あなたはミラ

秋野小窓

文字の大きさ
上 下
33 / 38

33

しおりを挟む
 柳井さんが呆れたように口を開く。

「あのなあ、勘違いだって言っただろうが」
「え……?」
「あの人とは別れた。関係ないって言ったの聞いてなかったか?」

 関係ないって、そういうこと!?

「柳井さん!それはさすがに言葉足らずだと思います!」
「お前がちゃんと聞かなかったんだろうが」

 うっ……たしかに。ハッキリと確認するのを避けていたのは事実だ。

「柳井さん……あの、好きです」
「知ってる」

 ……やっぱり、バレてたんだよな。
 でも、今度こそきちんと言葉にしないと。

「俺と付き合ってください」
「うん」
「それは、OKってことですか?」
「うるさいな、そうだよ」

 柳井さんが心底鬱陶しそうに言う。もう、ウザがられてもいいです。あなたの隣にいられるならーー。

 力が抜けて、柳井さんの隣にドサっと倒れ込む。

「よかったー………夢じゃないですよね?」
「さあな」
「もしこれが夢でも、起きたら絶対また告白しますから」
「分かったから、早く寝ろ」

 向こう側に寝返りを打ちながら柳井さんが言う。冷たく聞こえる返事も、俺の寝不足を心配してのことだと知っている。小さな背中がどうしようもなく愛おしい。

「柳井さん、一回だけ……」

 背中から腕を回し、毛布ごと抱きしめる。

「ぎゅってさせてください」

 返事もなく黙ってしまったが、怒られないのを肯定と捉えて腕に力を込める。

 柳井さんの体、少し強張っているようだ。緊張してるのかな。
 素っ気ない態度だが、俺のことを多少なりとも意識してくれているんだと感じて嬉しくなる。

「好きです、柳井さん。好き……」

 硬直していた柳井さんがもぞもぞと僅かに身じろぎする。

「……寝ないと明日置いていくぞ」
「嫌です!おやすみなさい!」

 もう一度だけギュッと力を入れて抱きしめてから、自分のベッドに戻った。

「秋の星座の解説でいいか」
「いいんですか?お願いします!」
「聞き飽きたと思うけど」
「全然!嬉しいです」

 今日はそのまま寝ろ、と言われるかと思っていた。久しぶりの、解説の穏やかな声。疲れと安心感とで、俺はすぐに意識を手放した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

大学生はバックヤードで

リリーブルー
BL
大学生がクラブのバックヤードにつれこまれ初体験にあえぐ。

営業活動

むちむちボディ
BL
取引先の社長と秘密の関係になる話です。

柔道部

むちむちボディ
BL
とある高校の柔道部で起こる秘め事について書いてみます。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

年上の恋人は優しい上司

木野葉ゆる
BL
小さな賃貸専門の不動産屋さんに勤める俺の恋人は、年上で優しい上司。 仕事のこととか、日常のこととか、デートのこととか、日記代わりに綴るSS連作。 基本は受け視点(一人称)です。 一日一花BL企画 参加作品も含まれています。 表紙は松下リサ様(@risa_m1012)に描いて頂きました!!ありがとうございます!!!! 完結済みにいたしました。 6月13日、同人誌を発売しました。

初体験

nano ひにゃ
BL
23才性体験ゼロの好一朗が、友人のすすめで年上で優しい男と付き合い始める。

処理中です...