いつか、ふかふかのベッドで

14

　リンが泣いている。

　大丈夫だよ。もう東京に帰れなんて言わないから。

　美しい泣き顔。息を呑むほど、綺麗だ。

　でも、無邪気に笑っている方がいいな。ベッドなら譲ってやるから。


　もう、泣くなよ。



「ーー……っくん？………あっくん！」

　夢じゃない。リンがいる。
　でも、さっきの夢よりぐしゃぐしゃに泣いてるじゃないか。おかしくなって笑う。と。

「～～っ……！」

　腹が痛い。そうだ、俺刺されたんだ。

「大丈夫？痛い？」

　心配そうにリンが覗き込んでくる。それより、アイツは？

「オサムさん……パパ、捕まったよ」

　よかった。

「あっくん、オレのせいで、巻き込んで本当にごめん」

　ホントだよ。あんなヤバい奴だと思わなかったよ。
　あれはでも、逃げてきて正解だ。リンを東京に帰さなくてよかった。

　腕を伸ばし、リンの手を取る。

　あれ？リンも怪我したの？左腕に包帯を巻いている。
　アイツにやられたのか？

　怒りがこみあげてくる。

「あっくん、内臓まで傷ついちゃってるから、しばらく入院だって」

　うわ、まじか。仕事の担当カツカツなのに、先輩に迷惑かけちゃうな。
　患者さんにもスケジュールの変更がかかるかもしれない。大丈夫だろうか。

「オレ、夜になったらバイト行くけど、明日また来るから」

　いや、昼間は寝とけ。俺も寝るから。

「………守ってくれてありがとう」

　ああ、だからもう泣くなって。今日はハンカチ持ってないよ。

　初めて会ったライブハウスを思い出す。
　音楽が聴きたいな……。