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本編
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<優太side>
切り株のような形の分厚いフレンチトーストに、ナッツがたっぷり散りばめられている。想像以上にボリューミーだ。
「すごいね」
「これこそ写真撮った方がいいんじゃない?」
「たしかに」
今日は鹿賀さんに送る必要もないので、1枚だけ写真に収めてスマホをしまった。鳩貝も目を輝かせて卓上の写真を撮っている。この店でよかったみたいだ。
チラリと隣を見る。年の離れた女性2人。母娘だろうか。
反対側。大学生くらいの3人組。こちらも全員女性。
「どした?」
「ううん。やっぱりみんな同じの頼んでるなと思って」
本当は、女性客ばかりだなと見ていたのだが。
こんがりと焼かれた表面にナイフを入れると、卵液が中まで浸み込んでぷるぷるしている。
「ヤバい……これ飲めちゃうやつだ……」
見た目のインパクトとは裏腹に、するりとお腹に収まってしまう。さすがに飲み物とまでは思えないが、鳩貝の表現もあながち大袈裟ではないかもしれない。
鹿賀さんにも食べさせたい。でも、こういうお店に男2人で来たら目立つだろうな。
あっという間に平らげて、残りの紅茶を啜りながら鳩貝のおしゃべりに相槌を打つ。人事の仕事もなかなか大変そうだ。
「そうそう、これね!」
そう言って取り出した本を渡される。約束の漫画だ。何の生き物だかよくわからないキャラクターが表紙で寝そべっている。
「気に入ったら続編もあるから。まあ読んでみてよ」
「うん」
受け取ってパラパラとめくってみると、1ページで1話になっているようだ。これなら読みやすい。
寝る前や夜中に起きてしまって眠れないとき、なるべくスマホを見ない方がいいそうだ。強い光で余計に目が冴えてしまうし、際限なく見続けてしまうから。
休職してすぐの頃は読めていた本も、脳が休みモードに入ってしまったのか、うまく頭に入らなくなっていた。こういう漫画なら、ちょっとした合間にも、夜中眠れないときに読むにもちょうどよさそうだ。
「ありがとう。今度会ったときに返すね」
本をバッグにしまう。社会人になってから、人から勧められる本は実用的なビジネス書ばかりだった。友達に漫画を借りるなんて何年振りだろうか。それだけで、なんだか楽しい。
「俺が貸せるものがなくて申し訳ないけど」
「全然いいよ」
「せめてここは俺が出そうか」
「いいって。傷病手当だけじゃ生活大変でしょ?」
人事の鳩貝には、そのあたりの事情もお見通しというわけか。
まあ、鹿賀さんに生活費の多くを賄ってもらっているから、社宅に住んでいた頃よりも格段に安く済んでいるのだが。下手なことを言って、また墓穴を掘るのは避けたい。適当に「あー」とか「んー」とか言ってお茶を濁す。
「じゃあ何か、お礼できることあったら遠慮なく言ってよ」
「え、そしたらまた愚痴聞いてくれる?」
「うん、いくらでも」
鳩貝もなかなかストレスが溜まっているのだろう。話し相手をするだけでいいのなら、お安い御用だ。
切り株のような形の分厚いフレンチトーストに、ナッツがたっぷり散りばめられている。想像以上にボリューミーだ。
「すごいね」
「これこそ写真撮った方がいいんじゃない?」
「たしかに」
今日は鹿賀さんに送る必要もないので、1枚だけ写真に収めてスマホをしまった。鳩貝も目を輝かせて卓上の写真を撮っている。この店でよかったみたいだ。
チラリと隣を見る。年の離れた女性2人。母娘だろうか。
反対側。大学生くらいの3人組。こちらも全員女性。
「どした?」
「ううん。やっぱりみんな同じの頼んでるなと思って」
本当は、女性客ばかりだなと見ていたのだが。
こんがりと焼かれた表面にナイフを入れると、卵液が中まで浸み込んでぷるぷるしている。
「ヤバい……これ飲めちゃうやつだ……」
見た目のインパクトとは裏腹に、するりとお腹に収まってしまう。さすがに飲み物とまでは思えないが、鳩貝の表現もあながち大袈裟ではないかもしれない。
鹿賀さんにも食べさせたい。でも、こういうお店に男2人で来たら目立つだろうな。
あっという間に平らげて、残りの紅茶を啜りながら鳩貝のおしゃべりに相槌を打つ。人事の仕事もなかなか大変そうだ。
「そうそう、これね!」
そう言って取り出した本を渡される。約束の漫画だ。何の生き物だかよくわからないキャラクターが表紙で寝そべっている。
「気に入ったら続編もあるから。まあ読んでみてよ」
「うん」
受け取ってパラパラとめくってみると、1ページで1話になっているようだ。これなら読みやすい。
寝る前や夜中に起きてしまって眠れないとき、なるべくスマホを見ない方がいいそうだ。強い光で余計に目が冴えてしまうし、際限なく見続けてしまうから。
休職してすぐの頃は読めていた本も、脳が休みモードに入ってしまったのか、うまく頭に入らなくなっていた。こういう漫画なら、ちょっとした合間にも、夜中眠れないときに読むにもちょうどよさそうだ。
「ありがとう。今度会ったときに返すね」
本をバッグにしまう。社会人になってから、人から勧められる本は実用的なビジネス書ばかりだった。友達に漫画を借りるなんて何年振りだろうか。それだけで、なんだか楽しい。
「俺が貸せるものがなくて申し訳ないけど」
「全然いいよ」
「せめてここは俺が出そうか」
「いいって。傷病手当だけじゃ生活大変でしょ?」
人事の鳩貝には、そのあたりの事情もお見通しというわけか。
まあ、鹿賀さんに生活費の多くを賄ってもらっているから、社宅に住んでいた頃よりも格段に安く済んでいるのだが。下手なことを言って、また墓穴を掘るのは避けたい。適当に「あー」とか「んー」とか言ってお茶を濁す。
「じゃあ何か、お礼できることあったら遠慮なく言ってよ」
「え、そしたらまた愚痴聞いてくれる?」
「うん、いくらでも」
鳩貝もなかなかストレスが溜まっているのだろう。話し相手をするだけでいいのなら、お安い御用だ。
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