上 下
32 / 198
【2】事件、告白、旅立ち

2-13:城崎side

しおりを挟む
「直居君、俺、気づいちゃったんだけどさ」
「はい?」
「直居君がその、誰とも付き合わないようにって思っているのって、その先に結婚や妊娠があるからなんだよね?」

 こくり、頷く。

「じゃあさ、もしかして、俺とだったら大丈夫かもしれない?」
「え?……あ…………」
「俺とだと、むしろ望んでも結婚妊娠できないわけなんだけど」

 こんな言い方、卑怯だろうか。
 だがきっと、そんな想定すらなかったんだろう。これまでまったく恋をしてこなかった彼が、急に今までになかった感情を抱けるかは分からない。それも、男となんて考えたこともなかったに違いない。

「すぐに結論出してほしいわけじゃないから、よかったらさ、少しだけ考えてみてよ」

 先ほど一度ゴメンナサイされているが、どうせすぐに振られても、こんなに好きになれる相手は見つからないだろうし、見つける気もない。1年でも2年でも保留にしてくれて構わない。

「あの……確認なんですけど」
「何だい?」
「さっきの、僕の話を聞いても、気持ち変わってないんですか?」

 上目遣いで訊いてくる。

「なぜ?何か君のことを嫌いになる要素あったかな?」

 問いかけると、躊躇いがちに小さく頷く。

「そう?気づかなかったな。誰が君のことをこの世からいらないって言っても、君自身がそう思ったとしても、俺には君が必要だよ」

 ねえ、伝わる?
 それなりに恋愛もしてきた。真剣に将来を考えた相手もいたさ。でも、こんなあったかい気持ちになるのは君のことだけなんだよ。

「城崎さんっ……も、泣くから……」
「ふふ。いっぱい泣いていいよ。今まで我慢してきた分、全部俺が受け止めるから」

 直居君の目から、ぶわっとまた涙が溢れる。もう一度ぎゅっとしてもいいかな。

「ねえ、直居君。俺、いくらでも待つからさ。さっきの返事、もう一回、考えてみてくれる?」

 抱きしめて、耳元で囁く。

「待って待って、その先に振られても、別に怒らないからさ」

 直居君はこっちを向いてはくれないが、俺の肩口で確かに頷いた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

婚約者に会いに行ったらば

龍の御寮さん
BL
王都で暮らす婚約者レオンのもとへと会いに行ったミシェル。 そこで見たのは、レオンをお父さんと呼ぶ子供と仲良さそうに並ぶ女性の姿。 ショックでその場を逃げ出したミシェルは―― 何とか弁解しようするレオンとなぜか記憶を失ったミシェル。 そこには何やら事件も絡んできて? 傷つけられたミシェルが幸せになるまでのお話です。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

初夜の翌朝失踪する受けの話

春野ひより
BL
家の事情で8歳年上の男と結婚することになった直巳。婚約者の恵はカッコいいうえに優しくて直巳は彼に恋をしている。けれど彼には別に好きな人がいて…? タイトル通り初夜の翌朝攻めの前から姿を消して、案の定攻めに連れ戻される話。 歳上穏やか執着攻め×頑固な健気受け

僕のために、忘れていて

ことわ子
BL
男子高校生のリュージは事故に遭い、最近の記憶を無くしてしまった。しかし、無くしたのは最近の記憶で家族や友人のことは覚えており、別段困ることは無いと思っていた。ある一点、全く記憶にない人物、黒咲アキが自分の恋人だと訪ねてくるまでは────

キンモクセイは夏の記憶とともに

広崎之斗
BL
弟みたいで好きだった年下αに、外堀を埋められてしまい意を決して番になるまでの物語。 小山悠人は大学入学を機に上京し、それから実家には帰っていなかった。 田舎故にΩであることに対する風当たりに我慢できなかったからだ。 そして10年の月日が流れたある日、年下で幼なじみの六條純一が突然悠人の前に現われる。 純一はずっと好きだったと告白し、10年越しの想いを伝える。 しかし純一はαであり、立派に仕事もしていて、なにより見た目だって良い。 「俺になんてもったいない!」 素直になれない年下Ωと、執着系年下αを取り巻く人達との、ハッピーエンドまでの物語。 性描写のある話は【※】をつけていきます。

上司と俺のSM関係

雫@更新不定期です
BL
タイトルの通りです。

十七歳の心模様

須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない… ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん 柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、 葵は初めての恋に溺れていた。 付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。 告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、 その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。 ※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。

処理中です...