あなたはミラ

秋野小窓

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 気づいたときにはもう朝だった。

 ーー昨日のあれは、夢……?

 飛び起きて隣を見ると、布団が綺麗に畳まれていた。
 夢じゃない。柳井さんが俺だけのために星空の解説をしてくれたんだ……!

 転げ落ちるようにベッドから降り、リビングに行くと、

「おはよう」
「おはようございます!」

 黒いシャツをパリッと着こなした柳井さんが迎えてくれる。

「朝飯と、これ、弁当。いる?」
「えっ!ありがとうございます!」

 なんて至れり尽くせりなんだ!

「柳井さん、俺、幸せです。ありがとうございます……!」
「なんだよ、大袈裟だな」

 ちっとも大袈裟なんかじゃない。俺のQOLが一夜にして急上昇している。
 それに、他でもない柳井さんが……っと、これは俺の胸の内に秘めていることだから、本人は気づいていなくていいんだけど。

「今日も帰ってきてくれますか?」
「当たり前だろ。行くところないって」
「よかったです!これ、スペアなんで持っててください」

 抽斗から合鍵を取って渡す。

「車の鍵はここ。平日は基本使わないんで、何か必要だったら乗ってもらって大丈夫です」
「うん」
「帰りは22時くらいだと思います」
「遅いんだな」

 遅い時はもっと遅くなる。22時は俺の中ではスタンダードだ。

「俺のこと気にしないで、夕飯とか風呂とか自由にしててください」
「洗濯がしたい。使っていいか?」
「もちろんです。夜なら風呂場に干して浴室乾燥使ってください」
「分かった」

 先に出るという柳井さんを送り出し、俺も出勤の準備をする。

 手作り弁当なんて何年振りだろうか。いつもは5分で済ませてしまう昼食だが、柳井さんがいてくれるなら昼休みに無理にプラネタリウムに通う必要もない。
 事務所で広げていたら事務さんたちの噂の的になってしまうだろう。銀杏並木のベンチで食べるか。
 まるで遠足気分である。誰かと一緒に暮らすことで、生活がこんなにも彩られるものなのだ。

 社会人になって初めて、ウキウキした気持ちで仕事に向かった。
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