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しばらく山道を登っていくと、開けたスペースに辿り着いた。と言っても、暗い山道で、入り口も分かりにくく、これは柳井さんに連れてきてもらわなければ通り過ぎてしまうような場所だ。
「うわ~、すごいですね」
「夜景?」
「はい」
街を見下ろせる。大都会の夜景に比べたら寂しいくらいかもしれないが、それでもこんな夜景見ることがないので心が弾む。
「星を観たい人間からすると迷惑なんだけどね」
「光害、でしたっけ」
「そう」
街の灯があると、空が明るく照らされてしまって星が見えにくくなる。
「今日は月が目的だからまあいい」
言いながら、望遠鏡をセットしていく。プロの顔をした柳井さんに見惚れていると、俺の視線に気づいたのか
「こっち見てて楽しいか?」
と訊いてくる。
「望遠鏡なんて、あんまり実物見ることないので」
「そうか」
柳井さんにとっては慣れた道具なんだろう。
「昔から好きなんですか?星」
「ああ。子どもの頃から」
そうだよな。本当に好きでなければ、務まらない仕事だろう。
それに、毎晩星の話をしてくれるときの柳井さんはイキイキとしていて、話が尽きることがない。普段無口な分を取り返すかのようだ。
「見てみるか」
「月ですか?」
「うん」
言われるがままにレンズを覗き込む。
「うわあ……!」
想像よりも大きく、鮮明に見える。
「こんな風に見えるんですね!」
「これはまだ、低倍率の方。もっと性能いいやつもある」
家にお邪魔したとき、いくつか望遠鏡があった。目的に応じて使い分けているのだろう。
「好きに見ていいよ」
「俺壊さないですかね!?」
「壊れないよ。大丈夫」
少し自分で動かしてみたが、ちょっとずらすだけですぐにどこを見ているのか見失ってしまう。柳井さんは珍しく笑いながら、見応えのある位置に何度かセッティングして見せてくれた。
「うわ~、すごいですね」
「夜景?」
「はい」
街を見下ろせる。大都会の夜景に比べたら寂しいくらいかもしれないが、それでもこんな夜景見ることがないので心が弾む。
「星を観たい人間からすると迷惑なんだけどね」
「光害、でしたっけ」
「そう」
街の灯があると、空が明るく照らされてしまって星が見えにくくなる。
「今日は月が目的だからまあいい」
言いながら、望遠鏡をセットしていく。プロの顔をした柳井さんに見惚れていると、俺の視線に気づいたのか
「こっち見てて楽しいか?」
と訊いてくる。
「望遠鏡なんて、あんまり実物見ることないので」
「そうか」
柳井さんにとっては慣れた道具なんだろう。
「昔から好きなんですか?星」
「ああ。子どもの頃から」
そうだよな。本当に好きでなければ、務まらない仕事だろう。
それに、毎晩星の話をしてくれるときの柳井さんはイキイキとしていて、話が尽きることがない。普段無口な分を取り返すかのようだ。
「見てみるか」
「月ですか?」
「うん」
言われるがままにレンズを覗き込む。
「うわあ……!」
想像よりも大きく、鮮明に見える。
「こんな風に見えるんですね!」
「これはまだ、低倍率の方。もっと性能いいやつもある」
家にお邪魔したとき、いくつか望遠鏡があった。目的に応じて使い分けているのだろう。
「好きに見ていいよ」
「俺壊さないですかね!?」
「壊れないよ。大丈夫」
少し自分で動かしてみたが、ちょっとずらすだけですぐにどこを見ているのか見失ってしまう。柳井さんは珍しく笑いながら、見応えのある位置に何度かセッティングして見せてくれた。
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