あなたはミラ

秋野小窓

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 さすが、柳井さんの部屋である。

「これ、望遠鏡ですか?」
「うん」

 部屋の隅には立派な望遠鏡。キャンプグッズのようなものもいろいろある。彼の職業を知らなければ、趣味の部屋だと感じてしまうが、半分は商売道具でもあるのだろう。

「食材も持っていっていい?悪くなっちゃうから」
「いいですよ」

 彼が出したものをクーラーバッグに詰めていく。

「柳井さん料理するんですね」
「当たり前だろ」
「俺全然しないんで……」

 時間がもったいないのもあって、大体コンビニ弁当などで済ませてしまう。

「自炊の方が安く済む。まさか調理器具ないのか?」
「いえ、一通りはありますよ。使ってもらって大丈夫です」
「よかった。鍋や包丁まで持ち出さないといけないかと思った」

 詰め終わった荷物から車に運ぶ。部屋に戻ると衣類をまとめているようだった。

「え、このモコモコいります?」

 持っていく服の中に分厚い上着を見つけて思わずツッコむ。まだ9月だ。

「いるよ」
「こんなのいつ着るんですか?」
「夜の山はこれないと死ぬ」

 そうか。天体観測をするのに山に行くのか。
 シーズンごとに天体観測イベントもやっているから、仕事でも使うということなんだろう。

「死ぬなら持っていかないとですね」
「うん」

 仕事道具も含めると、それなりの荷物の量になった。

「今日はいったんいいですかね?また足りないものあったら取りに来ましょう」

 車に乗り込み、来た道を戻る形で家に向かった。
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