思惑交錯チョコレート

秋野小窓

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<沓子side>

「無理!絶対無理だよ!」
「そこをなんとか……!」

 彼の代わりに会ってほしいだなんて。

「ちゃんと自分で会っておいでよ。好きって伝わってるわけじゃないんでしょ?気にしすぎだよ」
「怖いんです。トーコさんに一瞬で見抜かれるくらい、多分俺まだ全然小松のこと好きで」

 うん。それはもう、バレバレだ。

「あの時は本当、どうかしてたんです。怖いものなしだったというか、考えなしだったというか……そのどっちもですけど、とにかく、誤魔化せる自信ないんですよ!」
「じゃあどうしてまたチョコ渡そうなんて思ったのよ」
「それは……」

 本当にバレたくなかったら、またチョコを贈ろうなどという発想にはならないのではないか。

「本当は、気づいてほしいんじゃないの?君のことにも、君の気持ちにも」
「ち、違います!」

 両手と首をブルブルと左右に振る。黙っていれば美少年なのに、動きが妙にコミカルなんだよな。なんて言うと、高校で笑いものにされた彼のトラウマを抉りそうだから胸にそっとしまっておく。

「ザ・義理チョコ!みたいなのを渡せば、ただチョコを配りたいだけの甘党男になれるかなと思って」
「……そんなことで誤魔化されるかな」
「だから!俺じゃ誤魔化せないんですって!」

 両手を合わせて懇願してくる。

「嫌よ。嫌だけど、私がその子に会ってどうしてほしいわけ?」
「ありがとうございます!」
「引き受けたわけじゃないよ。どういうことかまず説明を聞こうと思って」

 同じ塾生でもない、年上の私が会ってどうなると言うのだ。面識もない相手に会って、何か役に立てるとは思えない。

「俺の代わりに小松にチョコを渡したことにしてほしいんです」
「……やだよ」
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