思惑交錯チョコレート

秋野小窓

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<ケイside>

 何がどうなっているのか分からない。小松さんの兄が小松?
 いや、同じ苗字だとは思っていたけど、全然似てないし。むしろ、小松さんを呼ぶときにいつも小松のことを思い出してしまうのが自分でも惨めだったのだが。

「何?」

 腕を掴んだままの小松を見上げる。
 くそ。もう諦めたはずなのに、こんな風に再会してしまったら、忘れられるものも忘れられなくなってしまうじゃないか。

「この間のこと、謝りたくて。無神経なこと言ってごめん」
「は?何だよ急に」

 先日会ったのは俺じゃない。トーコさんだ。
 どこからどう見ても俺じゃないのに。

 トーコさんが俺の名を伝えたからって、小松が俺に謝ろうとするなんておかしいじゃないか。
 まさか、俺の企みがバレていた……?

 どう誤魔化そうか。どんな返答をしても悪い方にしか転ばない気がして思考がまとまらない。

「この間って、何のこと?」

 背中にじっとりと季節はずれの汗をかきながら、しらばっくれることに決める。
 俺が認めさえしなければ、何とかなるだろう。

「女装して、会いにきてくれただろ?まあ、会いに来るっていうか、ここがお前の職場だったんだけどさ」

 声のトーンを落として小松が言う。
 今コイツ、何と言った?

「女装……?」
「してただろ。髪なんてこーんな長くて、綺麗に化粧してさ」
「え?え!?」

 何をどう勘違いしたらそうなるんだ!
 あの日会いに行ったトーコさんのことを、女装した俺だと思ってしまったということか!?


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