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【2】事件、告白、旅立ち
2-13:城崎side
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「直居君、俺、気づいちゃったんだけどさ」
「はい?」
「直居君がその、誰とも付き合わないようにって思っているのって、その先に結婚や妊娠があるからなんだよね?」
こくり、頷く。
「じゃあさ、もしかして、俺とだったら大丈夫かもしれない?」
「え?……あ…………」
「俺とだと、むしろ望んでも結婚妊娠できないわけなんだけど」
こんな言い方、卑怯だろうか。
だがきっと、そんな想定すらなかったんだろう。これまでまったく恋をしてこなかった彼が、急に今までになかった感情を抱けるかは分からない。それも、男となんて考えたこともなかったに違いない。
「すぐに結論出してほしいわけじゃないから、よかったらさ、少しだけ考えてみてよ」
先ほど一度ゴメンナサイされているが、どうせすぐに振られても、こんなに好きになれる相手は見つからないだろうし、見つける気もない。1年でも2年でも保留にしてくれて構わない。
「あの……確認なんですけど」
「何だい?」
「さっきの、僕の話を聞いても、気持ち変わってないんですか?」
上目遣いで訊いてくる。
「なぜ?何か君のことを嫌いになる要素あったかな?」
問いかけると、躊躇いがちに小さく頷く。
「そう?気づかなかったな。誰が君のことをこの世からいらないって言っても、君自身がそう思ったとしても、俺には君が必要だよ」
ねえ、伝わる?
それなりに恋愛もしてきた。真剣に将来を考えた相手もいたさ。でも、こんなあったかい気持ちになるのは君のことだけなんだよ。
「城崎さんっ……も、泣くから……」
「ふふ。いっぱい泣いていいよ。今まで我慢してきた分、全部俺が受け止めるから」
直居君の目から、ぶわっとまた涙が溢れる。もう一度ぎゅっとしてもいいかな。
「ねえ、直居君。俺、いくらでも待つからさ。さっきの返事、もう一回、考えてみてくれる?」
抱きしめて、耳元で囁く。
「待って待って、その先に振られても、別に怒らないからさ」
直居君はこっちを向いてはくれないが、俺の肩口で確かに頷いた。
「はい?」
「直居君がその、誰とも付き合わないようにって思っているのって、その先に結婚や妊娠があるからなんだよね?」
こくり、頷く。
「じゃあさ、もしかして、俺とだったら大丈夫かもしれない?」
「え?……あ…………」
「俺とだと、むしろ望んでも結婚妊娠できないわけなんだけど」
こんな言い方、卑怯だろうか。
だがきっと、そんな想定すらなかったんだろう。これまでまったく恋をしてこなかった彼が、急に今までになかった感情を抱けるかは分からない。それも、男となんて考えたこともなかったに違いない。
「すぐに結論出してほしいわけじゃないから、よかったらさ、少しだけ考えてみてよ」
先ほど一度ゴメンナサイされているが、どうせすぐに振られても、こんなに好きになれる相手は見つからないだろうし、見つける気もない。1年でも2年でも保留にしてくれて構わない。
「あの……確認なんですけど」
「何だい?」
「さっきの、僕の話を聞いても、気持ち変わってないんですか?」
上目遣いで訊いてくる。
「なぜ?何か君のことを嫌いになる要素あったかな?」
問いかけると、躊躇いがちに小さく頷く。
「そう?気づかなかったな。誰が君のことをこの世からいらないって言っても、君自身がそう思ったとしても、俺には君が必要だよ」
ねえ、伝わる?
それなりに恋愛もしてきた。真剣に将来を考えた相手もいたさ。でも、こんなあったかい気持ちになるのは君のことだけなんだよ。
「城崎さんっ……も、泣くから……」
「ふふ。いっぱい泣いていいよ。今まで我慢してきた分、全部俺が受け止めるから」
直居君の目から、ぶわっとまた涙が溢れる。もう一度ぎゅっとしてもいいかな。
「ねえ、直居君。俺、いくらでも待つからさ。さっきの返事、もう一回、考えてみてくれる?」
抱きしめて、耳元で囁く。
「待って待って、その先に振られても、別に怒らないからさ」
直居君はこっちを向いてはくれないが、俺の肩口で確かに頷いた。
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