氷の姫は戦場の悪魔に恋をする。

米田薫

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第37章新しい目標

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エマとゼンは解任された後、再びゼンの邸宅で生活を始めた。
ゼンは新しい生活に少し戸惑っていたが、エマは違った。
以前と異なり積極的に町に出るようになったエマはその美しさと優しさそして賢さから多くの人々の信頼を得るようになり、様々な頼みごとをされて大忙しだった。

ある日、そんなエマにゼンが言った。
「俺にも何か出来る事が無いだろうか。」

エマは言った。
「出来る事?」

ゼンは答えた。
「将軍を解任されて生活に余裕が出来たのは良い。だがあまりに暇なのも落ち着かない。何か働きたいのだがなかなか難しいよな」

エマは考えた。
ゼンは名の知れた将軍だ。
普通の人間と同じ様に職に就くことは難しいだろう。

エマは言った。
「そうですねね。さすがに、肉体労働などは雇ってもらえないでしょう」

ゼンは言った。
「俺はそれでも良いんだがな。体力には自信がある。」

エマは肉体労働を楽しそうに行なうゼンを想像して少し微笑んだ。
もっとも現実的では無いだろう。

エマはその後もしばらく考えていたが、一つ良い案が浮かんだ。
「学校を開いてはどうかしら?」

「学校?」
ゼンはエマの答えを予想していなかったのか、驚きたずねた。

エマは言った。
「ええ。子供達を集めて武術を教えてみたら良いんじゃないかしら?」

ゼンはそれを聞くと顔をしかめた。
「子供に人殺しの術を教えるのか?」

エマは言った。
「いいえ。人を殺す術を教えるのではありません。武術を極める事を通じて、己の精神を鍛えて、心身ともに健全な人間になることを目指すの。」

ゼンはエマの言葉を聞いて、感心した様子で言った。
「お前の見識は凄いな。戦いのための術に過ぎない武術を使って、心身を鍛えるのか。戦ばかりしてきた俺には思いつかない発想だ」

エマは我ながら良いことを思いついたものだと思った。
意外と子供が好きなゼンはきっと、子供を教える事を好む。
それに、健全な形で、武術を教える事はゼンの行なってきた事がかならずしも忌むべき事ではないと感じることに繋がるかもしれない。

ゼンはその後、意を決した様子で言った。
「エマ。俺を手伝ってくれるか。」

エマはゼンが新しい目標を見つけてくれたことが嬉しかった。
そして笑みを浮かべて言った。
「ええ。よろこんで」

そしてエマは思わず、ゼンに抱きついたのだった。
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