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竜の住う村
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「んで、おめぇ、竜を倒すための秘策何かはあるのかい?」
ドワーフの男もとよりガザリは自身が禁断の液体火薬と引き換えに雇った魔獣討伐師に向かって尋ねた。
魔獣討伐師はかつて、東の果ての国を贔屓にしていた男爵から歓迎の席で公爵令嬢に聞いたその国の神話の事をガザリへと語っていく。
東の果ての島国の神話によると建国以前の混迷期には七つの首を持つ巨大な蛇が餌となる人間を求めて徘徊していたそうだ。
その恐ろしい蛇を東の島国の王の祖となる人物が退治したのだという。
巨大な七つの首を持つ蛇は男の作戦の前に敗北した。
伝承によれば、その凶悪な蛇は祖となる人物が流れ着いた家の娘を7つの首のうちそれぞれの首が別々に食べていたという。その食べ方は門から首を突っ込んで娘を食べるという残酷極まるものであったとされる。
家の主人から話を聞いた目を付けた祖となる人物は門を七つに分け、全員に生贄があるのだと錯覚させたところに酒を置くという作戦を提案したそうだ。
怪物たちは酒など飲んだ事はないので門の前に用意された珍しい飲み物に夢中になって首を突っ込み、夢中になって酒瓶の中に入った酒を舐めていく。
やがて、酒の酔いが効いていき、七つの蛇の首は眠ってしまったのだという。
その眠りこけた首を祖となる男が剣を用いて一体、一体丁寧に斬り落としていったという。
「確かにいい作戦かもなぁ。けど、おらたちが相手にすんのは神話に出てくる蛇の怪物じゃあなくて、ドラゴンだぞ」
「ええ、種族は違いますが……それでも試してみる可能性はあるのでは?」
迷いのない瞳でそう問われれば返す言葉も出てこない。
彼は唸り声を上げた後にその作戦を了承したのだった。
二人でそのような会話を重ねながら歩いているとガザリの村、すなわちドワーフの村へと着いた。
ガザリの村は典型的なドワーフの村といった場所であり、ドワーフたちの集まる炭鉱の前にとんがり帽子のような屋根をした家々が立ち並んでいるというのが世間で知られる村の形であった。
アイリーンは乳母車を押して入ってきたために車輪の音でドラゴンに気付かれるかもしれないという危険性を考慮し村の前に乳母車を止める事を提案したのだが、ガザリによればドラゴンは今は寝ている時間だという。
ちなみに二人が村へと到着したのは日も暮れた夕刻の時間帯の事であった。
ガザリは音もなく静まり返った村を一度大きく見渡しながら言った。
「うちの村に住み着いているドラゴンは昼間しか動かねぇんだよ。んで、起きたら腹が減んのかその時に飯を要求してくるんだ」
「……断れば、その際に自分達が食べられる……そういうわけかな?」
ガザリは黙って首を縦に動かす。
「その通りさ、あのクソッタレのトカゲのせいで、オレたちの仲間が何人犠牲になったか」
ガザリの瞳から大粒の涙が流れていく。余程、悔しい思いをしてきたのだろう。
そればかりではない。ドラゴンへの蔑称である『トカゲ』という単語をわざわざ強調して使っている事から、仲間を失った怒りの程も伝わってくる。
その姿は見るにも忍びない。アイリーンとしては慰める術もない。
アイリーンがどのようにして慰めてやろうかと考えていると、ガザリが自分の住んでいると思われる家の扉を開いて、母娘を自宅へと招き入れた。
そこも典型的なドワーフの家という家であった。木造の家の中心部分には木の巨大な机と椅子が置かれ、その奥には寝心地の良さそうな広々としたベッド。家の左端には手作りと思われる暖炉。
どれもドワーフの、いやこの場合はガザリの腕の良さを証明するものといえただろう。
