奇跡

朝風由紀奈

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奇跡 二話

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決意をした数週間後。真澄は一人男女用の産婦人科病院に来ていた。佐那は仕事が忙しく「ごめんね」と何度も謝っていた。
そんな彼の背中を蹴るように仕事に行かせ今ここにいる。が、かなり緊張してきた。手汗がやばい。
何度目かの深呼吸をして中に入る。
好奇の目で見られることもなく問診票を渡され書き込む。それが終われば同意書だ。
『あなたはパートナーの子を産む強い意志がありますか?』
その問いにはもちろん。『はい』だ。
すべて書き終え真澄は受付に出した。十分後。とうとう呼ばれた。
急いで診察室に入る。中にいた医師は佐那に似ていた。
「初めまして、芦沢優也といいます」
「あし、ざわ……」
「あなたのことは佐那から聞いています。今回はよく決意してくれましたね。有難うございます」
そういって医師は頭を下げた。真澄は慌てふためき「頭を上げてください」と言う。
真澄の言葉に優也は頭を上げニコリと笑いかけた。その笑顔も佐那に似ていてやましい気持ちはなくともドキリとしてしまう。
「では、説明を始めます。そこにおかけください」
椅子に腰かけ優也の説明を聞こうと耳を傾ける。
「子宮を埋め込むのは大変リスクの高いものです。癒着しない可能性も考えてください。万一癒着しなかった場合。子宮は取り除かれます。身体に悪い影響を与えかねないからです。そして、癒着した場合。女性のように生理が来る可能性もあります。もし、来なくなった場合すぐ当院に来てください。懐妊の可能性が高いからです」
「癒着……しなかった場合、どんな影響があるんですか?」
「……あまり前例は聞きませんが、拒否反応を示し最悪死に至ります」
死。その言葉を聞いて真澄は固まった。そんなに高リスクのものなのか。
でも、でも……。
「これは最悪の場合です。こちらとしてはきちんと相性のいいドナーを選びます。脅すような言い方をして申し訳ありません」
「い、いえ」
「真澄さんはまだお若いですし、どのドナーとも合うかと思います。そこはご安心ください」
そう言って優也は佐那が持ってきたものより詳しく書かれたパンフレットを手渡した。簡単に目を通しながら優也の説明を受ける。
すべて終わり今日はここで診察は終わりだそうだ。
「次回は佐那を連れてお越しください」
「はい」
優也に頭を下げ真澄は診察室を出た。

「ただいま!!」
病院から帰宅し三時間後。佐那が帰ってきた。
「おかえり」
「病院、どうだった?」
「お前の親戚? に会ったよ」
「え、優也兄に?」
親戚かは分からないため疑問符をつけながら言うと佐那は目を見開いた。
かなり驚いている様子だ。
「優也さんは、親戚か?」
「ううん、兄貴」
「え」
「びっくりした? 親に挨拶行ったときいなかったもんね」
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