後は楽になる。
志恩の真意はわからないが、こうして他のメンバーたちと同様に武器を構えながら近付いている様子を見るに今のところは止める予定がないらしい。
兜で全員の表情が覗けないのを美憂は残念に思った。美憂からすれば全員の顔を覗ければどんな表情であるのかを見れて、楽しかったであろうに。
美憂が兜の下で苦笑していると、工場の機械に背を預けて、荒い息を吐いている真紀子の姿が見えた。
「おやおや、お疲れかい?お疲れならばもうそろそろ眠らせてやるよ。子猫ちゃん」
秀明がサーベルを突き付けながら言った。
「ハッ、どうしたバカ兄貴、ンなクソ寒いナンパの文句なんぞ垂れて、仕事のし過ぎで頭が逝かれちまったのか?」
「黙れ、お前はもう追い詰められたんだぞ、それを少しは自覚したらどうだ?」
恭介が両手に握った剣を真紀子に突き付けながら問い掛けた。
「ハッ、お前そんなキャラだったか?希空と付き合う様になってからテメェまで勘違いし始めたのか?」
「ば、バカ!おれは付き合ってなんていねぇよ!」
そうは言いつつも恭介の声が僅かに動揺しているのを美憂は聞き逃さなかった。恐らく付き合うとまではいかずともそれ相応の仲くらいにはなっているのだろう。
つくづく兜の下が除けないのは残念である。恐らく恭介の兜の下は茹で立てられた蛸のように赤く茹っているであろうから。
「大体、仮にテメェと希空が恋人だったとしてもあたしは希空の部下であって、テメェの部下じゃあねぇんだからなッ!そこら辺はよく覚えておけッ!スカタンッ!」
「す、スカタンだと!?」
どうやら恭介に怒りの念が湧き上がってきたらしい。まるで瞬間湯沸かし沸騰器のようだ。美憂は兜の下で溜息を吐いていく。
「そうだよッ!テメェなんかスカタンだッ!スカタンの大間抜けのカスだッ!彼女の力を自分の力だと思い込んでるカスだッ!偉いのはテメェの彼女であって、テメェ自身じゃあねぇからな!そこら辺は覚えておけよ、ゴルァ!」
「て、テメェ……」
恭介の剣を持つ手が震えていた。どうやら怒りの念がもうこれ以上ないほどに湧き上がってきているらしい。
「どうした?図星だったか?」
「や、やめなよ、そんな二人とも大人げない……」
志恩が止めに入った。だが、それでも収まる気配は見せない。むしろ二人は志恩を無視してお互いを罵り合っていくではないか。
二人の間に板挟みとなり、オロオロとする志恩の姿は美憂から見れば少しだけ可愛かったが、流石に哀れであるので、そろそろ助けに入ろうとした時だ。
秀明が剣を近くの機械に勢いよく突き刺して、二人の口論を強制的に終了させた。
それから厳かな声を出しながら言った。
「いいか、お前ら二度とくだらない事を言うんじゃあない。終わりにしろ」
「へっ、終わりだと?おい、それってさっきの口論に負けっぱなしであたしを葬る事になるんだよ。そういう事なら、あんたは一生死ぬまであたしのーー」
「もう屁理屈はたくさんだ」
秀明がサーベルを逆手に持ち、恭介を押し退けて、真紀子へと止めを刺そうとした時だ。
「ま、待ってくれ!」
と、美憂の声が廃墟の中に響き渡っていく。
その言葉を聞いて一同が思わず美憂の方向を見つめていく。
「なんだ。どうした?あっ、そうか……こいつの止めはお前が刺したいって事だよな?いいぜ、やりな。遠慮なく」
「……違うんだ。あたしは今回に限ってだけだが、こいつを助けてやりたいと思ってるんだ」
動揺の声が美憂以外の四人の口から飛び出す。
美憂はそんな四人に向かってクリスマスの日に何が起こったのかを二人に話していく。四人はそれを美憂の話が終わるまで黙ってその場で聞いていた。
やがて、話が終わると、秀明が告げた。
「正直に言って、オレとしては同調できない。クルーズ船での出来事はあくまでもお前の個人的な事情だし、その時に共闘したからといって、今後も共闘できるかはわからない。それにこいつの優しさ気紛れだ。たまにチンピラが道端で老婆の手を引いてやるみてーなもんだ。そんなものに絆されるのか?お前は?」
「……かもしれないな。だが、私が助かったのは事実だ。正彦を船から追い出せたし、酒を飲まずにも済んだ。それだけはどうあっても覆さない事実だからな」
「……わかった。お前がそこまでいうのなら今回は見逃してやろう。だが、次はないからな」
秀明は真紀子に武装解除を要求し、彼女の軍服がいつものスーツになったのを確認してから自身も武装解除を行う。武装解除を終えた後に彼は同じく武装を解除してジャージ姿へと戻った弟の元へと駆け寄り、年末の予定を話していた。
恭介も武装を解除したかと思うと、そのまま工場の外へと向かう。
後に残されたのは美憂と真紀子の二名だけであった。
志恩が武装解除をした事によって、志恩の呪縛からも解き放たれた筈であるのに、真紀子は未だにその場から動こうとしない。
機械の工場に背中を預けながら大きく開かれていた天井を見上げていた。美憂もそれを見ると、そこには満点の星空が浮かんでいた。
暫くの間は何も言わずに黙って互いに空を見上げていたが、やがて真紀子の方がすっと立ち上がり、美憂の肩を叩いて言った。
「あれで貸し借りはなしだぞ」
「それはこっちの台詞だ。バカめ」
美憂は鼻を鳴らして吐き捨てると、そのまま工場の外へと向かう。もう既に師走の大晦日まで残り数日という本格的な冬に突入しているためか、外の木枯らしが妙に肌に触る。
美憂は今日は深夜のアルバイトの帰りで防寒着を身に付けており、その寒さはまだ和らいでいた。真紀子はお洒落優先のためかマフラーや手袋などは身に付けていなかった。防寒性と思われる肌色のストッキングを履いてはいるが、それだけでは寒いだろう。真紀子は自身が巻いていたマフラーを真紀子へと渡した。
