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天楼牛車決戦編
玉藻という名字の由来
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「あなた様は魅力的なお方じゃ。どうか、わしらの養子になりませぬかな?その養子であるのならば、帝もお喜びになるじゃろう」
平安時代。彼女を見染めたのは当時、藤原氏より二つの下の位を持つ『玉藻』という苗字を持つ貴族の男だった。
これまで、国を追われ、なすすべがなかった彼女にそれが初めて朝廷を滅ぼすために与えられた舞台であるのと同時に、紅葉と姑獲鳥が現在まで名乗っている苗字を与えられたのだった。
彼女は自らの顔と体を活かし、あっという間に当時の帝に取り入る事に成功した。宮廷内では次期中宮とさえ噂された。
だが、後少しのところで彼女はそれを別の女性に取られてしまう。恐らく、当時、朝廷内で権威を誇っていた藤原氏の娘であった事は覚えていた。
彼女はそれが悔しくて堪らない。勿論、貴族の身分を隠しての嫁ぎなので、中宮ともなれば、帝を籠絡して乗っ取れるかと画策したのだが、それは不可能になってしまう。
彼女は残念そうに溜息を吐きながら、彼女を抹殺する試みを画策していく。
当時、彼女は姑獲鳥にそれを止められたのだが、自らの意思で彼女を殺す算段を試みた。
それは、宮中に存在する宴の松原という場所で中宮の座を射止めた女性を殺す事であった。
宮中にて中宮の座を射止めた女性は哀れ、宴の松原にて惨殺されたのだが、当時、二人が連れ添って宴の松原内を歩くのを見たと女性の侍女が証言し、紅葉を追い詰めていく。
彼女は検非違使庁の役人相手に、必死の弁明を行ったのだが、結局の所はその侍女の証言とまた別の舎人が二人の姿を宴の松原で見たと言う証言が届けられたために、彼女は拿捕される事になった。
だが、彼女は検非違使庁の役人が踏み込んだ所で、本性を表し、彼らを一人残らず喰らい付くし、殺し尽くしていく。
その際に検非違使庁の役人は怯えるしかなかったのだが、勇気ある一人の男が仲間を一人逃がし、その男が逃げた事により、事件が当時の帝に耳に入り、帝は最愛の女性を玉藻御前が殺した事を知り、激昂。
直ちに玉藻一族追討の綸旨を出し、それを当時の陰陽寮の人間たちに一任したのだった。
この時に長谷川零が同行し、初めての戦いを挑んだと言われている。
だが、陰陽寮の人間は長谷川零を除いて全滅し、これに困った当時の帝は時間が掛かっててもいいので、玉藻一族を仕留める様に、厳命を下す。
そこで作られた官位が闇を征伐する征魔大将軍だと言われている。
征魔大将軍は直々の組織である討滅寮と対魔師たちを自由自在に使役する事は認められたが、軍を率いる事は許されず、また権力を持って時勢に介入する事も許されなかった。
この制度は現代、平安時代から一千年の時を経た昭和の世に入ってからでも続いている。
全く忌々しい連中だ。千年以上も自分を追い掛けて。
玉藻紅葉は改めて目の前で刀を持って取り囲む連中に辟易してしまう。
だから、ここで殺すのだ。そして、この混乱の時代に紛れて、自分の国を取り返すのだ。
そして、もう一度女王と呼ばれよう。玉藻紅葉は頭の中で、女王の時に身に付けていた首飾りや衣装を身にまとい、かつて支配していた九州の一角のみならず、この国全体を自分が司る姿が見えた。
この国の最高権威は私だ。この国の最高権力も私だ。
彼女が輝かしい賛辞に酔いしれていると、真後ろから刀で斬られた様な感覚に陥る。
誰なのだろう。彼女が背後を振り向くと、そこには妖鬼対策研究会の中の唯一の社会人、桐生桃の姿。
桐生桃は懸命に刀を振りながら、紅葉を討ち取ろうと目論む。
鬱陶しい真似を。紅葉は大きな溜息を吐いてから、桐生桃に向かって薙刀を振り上げる。
彼女は両目を広げてその姿を見ていたのだが、直ぐに背後に反り返り、薙刀を交わす。
本当に僅かな距離の差で交わしていた。後、少しズレていれば彼女は殺されてしまうだろう。
何せ、ほんの少しでも掠れば致命傷となる傷なのだから。