アイリーンがあまりの素晴らしさに部屋の真ん中で呆然としているとガザリが手招きし、暖炉の上に置いてあったお茶の葉とお湯を入れた入れ物を取り出し、アイリーンへと注いでいく。
「茶だ。飲みなよ。今はこれしかねぇけどな。んでも、ドワーフっつーのは仕事終わりの家での茶が大の楽しみでなぁ」
「成る程」
アイリーンは勧められるままに出された茶を啜る。口につけるのと同時に彼女の口の中にこれまでに感じた事のない美味さが生じていく。
ドワーフはなんでも作れる種族であるとは聞いていたが、嗜好品まで美味いものを作るとは思わなかった。
茶でこれなのだ。酒ならば、どれ程の効力を発揮するのだろうか。
アイリーンは早速、酒の話に取り掛かった。
「そうだったな。今から、村の奴らに伝えてくるよ。明日の昼間までに大量の酒とそれを入れる杯が必要だってな」
「それと、神に仕える聖女が着るようなドレスも仕立てられるかもお聞き願いたい。仕立てるのは子供用と大人用の二着」
アイリーンがこのような要求をしたのには理由があった。その動機こそが彼女が急遽立案したある計画にあるのである。
理由を問うガザリにアイリーンは淡々と自身の計画を話していく。
自分と娘のシャルロッテを神に仕える聖女を仕立て上げ、村を占領する竜に酒を飲ませる際により一層の油断を誘わせるという計画を。
「え、えぇ……そりゃああまりにも危険だ!」
「……ただ単に酒を差し出すよりもドラゴンの油断を誘えると思いまするが」
「……わかった。あんたの覚悟の程はよーくわかったよ。けれどおらからも条件があるぞ」
ガザリはそう言って、その太い指でアイリーンの隣に座っている幼い少女を指差す。
「この子は命懸けで守れ、子連れで魔物狩人をやっているっていうのは行く途中に人々の噂で聞いたからな。それと一緒にあんたが諸々の事情で、その子を連れて、今の仕事をしてるって話も聞いた。けど、その子はまだ三つよ。死なさせるには幼すぎる年齢なんだ。わかるだろ?」
いつになく真剣な表情であったが、アイリーンも同様の表情を浮かべて応対して、彼の目をまっすぐに見つめていく。
そして、互いに何かを察したようで、お互いに首を縦に動かす。
ガザリはそれから、村の人たちに伝えるために椅子の上から立ち上がり、外を駆け回るのであった。
村人からすれば深夜に叩き起こされた事になるのだが、竜退治というの理由があるので、それを理由に怒る気にもならなかった。
早急に巨大な酒とそれを入れる杯が造られ、演出のための聖女が着るような純白のドレスが仕立て上げられていく。
そして、全ての準備が整え終わった頃にその竜は現れた。
竜は村の上空から現れたのだが、その大きさは村全体を日陰に差すほどの巨大さであった。
脅威は巨大な身体ばかりではない。大きく尖った剣のような角に狼の魔物を彷彿とされる巨大な牙。そして、その大きな背中を支えて空を自在に飛び回る蝙蝠のような羽だろう。
巨大な竜は村の中心部に降り立つのと同時に威厳のある声で言った。
「さて、今日の生贄は誰だ?」
「これはよくぞいらっしゃいました。今日の生贄でありますが、その前にあなた様に贈るものがございます」
「ほぅ、興味深い。申せ」
ドワーフの村長と思われる白髪で白い髭を地面まで垂らしたドワーフは酒の魅力を語る。
すると、竜はその巨大な舌で自身の口の周りを舐め回していく。
頭の中で酒という飲み物が余程、美味そうに想像できたのだろう。
竜はそのためか、ひどく上機嫌で言った。
「よろしい。その酒とやらを持って参れ」
村長はその竜の言葉に従って、両手を叩く。
同時に巨大な酒とそれを淹れた杯を持ったドワーフたちとそれに従う二人の母娘の姿が見えた。
まさか、人間の生贄が食べられるとは。
竜はまたしても舌舐めずりをしていく。
