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「ただいま」
「お帰りなさい!」
パタパタと玄関に駆けつけた俺に、
「いーにおい」
と最高の一声をかけてくれる。
「シチュー作ってみました!」
「やるじゃん」
やった。褒められた。
時刻は20時過ぎ。閉館後もいろいろと仕事があるんだな。
いつもは俺の方が遅いから、柳井さんがいつ頃帰ってきているのか知らなかった。
「おいしいですか?」
「まあまあ」
「よかったです」
知っている彼と、知らない彼。まだ知らないことの方が圧倒的に多い。
「今日、最後まで起きて観られましたよ」
「それが普通だから」
「うっ……」
ぐうの音も出ない。
「でも、最近夜寝られてるおかげです。ありがとうございます」
「どういたしまして」
「あと、やっぱり柳井さんの解説好きです」
最後まで聞けて本当によかった。ベッドで聞いたら何回やってもらっても最後まで聞けないだろうし。
「泰歩、来週の木曜は何時に帰ってくる?」
「え?……っと、いつもどおりですけど、早められますよ」
事前に分かっていれば調整は可能だ。
「星観に行くか」
「え!いいんですか!行きたいです!」
明日は断念したが、思わぬ誘いでデートが実現しそうである。
「その日何かあるんですか?」
ウキウキして尋ねると、柳井さんの冷たい目。
「……本当に起きてたか?」
「え、解説のときに言ってました!?」
思い出せ。えっと、えっと………。
「あっ!お月見?」
「中秋の名月」
当たりだ。星、と言うから月のことだと思わなかった。
「どこに観に行くんですか?」
「山」
山、か。月なら街中からでも見られるが、柳井さんが行きたいところならもっと綺麗に見られるんだろう。
「そんな高いところ行かないけど、防寒していけよ」
「分かりました!」
明日は平日できなかった分の勉強をしようかと思っていたが、出かける準備もしておこう。柳井さんの布団も干してあげたいし、なんだかんだやることはいろいろあるな。
「明日出かけるんですよね、ごはんも外ですか?」
「いや、夜には帰る」
「分かりました。料理教えてくれる話、もしよかったら夕飯一緒に作りたいです」
「うん」
献立の相談をして、買い物リストを作って。なんだか調理実習みたいだ。柳井さんが来る前はいつもどんな風に休日を過ごしていたのか思い出せなくなるくらい、充実している。
「お帰りなさい!」
パタパタと玄関に駆けつけた俺に、
「いーにおい」
と最高の一声をかけてくれる。
「シチュー作ってみました!」
「やるじゃん」
やった。褒められた。
時刻は20時過ぎ。閉館後もいろいろと仕事があるんだな。
いつもは俺の方が遅いから、柳井さんがいつ頃帰ってきているのか知らなかった。
「おいしいですか?」
「まあまあ」
「よかったです」
知っている彼と、知らない彼。まだ知らないことの方が圧倒的に多い。
「今日、最後まで起きて観られましたよ」
「それが普通だから」
「うっ……」
ぐうの音も出ない。
「でも、最近夜寝られてるおかげです。ありがとうございます」
「どういたしまして」
「あと、やっぱり柳井さんの解説好きです」
最後まで聞けて本当によかった。ベッドで聞いたら何回やってもらっても最後まで聞けないだろうし。
「泰歩、来週の木曜は何時に帰ってくる?」
「え?……っと、いつもどおりですけど、早められますよ」
事前に分かっていれば調整は可能だ。
「星観に行くか」
「え!いいんですか!行きたいです!」
明日は断念したが、思わぬ誘いでデートが実現しそうである。
「その日何かあるんですか?」
ウキウキして尋ねると、柳井さんの冷たい目。
「……本当に起きてたか?」
「え、解説のときに言ってました!?」
思い出せ。えっと、えっと………。
「あっ!お月見?」
「中秋の名月」
当たりだ。星、と言うから月のことだと思わなかった。
「どこに観に行くんですか?」
「山」
山、か。月なら街中からでも見られるが、柳井さんが行きたいところならもっと綺麗に見られるんだろう。
「そんな高いところ行かないけど、防寒していけよ」
「分かりました!」
明日は平日できなかった分の勉強をしようかと思っていたが、出かける準備もしておこう。柳井さんの布団も干してあげたいし、なんだかんだやることはいろいろあるな。
「明日出かけるんですよね、ごはんも外ですか?」
「いや、夜には帰る」
「分かりました。料理教えてくれる話、もしよかったら夕飯一緒に作りたいです」
「うん」
献立の相談をして、買い物リストを作って。なんだか調理実習みたいだ。柳井さんが来る前はいつもどんな風に休日を過ごしていたのか思い出せなくなるくらい、充実している。
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