彼女は自分の運の良さに、いや、死んだ仲間が守ってくれたかもしれないという事を感じて感謝の念を心の内に抱く。
彼女は折角の助かった命を有効に使うために、刀を振りながらも後退して様子を探っていく。
紅葉はそれを見て鼻を鳴らす。
何せ、下手に飛びかかれば毒にぶつかる可能性があるのだ。幾ら、勇気があったとしても刃向かえるものではないだろう。勇気だけではどうにもならない事があるのだ。
紅葉はほくそ笑む。彼らを。哀れな将軍の操り人形たちを。
このまま誰一人として攻撃できまい。だが、自分はさせてもらう。
紅葉は薙刀を振り回しながら、周りに薙刀の刃に纏わり付いた毒を飛ばしていく。
全員が、それを恐れて彼女に近付こうとしない。
紅葉は勝ち誇った様な笑みを浮かべたが、彼女の予想に反してたった一人、刀を振り回して雄叫びを上げながら、向かって来る。
その正体は獅子王院風太郎。弟と妹を殺された例の少年だ。
紅葉は舌を打ち、彼に向かって毒を飛ばしていく。
だが、風太郎は地面を強く突き刺し、氷と風の紋章を作り出すと、氷と風を纏わせた刀を振るいながら、紅葉の元へと向かう。
紅葉はそれを見て思い出す。そして、重ねる。無意識のうちに。
「な、なんであんたがいるのよ!?」
この時、実際、風太郎は唸り声を上げていただけなのだが、目の前の彼女にはこう聞こえた。ハッキリと。
「お前も殺してやる……」という言葉を。
それだけではない。彼女はかつて、明暦の頃に自分を江戸城の天守閣で追い詰めた時と同じ様な台詞を口走っていく。
「何が楽しいの?そんな事をして何になるの?失ったものはもう返らないのよ。それなのに、どうして、あなたは全てを忘れて楽しそうに笑えるの?」
明確に彼女があの時に自分に向かって発した言葉だった。木本奏音の。
死してなお、どれだけ自分を追い詰めるのだろう。
癪に触る女だ。玉藻紅葉は怒りの感情で恐怖の感情を上塗りして少年に。いや、木本奏音に立ち向かっていく。
「目障りなのよ!クソが!!」
紅葉は薙刀を両手で持つと、そのまま木本奏音へと攻撃を繰り出していく。
毒の攻撃は触れるだけで死へと繋がる。目の前の木本奏音が亡霊ならば、何度でもそれであの世へと送り返してやるまでだ。
紅葉は夢中になって毒を放ったが、風と氷の前では毒は冷やされ、飛ばされてしまうから意味がないらしい。
紅葉はそれを歯を噛み締めながら睨んでいた。
平安時代。彼女を見染めたのは当時、藤原氏より二つの下の位を持つ『玉藻』という苗字を持つ貴族の男だった。
これまで、国を追われ、なすすべがなかった彼女にそれが初めて朝廷を滅ぼすために与えられた舞台であるのと同時に、紅葉と姑獲鳥が現在まで名乗っている苗字を与えられたのだった。
彼女は自らの顔と体を活かし、あっという間に当時の帝に取り入る事に成功した。宮廷内では次期中宮とさえ噂された。
だが、後少しのところで彼女はそれを別の女性に取られてしまう。恐らく、当時、朝廷内で権威を誇っていた藤原氏の娘であった事は覚えていた。
彼女はそれが悔しくて堪らない。勿論、貴族の身分を隠しての嫁ぎなので、中宮ともなれば、帝を籠絡して乗っ取れるかと画策したのだが、それは不可能になってしまう。
彼女は残念そうに溜息を吐きながら、彼女を抹殺する試みを画策していく。
当時、彼女は姑獲鳥にそれを止められたのだが、自らの意思で彼女を殺す算段を試みた。
それは、宮中に存在する宴の松原という場所で中宮の座を射止めた女性を殺す事であった。
宮中にて中宮の座を射止めた女性は哀れ、宴の松原にて惨殺されたのだが、当時、二人が連れ添って宴の松原内を歩くのを見たと女性の侍女が証言し、紅葉を追い詰めていく。
彼女は検非違使庁の役人相手に、必死の弁明を行ったのだが、結局の所はその侍女の証言とまた別の舎人が二人の姿を宴の松原で見たと言う証言が届けられたために、彼女は拿捕される事になった。
だが、彼女は検非違使庁の役人が踏み込んだ所で、本性を表し、彼らを一人残らず喰らい付くし、殺し尽くしていく。
その際に検非違使庁の役人は怯えるしかなかったのだが、勇気ある一人の男が仲間を一人逃がし、その男が逃げた事により、事件が当時の帝に耳に入り、帝は最愛の女性を玉藻御前が殺した事を知り、激昂。
