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0時を回った頃。リビングでテキストを広げていたら、柳井さんがまた覗き込んできた。
「これから勉強するの?」
「はい」
「頑張るね。眠れなくならない?」
う……それは、今一緒に寝たらまたお話ししてくれるということでしょうか……?
「眠れないのはいつもなので。あ、でも昨日はお陰様でぐっすりでした。ありがとうございます」
「試験が近いの?」
「いえ、来年の8月です。12月の合格発表で受かっていればそれも受けないんですけどね」
そこまで切羽詰まって毎日勉強しなければならない状況ではない。ただ、合格発表まで何もしないのは落ち着かない。精神安定のためのルーチンだ。
「そう。俺には分からないから、下手なこと言うつもりはないけど」
柳井さんの手が伸びてきて、頬に触れる。思わずビクッと体を硬直させてしまった。
ーー何!?
見上げると、柳井さんと目が合う。無表情だが目は穏やかな色を湛えている。
頬に手を添えられたまま、スッと親指の腹で目の下をなぞられた。
「大丈夫?」
「あ……」
クマができていると指摘されたばかりだ。
「先に寝る。おやすみ」
手が離れていく。
「あっ……俺も、今日は、寝よう……かな?」
思わず立ち上がってそんなことを口走っていた。
「うん」
あ、笑った。
柳井さん、やっぱり優しい人なのかもしれない。というか、間違いなくいい人だ。
「これから勉強するの?」
「はい」
「頑張るね。眠れなくならない?」
う……それは、今一緒に寝たらまたお話ししてくれるということでしょうか……?
「眠れないのはいつもなので。あ、でも昨日はお陰様でぐっすりでした。ありがとうございます」
「試験が近いの?」
「いえ、来年の8月です。12月の合格発表で受かっていればそれも受けないんですけどね」
そこまで切羽詰まって毎日勉強しなければならない状況ではない。ただ、合格発表まで何もしないのは落ち着かない。精神安定のためのルーチンだ。
「そう。俺には分からないから、下手なこと言うつもりはないけど」
柳井さんの手が伸びてきて、頬に触れる。思わずビクッと体を硬直させてしまった。
ーー何!?
見上げると、柳井さんと目が合う。無表情だが目は穏やかな色を湛えている。
頬に手を添えられたまま、スッと親指の腹で目の下をなぞられた。
「大丈夫?」
「あ……」
クマができていると指摘されたばかりだ。
「先に寝る。おやすみ」
手が離れていく。
「あっ……俺も、今日は、寝よう……かな?」
思わず立ち上がってそんなことを口走っていた。
「うん」
あ、笑った。
柳井さん、やっぱり優しい人なのかもしれない。というか、間違いなくいい人だ。
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