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「あー……えっと、ヤナイさん?」
社用車の助手席に、憧れの人が乗っている。そわそわしながら話しかけるが、俺が助けたからといって態度が変わるわけではないらしい。清々しいまでに、塩対応が続いている。
「一応、その、自己紹介しておきますね。重谷泰歩と申します」
「ヤスト?」
「やすほ、です。泰然自若のタイに、歩く。珍しいですよね」
「ヤスホ」
「はい」
話し方はぶっきらぼうだが、声は間違いなくプラネタリウムの解説と同じだ。その声で名前を呼ばれたことに感動する。
「26です。科学館の近くの税理士事務所で働いています。それでよく昼休みに伺っていて……」
「サボりじゃないんだ」
「はい、休憩の1時間以内でちゃんと仕事戻ってますから」
認識されていると思わなかったが、平日日中から足繁く通ってくるスーツ姿のサラリーマンがいたらサボりに見えるよな。
「好きなの?」
ヤナイさんからの急な問いかけにドキリとする。
「えっ………あ、プラネタリウム、ですか?」
「うん」
「はい、あの、好きです」
びっくりした。そうだよな。まさかあなたの解説の声が好きで通っていますだなんて言えるはずなく。
でも。
「その割に、いつも寝てるよね」
「…………」
どこまで認識されているのだろう。そもそも覚えられていたことにも驚いたが、寝ていることを知られているとは、決まりが悪すぎる。
否定も肯定もできずに逡巡していると、
「別にいいけど」
全然よくなさそうにそう言われる。
「……すみません………」
一生懸命解説しているのに寝られたら気分悪いよな。俺だって客先の社長に財務状況の報告をしている最中に寝られたら腹立つと思うし。そんな非常識な社長いないけど。
「柳井京。柳の井戸に京都のキョウ。公務員」
「え、あ、ありがとうございます!」
自己紹介、柳井さんもしてくれたことにびっくりしてお礼を言う。
「お仕事、公務員なんですね?」
「県に雇用されてる」
「たしかに、県立の施設ですもんね」
しかし、公務員と言われてイメージする人物像と大きく異なっていて、脳が混乱している。
「あ、すみません。そろそろ事務所着くので、社用車返して今日は早退できないか確認してきます」
「早退?」
「柳井さんの必要な荷物取りに行ったりしますよね」
急に生活拠点が変わるんだ。いろいろと準備もいるよな?
どうせ使えもしない有給が溜まっている。今日納期のものはないから、問題ないだろう。
「少し待っていてください。あ、連絡先だけこれに登録しておいてもらえますか?」
スマホを渡して入力してもらう。近くのコンビニに柳井さんを降ろして事務所に向かった。
社用車の助手席に、憧れの人が乗っている。そわそわしながら話しかけるが、俺が助けたからといって態度が変わるわけではないらしい。清々しいまでに、塩対応が続いている。
「一応、その、自己紹介しておきますね。重谷泰歩と申します」
「ヤスト?」
「やすほ、です。泰然自若のタイに、歩く。珍しいですよね」
「ヤスホ」
「はい」
話し方はぶっきらぼうだが、声は間違いなくプラネタリウムの解説と同じだ。その声で名前を呼ばれたことに感動する。
「26です。科学館の近くの税理士事務所で働いています。それでよく昼休みに伺っていて……」
「サボりじゃないんだ」
「はい、休憩の1時間以内でちゃんと仕事戻ってますから」
認識されていると思わなかったが、平日日中から足繁く通ってくるスーツ姿のサラリーマンがいたらサボりに見えるよな。
「好きなの?」
ヤナイさんからの急な問いかけにドキリとする。
「えっ………あ、プラネタリウム、ですか?」
「うん」
「はい、あの、好きです」
びっくりした。そうだよな。まさかあなたの解説の声が好きで通っていますだなんて言えるはずなく。
でも。
「その割に、いつも寝てるよね」
「…………」
どこまで認識されているのだろう。そもそも覚えられていたことにも驚いたが、寝ていることを知られているとは、決まりが悪すぎる。
否定も肯定もできずに逡巡していると、
「別にいいけど」
全然よくなさそうにそう言われる。
「……すみません………」
一生懸命解説しているのに寝られたら気分悪いよな。俺だって客先の社長に財務状況の報告をしている最中に寝られたら腹立つと思うし。そんな非常識な社長いないけど。
「柳井京。柳の井戸に京都のキョウ。公務員」
「え、あ、ありがとうございます!」
自己紹介、柳井さんもしてくれたことにびっくりしてお礼を言う。
「お仕事、公務員なんですね?」
「県に雇用されてる」
「たしかに、県立の施設ですもんね」
しかし、公務員と言われてイメージする人物像と大きく異なっていて、脳が混乱している。
「あ、すみません。そろそろ事務所着くので、社用車返して今日は早退できないか確認してきます」
「早退?」
「柳井さんの必要な荷物取りに行ったりしますよね」
急に生活拠点が変わるんだ。いろいろと準備もいるよな?
どうせ使えもしない有給が溜まっている。今日納期のものはないから、問題ないだろう。
「少し待っていてください。あ、連絡先だけこれに登録しておいてもらえますか?」
スマホを渡して入力してもらう。近くのコンビニに柳井さんを降ろして事務所に向かった。
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