「使うか?」
「使わねぇよ、あたしをみくびるなよ」
「そうか、残念だな」
美憂は残念そうに溜息を吐くと、そのままマフラーを巻き直して外へと向かって歩いていく。
真紀子は暫くその様子を眺めていた。だが、特に関心を寄せる事もなくその日は飽きるまで機械に背を預けて工場の天井から見える夜空を眺めていたのだった。
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この戦いで一番張り切っていたのは真紀子であった。彼女は招集先で集められた廃墟の工場の中で手に持った機関銃を用いて派手な乱射を行なっていた。
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「だが、戦うしかないだろう。あいつは今回のゲームでは普通は真っ先に攻撃する筈の志恩を攻撃しなかった。そろそろ志恩の願いでその動きを止めるだろう」
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だが、本番がここからだという事は五人での戦いが長い四人だからこそ知っていた。
真紀子は工場の中心部で動けなくなっているところを恭介と志恩によって発見された。動けなくなった真紀子の元へと全員が武器を突き付けながら向かっていく。
真紀子はまさしく袋の中のネズミという状況にあった。このまま追い詰められれば間違いなく彼女は脱落するだろう。
この場にいる誰もが望んでいることであった。今この場には姿を見せていない天堂一族や伊達正彦などの厄介な人物がまだ残ってはいるのだが、少なくともここで真紀子が脱落すれば後は楽になる。
志恩の真意はわからないが、こうして他のメンバーたちと同様に武器を構えながら近付いている様子を見るに今のところは止める予定がないらしい。
兜で全員の表情が覗けないのを美憂は残念に思った。美憂からすれば全員の顔を覗ければどんな表情であるのかを見れて、楽しかったであろうに。
美憂が兜の下で苦笑していると、工場の機械に背を預けて、荒い息を吐いている真紀子の姿が見えた。
「おやおや、お疲れかい?お疲れならばもうそろそろ眠らせてやるよ。子猫ちゃん」
秀明がサーベルを突き付けながら言った。
「ハッ、どうしたバカ兄貴、ンなクソ寒いナンパの文句なんぞ垂れて、仕事のし過ぎで頭が逝かれちまったのか?」
「黙れ、お前はもう追い詰められたんだぞ、それを少しは自覚したらどうだ?」
恭介が両手に握った剣を真紀子に突き付けながら問い掛けた。
「ハッ、お前そんなキャラだったか?希空と付き合う様になってからテメェまで勘違いし始めたのか?」
「ば、バカ!おれは付き合ってなんていねぇよ!」
そうは言いつつも恭介の声が僅かに動揺しているのを美憂は聞き逃さなかった。恐らく付き合うとまではいかずともそれ相応の仲くらいにはなっているのだろう。
つくづく兜の下が除けないのは残念である。恐らく恭介の兜の下は茹で立てられた蛸のように赤く茹っているであろうから。
「大体、仮にテメェと希空が恋人だったとしてもあたしは希空の部下であって、テメェの部下じゃあねぇんだからなッ!そこら辺はよく覚えておけッ!スカタンッ!」
「す、スカタンだと!?」
どうやら恭介に怒りの念が湧き上がってきたらしい。まるで瞬間湯沸かし沸騰器のようだ。美憂は兜の下で溜息を吐いていく。
「そうだよッ!テメェなんかスカタンだッ!スカタンの大間抜けのカスだッ!彼女の力を自分の力だと思い込んでるカスだッ!偉いのはテメェの彼女であって、テメェ自身じゃあねぇからな!そこら辺は覚えておけよ、ゴルァ!」
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二人の間に板挟みとなり、オロオロとする志恩の姿は美憂から見れば少しだけ可愛かったが、流石に哀れであるので、そろそろ助けに入ろうとした時だ。
秀明が剣を近くの機械に勢いよく突き刺して、二人の口論を強制的に終了させた。
それから厳かな声を出しながら言った。
「いいか、お前ら二度とくだらない事を言うんじゃあない。終わりにしろ」
「へっ、終わりだと?おい、それってさっきの口論に負けっぱなしであたしを葬る事になるんだよ。そういう事なら、あんたは一生死ぬまであたしのーー」
「もう屁理屈はたくさんだ」
秀明がサーベルを逆手に持ち、恭介を押し退けて、真紀子へと止めを刺そうとした時だ。
「ま、待ってくれ!」
と、美憂の声が廃墟の中に響き渡っていく。
その言葉を聞いて一同が思わず美憂の方向を見つめていく。
「なんだ。どうした?あっ、そうか……こいつの止めはお前が刺したいって事だよな?いいぜ、やりな。遠慮なく」
「……違うんだ。あたしは今回に限ってだけだが、こいつを助けてやりたいと思ってるんだ」
動揺の声が美憂以外の四人の口から飛び出す。
美憂はそんな四人に向かってクリスマスの日に何が起こったのかを二人に話していく。四人はそれを美憂の話が終わるまで黙ってその場で聞いていた。
やがて、話が終わると、秀明が告げた。
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「使うか?」
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美憂は残念そうに溜息を吐くと、そのままマフラーを巻き直して外へと向かって歩いていく。
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