人間の生贄に酒なる未知の美味い飲み物を二つに味わえるとは、今日は自分の生命が始まって以来、最高の日ではないのか。
この竜はそう信じて疑わなかった。
ドワーフの男もとよりガザリは自身が禁断の液体火薬と引き換えに雇った魔獣討伐師に向かって尋ねた。
魔獣討伐師はかつて、東の果ての国を贔屓にしていた男爵から歓迎の席で公爵令嬢に聞いたその国の神話の事をガザリへと語っていく。
東の果ての島国の神話によると建国以前の混迷期には七つの首を持つ巨大な蛇が餌となる人間を求めて徘徊していたそうだ。
その恐ろしい蛇を東の島国の王の祖となる人物が退治したのだという。
巨大な七つの首を持つ蛇は男の作戦の前に敗北した。
伝承によれば、その凶悪な蛇は祖となる人物が流れ着いた家の娘を7つの首のうちそれぞれの首が別々に食べていたという。その食べ方は門から首を突っ込んで娘を食べるという残酷極まるものであったとされる。
家の主人から話を聞いた目を付けた祖となる人物は門を七つに分け、全員に生贄があるのだと錯覚させたところに酒を置くという作戦を提案したそうだ。
怪物たちは酒など飲んだ事はないので門の前に用意された珍しい飲み物に夢中になって首を突っ込み、夢中になって酒瓶の中に入った酒を舐めていく。
やがて、酒の酔いが効いていき、七つの蛇の首は眠ってしまったのだという。
その眠りこけた首を祖となる男が剣を用いて一体、一体丁寧に斬り落としていったという。
「確かにいい作戦かもなぁ。けど、おらたちが相手にすんのは神話に出てくる蛇の怪物じゃあなくて、ドラゴンだぞ」
「ええ、種族は違いますが……それでも試してみる可能性はあるのでは?」
迷いのない瞳でそう問われれば返す言葉も出てこない。
彼は唸り声を上げた後にその作戦を了承したのだった。
二人でそのような会話を重ねながら歩いているとガザリの村、すなわちドワーフの村へと着いた。
ガザリの村は典型的なドワーフの村といった場所であり、ドワーフたちの集まる炭鉱の前にとんがり帽子のような屋根をした家々が立ち並んでいるというのが世間で知られる村の形であった。
アイリーンは乳母車を押して入ってきたために車輪の音でドラゴンに気付かれるかもしれないという危険性を考慮し村の前に乳母車を止める事を提案したのだが、ガザリによればドラゴンは今は寝ている時間だという。
ちなみに二人が村へと到着したのは日も暮れた夕刻の時間帯の事であった。
ガザリは音もなく静まり返った村を一度大きく見渡しながら言った。
「うちの村に住み着いているドラゴンは昼間しか動かねぇんだよ。んで、起きたら腹が減んのかその時に飯を要求してくるんだ」
「……断れば、その際に自分達が食べられる……そういうわけかな?」
ガザリは黙って首を縦に動かす。
「その通りさ、あのクソッタレのトカゲのせいで、オレたちの仲間が何人犠牲になったか」
ガザリの瞳から大粒の涙が流れていく。余程、悔しい思いをしてきたのだろう。
そればかりではない。ドラゴンへの蔑称である『トカゲ』という単語をわざわざ強調して使っている事から、仲間を失った怒りの程も伝わってくる。
その姿は見るにも忍びない。アイリーンとしては慰める術もない。
アイリーンがどのようにして慰めてやろうかと考えていると、ガザリが自分の住んでいると思われる家の扉を開いて、母娘を自宅へと招き入れた。
そこも典型的なドワーフの家という家であった。木造の家の中心部分には木の巨大な机と椅子が置かれ、その奥には寝心地の良さそうな広々としたベッド。家の左端には手作りと思われる暖炉。
どれもドワーフの、いやこの場合はガザリの腕の良さを証明するものといえただろう。
アイリーンがあまりの素晴らしさに部屋の真ん中で呆然としているとガザリが手招きし、暖炉の上に置いてあったお茶の葉とお湯を入れた入れ物を取り出し、アイリーンへと注いでいく。
