あなたはミラ

秋野小窓

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 青々とした銀杏並木を抜け、いつものように受付でチケットを頼む。

「13時の回、お願いします」
「年間パスポートですね。只今発券します」

 昼休み、時間が取れた日は決まってここに立ち寄る。率先してお昼の電話番を買って出るのは、12時から休憩に出た人たちが戻ってきてバトンタッチするとちょうどよく上映時間に間に合うからだ。

「プラネタリウムは間もなく上映です。いってらっしゃい」
「ありがとうございます」

 小さな紙片を受け取り、急ぎ足で奥の入場口へ向かう。係員にチケットを見せ、ドアをくぐると、薄暗い空間にずらりと椅子が並ぶ。階段状の通路を進み、なるべく後ろの席を狙う。平日日中のプラネタリウムはガラガラだ。後ろから2番目、中央の通路のすぐ左の席に陣取る。

 座ってスマホの電源を切ったところですぐに照明が暗くなる。上映開始だ。

「本日はご来場ありがとうございます」

 当たりだ。柔らかい男性の声。
 お決まりのアナウンスを聞きながら、席を後ろに倒す。

「辺りがだんだん暗くなってきました。今日の一番星はどこでしょうか」

 13時の生解説を担当しているのはおそらく2名のスタッフ。ハキハキした女性の声と、今日と同じ男性の声のどちらか。毎日来ているわけではないが、男性の方が登場頻度が高い。

「見つかりましたか?ーーここに、明るい星が輝いていますね」

 レーザーポインターの赤い輪が1箇所を指し示す。毎回同じ流れ。同じセリフを、同じ抑揚で。脳内で重ねて唱えられるくらいにすっかり覚えてしまった。

 でも、覚えているのは冒頭だけ。なぜなら……。
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