直ちに玉藻一族追討の綸旨を出し、それを当時の陰陽寮の人間たちに一任したのだった。
この時に長谷川零が同行し、初めての戦いを挑んだと言われている。
だが、陰陽寮の人間は長谷川零を除いて全滅し、これに困った当時の帝は時間が掛かっててもいいので、玉藻一族を仕留める様に、厳命を下す。
そこで作られた官位が闇を征伐する征魔大将軍だと言われている。
征魔大将軍は直々の組織である討滅寮と対魔師たちを自由自在に使役する事は認められたが、軍を率いる事は許されず、また権力を持って時勢に介入する事も許されなかった。
この制度は現代、平安時代から一千年の時を経た昭和の世に入ってからでも続いている。
全く忌々しい連中だ。千年以上も自分を追い掛けて。
玉藻紅葉は改めて目の前で刀を持って取り囲む連中に辟易してしまう。
だから、ここで殺すのだ。そして、この混乱の時代に紛れて、自分の国を取り返すのだ。
そして、もう一度女王と呼ばれよう。玉藻紅葉は頭の中で、女王の時に身に付けていた首飾りや衣装を身にまとい、かつて支配していた九州の一角のみならず、この国全体を自分が司る姿が見えた。
この国の最高権威は私だ。この国の最高権力も私だ。
彼女が輝かしい賛辞に酔いしれていると、真後ろから刀で斬られた様な感覚に陥る。
誰なのだろう。彼女が背後を振り向くと、そこには妖鬼対策研究会の中の唯一の社会人、桐生桃の姿。
桐生桃は懸命に刀を振りながら、紅葉を討ち取ろうと目論む。
鬱陶しい真似を。紅葉は大きな溜息を吐いてから、桐生桃に向かって薙刀を振り上げる。
彼女は両目を広げてその姿を見ていたのだが、直ぐに背後に反り返り、薙刀を交わす。
本当に僅かな距離の差で交わしていた。後、少しズレていれば彼女は殺されてしまうだろう。
何せ、ほんの少しでも掠れば致命傷となる傷なのだから。
彼女は自分の運の良さに、いや、死んだ仲間が守ってくれたかもしれないという事を感じて感謝の念を心の内に抱く。
彼女は折角の助かった命を有効に使うために、刀を振りながらも後退して様子を探っていく。
紅葉はそれを見て鼻を鳴らす。
何せ、下手に飛びかかれば毒にぶつかる可能性があるのだ。幾ら、勇気があったとしても刃向かえるものではないだろう。勇気だけではどうにもならない事があるのだ。
紅葉はほくそ笑む。彼らを。哀れな将軍の操り人形たちを。
このまま誰一人として攻撃できまい。だが、自分はさせてもらう。
紅葉は薙刀を振り回しながら、周りに薙刀の刃に纏わり付いた毒を飛ばしていく。
全員が、それを恐れて彼女に近付こうとしない。
紅葉は勝ち誇った様な笑みを浮かべたが、彼女の予想に反してたった一人、刀を振り回して雄叫びを上げながら、向かって来る。
その正体は獅子王院風太郎。弟と妹を殺された例の少年だ。
紅葉は舌を打ち、彼に向かって毒を飛ばしていく。
だが、風太郎は地面を強く突き刺し、氷と風の紋章を作り出すと、氷と風を纏わせた刀を振るいながら、紅葉の元へと向かう。
紅葉はそれを見て思い出す。そして、重ねる。無意識のうちに。
「な、なんであんたがいるのよ!?」
この時、実際、風太郎は唸り声を上げていただけなのだが、目の前の彼女にはこう聞こえた。ハッキリと。
「お前も殺してやる……」という言葉を。
それだけではない。彼女はかつて、明暦の頃に自分を江戸城の天守閣で追い詰めた時と同じ様な台詞を口走っていく。
「何が楽しいの?そんな事をして何になるの?失ったものはもう返らないのよ。それなのに、どうして、あなたは全てを忘れて楽しそうに笑えるの?」
明確に彼女があの時に自分に向かって発した言葉だった。木本奏音の。
死してなお、どれだけ自分を追い詰めるのだろう。
癪に触る女だ。玉藻紅葉は怒りの感情で恐怖の感情を上塗りして少年に。いや、木本奏音に立ち向かっていく。
「目障りなのよ!クソが!!」
紅葉は薙刀を両手で持つと、そのまま木本奏音へと攻撃を繰り出していく。
毒の攻撃は触れるだけで死へと繋がる。目の前の木本奏音が亡霊ならば、何度でもそれであの世へと送り返してやるまでだ。
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