思惑交錯チョコレート

秋野小窓

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「伝えたいことって何だと思う……?」
「告白じゃない?」
「いや、だって、男だよ?」
「だから何」

 狼狽える兄を冷たく一瞥する。内心の鼻息の荒さは伝わっていないだろう。

「男が男を好きになってもいいじゃない。ありがたいことだよ?同級生なんでしょ」
「いや、高校は違う。塾のダチ」
「普段兄貴がバカやってるのも知ってて、それでも好きになってくれたってことじゃん?」

 実兄ながら、ビジュアルは悪くない。ただ、中身が残念なのである。

「なかなかいないと思うよ。兄貴の表面的なところじゃなくて、ちゃんと人間性を見てなきゃ、男の子が好きになって告白してくれるなんてないと思うし」
「そ、そうか……?」
「チョコ渡すのだって、すごく勇気いったと思うよ。女の子が告白する何倍も」
「それは、まあ」

 これまで応援してきた二次元カップルの数々の試練が脳裏に浮かび、つい熱がこもってしまう。それを乗り越えた先の愛が、どれほどに尊いものか!

「どんな人か知らないけど、男だからどうとかじゃなくて、ちゃんとその人を見て返事しなよ」
「返事ったって……」
「受験終わるのっていつ?」
「合格発表の後ってことかなあ。それなら3月入ってから」
「まだ時間あるんだし、考えとけば」

 性別関係なく、ナシな相手なら仕方ない。でもあわよくば。
 そんな下心100%で、参考文献を貸し出すなどして兄を洗脳……否、教育して3月を待った。
 ところが肝心の告白がないまま、兄は高校を卒業し、大学のある中国地方へと旅立ってしまった。
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