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翌日、帰宅すると柳井さんは出かけていた。アイロンを取りに戻ったんだろう。
俺は明日休みだが、柳井さんは土日も関係なく仕事だ。今日は俺が料理をするか……?
何か作れるものがあるだろうかと冷蔵庫を漁っている間に、柳井さんが戻ってきた。
「ペガスス号借りたよ」
「ペガスス?車のことですか?」
「うん」
車のキーを受け取る。
「ペルセウス」
「へ?俺ですか?」
秋の星座の物語だ。勇者ペルセウスはペガススに乗って登場し、アンドロメダ姫に今にも襲いかかりそうなおばけくじらを退治して姫を助けるんだ。
「柳井さんがアンドロメダ?」
「なんだ、寝てるのに知ってるのか」
俺がいつも途中で寝るからって、知らないと思って揶揄っていたのか。
「柳井さん、ごはんどうしましょう。俺作りましょうか」
「作れるの?」
「う……簡単なものなら」
柳井さんはこれからアイロン掛けをしたいんだよな。俺がそちらを代われればよいが、どちらも今のスキルでは難しい。
「あの………何か買ってきてもよろしいでしょうか」
それが一番無難である。柳井さんの冷たい視線が痛い。
「柳井さんが食べたいもの、リクエストしてもらっていいので」
沈黙の末。
「牛丼」
「えっ、牛丼でいいんですか?」
「うん」
何かもっとないのか。寿司とか、ピザとか。
「遠慮してます?」
「してない。あの味は家では出せない」
「た、たしかに……」
普段自炊派の柳井さんも、たまに無性に食べたくなる味ということだろうか。
詳細に注文を確認し、買い出しに出かける。オレンジ色の見慣れた看板。
俺も料理覚えようかな……。
いつまで柳井さんといられるか分からないが、彼にだけ負担を強いるのはやはり気が引ける。柳井さんが車問題を解決して自宅に帰ることになったら、今のままだと以前の暮らしに逆戻りだ。
商品を待つ間、思考を巡らす。
いつ……いつ彼は出ていくのだろうか。まだ我が家に来て数日だというのに、想像するだけで体がすうっと冷えるような感覚がする。
俺は明日休みだが、柳井さんは土日も関係なく仕事だ。今日は俺が料理をするか……?
何か作れるものがあるだろうかと冷蔵庫を漁っている間に、柳井さんが戻ってきた。
「ペガスス号借りたよ」
「ペガスス?車のことですか?」
「うん」
車のキーを受け取る。
「ペルセウス」
「へ?俺ですか?」
秋の星座の物語だ。勇者ペルセウスはペガススに乗って登場し、アンドロメダ姫に今にも襲いかかりそうなおばけくじらを退治して姫を助けるんだ。
「柳井さんがアンドロメダ?」
「なんだ、寝てるのに知ってるのか」
俺がいつも途中で寝るからって、知らないと思って揶揄っていたのか。
「柳井さん、ごはんどうしましょう。俺作りましょうか」
「作れるの?」
「う……簡単なものなら」
柳井さんはこれからアイロン掛けをしたいんだよな。俺がそちらを代われればよいが、どちらも今のスキルでは難しい。
「あの………何か買ってきてもよろしいでしょうか」
それが一番無難である。柳井さんの冷たい視線が痛い。
「柳井さんが食べたいもの、リクエストしてもらっていいので」
沈黙の末。
「牛丼」
「えっ、牛丼でいいんですか?」
「うん」
何かもっとないのか。寿司とか、ピザとか。
「遠慮してます?」
「してない。あの味は家では出せない」
「た、たしかに……」
普段自炊派の柳井さんも、たまに無性に食べたくなる味ということだろうか。
詳細に注文を確認し、買い出しに出かける。オレンジ色の見慣れた看板。
俺も料理覚えようかな……。
いつまで柳井さんといられるか分からないが、彼にだけ負担を強いるのはやはり気が引ける。柳井さんが車問題を解決して自宅に帰ることになったら、今のままだと以前の暮らしに逆戻りだ。
商品を待つ間、思考を巡らす。
いつ……いつ彼は出ていくのだろうか。まだ我が家に来て数日だというのに、想像するだけで体がすうっと冷えるような感覚がする。
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