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季節は進み、銀杏の葉が黄色く色づき始めた。
京さんはアパートを引き払い、正式に二人暮らしになった。居候の頃と生活は変わらないが、安心感が違う。京さんの帰る場所はここだ。
風呂から上がると、京さんがまたキッチンに立っていた。
「片付け残ってました?」
「いや、明日の分」
覗いてみると、鍋いっぱいに煮込まれたゴロゴロとした具材。
「うわあ、おでん!」
「好きか?」
「はい!」
肌寒い季節にぴったりだ。それに、京さんの料理は何でもおいしいが、中でも和食が得意なようだった。絶対おいしいに決まっている。
「京さんのことも好きです!」
「こら、邪魔だよ」
ガバッと抱きつくと、本気で嫌がられる。
「ごめんなさい」
キッチンでじゃれつくと危ないからと怒られたばかりなのに、またやってしまった。これは俺が悪い。素直に離れて謝る。
仕込みが終わったようだ。
「京さん?」
「何だ」
タオルで手を拭きながら、こちらを見ずに返事をする京さん。
いつも俺ばかり好き好き攻撃しているが、一度も好きと言ってもらったことがない。
「俺たち付き合ってるんですよね」
「うん」
「俺のこと好きですか?」
京さんがこちらを向いた。
ーーうんって言ってくれない……。
「や、やっぱり何でもないです」
「お前馬鹿か?」
「はい、すみません……」
俺が好きでOKしてもらっただけなのに、調子に乗りました。もしかしたらそろそろ好きになってくれてたりしないかな、なんて淡い期待を抱いてしまっただけなんです。
つかつか、と京さんが近づいてくる。
「ごっごめんなさ……ッ!?」
胸ぐらを掴まれ、身構えたところに、荒っぽいキス。ぶつかってきたのかと思うくらいの勢いで、柔らかさも甘さもない。一瞬の出来事に目をぱちくりさせていると、
「好きじゃなかったらこんなことしないだろ」
ふい、と顔を背けながら吐き捨てるように言う。
「!!……っ京さん!今、好きって言いました?ねえ!」
「うるさい」
寝室に逃げこんだ京さんを両腕で絡めとって捕まえる。
「京さん?………照れてるんですか?」
後ろから抱きしめたまま、耳元で囁く。無反応だ。
「俺、京さんの100万倍、京さんのこと好きですよ」
「……小学生かよ」
空気が少し綻んだ。頬にキスをする。
「京さん……ね、こっち向いて?」
さっき京さんからキスしてくれて嬉しかった。もう一度確かめるように口づける。
そっと唇を離したところで、京さんに名前を呼ばれた。
「泰歩」
「はい?」
「男抱いたことあるか……?」
+++++++++++++
次のお話から2ページ、R18シーンです。
ぬるいですが……。
京さんはアパートを引き払い、正式に二人暮らしになった。居候の頃と生活は変わらないが、安心感が違う。京さんの帰る場所はここだ。
風呂から上がると、京さんがまたキッチンに立っていた。
「片付け残ってました?」
「いや、明日の分」
覗いてみると、鍋いっぱいに煮込まれたゴロゴロとした具材。
「うわあ、おでん!」
「好きか?」
「はい!」
肌寒い季節にぴったりだ。それに、京さんの料理は何でもおいしいが、中でも和食が得意なようだった。絶対おいしいに決まっている。
「京さんのことも好きです!」
「こら、邪魔だよ」
ガバッと抱きつくと、本気で嫌がられる。
「ごめんなさい」
キッチンでじゃれつくと危ないからと怒られたばかりなのに、またやってしまった。これは俺が悪い。素直に離れて謝る。
仕込みが終わったようだ。
「京さん?」
「何だ」
タオルで手を拭きながら、こちらを見ずに返事をする京さん。
いつも俺ばかり好き好き攻撃しているが、一度も好きと言ってもらったことがない。
「俺たち付き合ってるんですよね」
「うん」
「俺のこと好きですか?」
京さんがこちらを向いた。
ーーうんって言ってくれない……。
「や、やっぱり何でもないです」
「お前馬鹿か?」
「はい、すみません……」
俺が好きでOKしてもらっただけなのに、調子に乗りました。もしかしたらそろそろ好きになってくれてたりしないかな、なんて淡い期待を抱いてしまっただけなんです。
つかつか、と京さんが近づいてくる。
「ごっごめんなさ……ッ!?」
胸ぐらを掴まれ、身構えたところに、荒っぽいキス。ぶつかってきたのかと思うくらいの勢いで、柔らかさも甘さもない。一瞬の出来事に目をぱちくりさせていると、
「好きじゃなかったらこんなことしないだろ」
ふい、と顔を背けながら吐き捨てるように言う。
「!!……っ京さん!今、好きって言いました?ねえ!」
「うるさい」
寝室に逃げこんだ京さんを両腕で絡めとって捕まえる。
「京さん?………照れてるんですか?」
後ろから抱きしめたまま、耳元で囁く。無反応だ。
「俺、京さんの100万倍、京さんのこと好きですよ」
「……小学生かよ」
空気が少し綻んだ。頬にキスをする。
「京さん……ね、こっち向いて?」
さっき京さんからキスしてくれて嬉しかった。もう一度確かめるように口づける。
そっと唇を離したところで、京さんに名前を呼ばれた。
「泰歩」
「はい?」
「男抱いたことあるか……?」
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次のお話から2ページ、R18シーンです。
ぬるいですが……。
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