「茶だ。飲みなよ。今はこれしかねぇけどな。んでも、ドワーフっつーのは仕事終わりの家での茶が大の楽しみでなぁ」
「成る程」
アイリーンは勧められるままに出された茶を啜る。口につけるのと同時に彼女の口の中にこれまでに感じた事のない美味さが生じていく。
ドワーフはなんでも作れる種族であるとは聞いていたが、嗜好品まで美味いものを作るとは思わなかった。
茶でこれなのだ。酒ならば、どれ程の効力を発揮するのだろうか。
アイリーンは早速、酒の話に取り掛かった。
「そうだったな。今から、村の奴らに伝えてくるよ。明日の昼間までに大量の酒とそれを入れる杯が必要だってな」
「それと、神に仕える聖女が着るようなドレスも仕立てられるかもお聞き願いたい。仕立てるのは子供用と大人用の二着」
アイリーンがこのような要求をしたのには理由があった。その動機こそが彼女が急遽立案したある計画にあるのである。
理由を問うガザリにアイリーンは淡々と自身の計画を話していく。
自分と娘のシャルロッテを神に仕える聖女を仕立て上げ、村を占領する竜に酒を飲ませる際により一層の油断を誘わせるという計画を。
「え、えぇ……そりゃああまりにも危険だ!」
「……ただ単に酒を差し出すよりもドラゴンの油断を誘えると思いまするが」
「……わかった。あんたの覚悟の程はよーくわかったよ。けれどおらからも条件があるぞ」
ガザリはそう言って、その太い指でアイリーンの隣に座っている幼い少女を指差す。
「この子は命懸けで守れ、子連れで魔物狩人をやっているっていうのは行く途中に人々の噂で聞いたからな。それと一緒にあんたが諸々の事情で、その子を連れて、今の仕事をしてるって話も聞いた。けど、その子はまだ三つよ。死なさせるには幼すぎる年齢なんだ。わかるだろ?」
いつになく真剣な表情であったが、アイリーンも同様の表情を浮かべて応対して、彼の目をまっすぐに見つめていく。
そして、互いに何かを察したようで、お互いに首を縦に動かす。
ガザリはそれから、村の人たちに伝えるために椅子の上から立ち上がり、外を駆け回るのであった。
村人からすれば深夜に叩き起こされた事になるのだが、竜退治というの理由があるので、それを理由に怒る気にもならなかった。
早急に巨大な酒とそれを入れる杯が造られ、演出のための聖女が着るような純白のドレスが仕立て上げられていく。
そして、全ての準備が整え終わった頃にその竜は現れた。
竜は村の上空から現れたのだが、その大きさは村全体を日陰に差すほどの巨大さであった。
脅威は巨大な身体ばかりではない。大きく尖った剣のような角に狼の魔物を彷彿とされる巨大な牙。そして、その大きな背中を支えて空を自在に飛び回る蝙蝠のような羽だろう。
巨大な竜は村の中心部に降り立つのと同時に威厳のある声で言った。
「さて、今日の生贄は誰だ?」
「これはよくぞいらっしゃいました。今日の生贄でありますが、その前にあなた様に贈るものがございます」
「ほぅ、興味深い。申せ」
ドワーフの村長と思われる白髪で白い髭を地面まで垂らしたドワーフは酒の魅力を語る。
すると、竜はその巨大な舌で自身の口の周りを舐め回していく。
頭の中で酒という飲み物が余程、美味そうに想像できたのだろう。
竜はそのためか、ひどく上機嫌で言った。
「よろしい。その酒とやらを持って参れ」
村長はその竜の言葉に従って、両手を叩く。
同時に巨大な酒とそれを淹れた杯を持ったドワーフたちとそれに従う二人の母娘の姿が見えた。
まさか、人間の生贄が食べられるとは。
竜はまたしても舌舐めずりをしていく。
人間の生贄に酒なる未知の美味い飲み物を二つに味わえるとは、今日は自分の生命が始まって以来、最高の日ではないのか。
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