氷の姫は戦場の悪魔に恋をする。

米田薫

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第46章デート

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そしてエマとゼンは晴れて正式に夫婦となった。
二人は仲の良い夫婦として近所でも有名だった。

そんなある日、エマはゼンに言った。
「今日は出かけませんか?」

「分かった。」
ゼンは照れくさそうに答えた。

歩き出すとエマはゼンの腕に抱きこうとした。
ゼンはエマに対し抱きつけるように右腕を差し出した。

エマが腕に抱きつくのは珍しいことではない。
それにも関わらずゼンが照れるのを見て、エマは少し嬉しい気持ちになった。

そしてエマ達は外に出かけ、まずはルームで行なわれている劇を見た。
「劇か。お前が劇を好むとは知らなかったぞ。」

エマはゼンの言葉に首を振った。
「劇は好きよ。ただ夢だったの」

「夢?」

「ええ。以前は一人で見に行っていたのだけど恋人同士で来ている人も多くてね。少しだけ羨ましかったの。」

そしてエマはゼンの顔を見るとゼンにキスをした。

「こんな場所だぞ。何をする?」
エマはまた照れた表情を見せた。

「大丈夫よ。皆、劇を見てるんだからこっちは見てないって。」
そう言うとエマはもう一度ゼンにキスをした。

次に美味しいと評判の甘味所を訪れた。
「俺はあまり甘いものは好まないのだが。」
ゼンは少し困ったような表情を見せた。

「駄目。恋人は劇を見た後大抵甘味所に立ち寄るそうよ。」
そういうとエマは評判の甘味を一つとお茶を二つ頼んだ。

そして甘味を爪楊枝のような物で、取るとそれをゼンに渡して言った。
「食べさせて。」

ゼンは驚いた表情を見せた。
エマはそれがなんだか嬉しくて、より強い口調で言った。
「早く。お願い。」

ゼンはエマが頼むと大抵の事はする。
ゼンは諦めたように、甘味をエマの口元に運ぶとエマに食べさせた。

「美味しい。もう一回やって。」

最初は照れていたゼンも徐々に慣れてきたのか、堂々とエマに食べさせるようになった。
「面白いな。お前は随分、美味そうに食べるし、俺も甘味が食べたくなって来たぞ。」

エマはゼンの言葉を聞くといきなりゼンにキスをした。
そして長いキスを終えるとエマは得意げに言った
「私のキス。甘い味がするでしょ。」

それを聞くとゼンは恥ずかしくなったのかまた目をそらして言った。
「お前は本当に大胆だな。これでは俺の心臓が持たないぞ」

「それは大変だね。慣れるためにもう一回する?」
エマはそう言ってゼンを更に困らせた。

そして最後にエマ達は星を見に、高い丘を訪れた。

「綺麗だな。」
ゼンは星を見るとつぶやくように言った。

「本当ね」
エマもそれに応じた。

そしてエマが言った。
「私ね。今。本当に幸せなの」

ゼンもエマの言葉に応じた。
「俺もだ」

エマは言った。
「私ね。最近思うの。あなたが生まれてきた理由はきっと私を幸せにする事だったのよ。だからもう昔の事は忘れて良いわ。そんなに悲しい顔をしないで笑いなさいよ。」

エマの話を聞いてゼンは悲しそうに答えた。
「すまない」

結局エマ達は目を背けているだけなのだ。
ゼンは多くの人間を殺戮し、その結果として平和が訪れる事もなかった。
彼は多くの人間の死を無駄にしたのである。
それは決して許される罪では無いだろう。

エマは星に願うように言った。
「私はどうなっても良いわ。どうかあなただけは幸せになってね。」
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