氷の姫は戦場の悪魔に恋をする。

第３６章ゼンとニカ

エマ達はルームに戻ると、すぐにニカの元へ向かった。
ニカはどこか開き直ったような様子でエマたちに言った。
「いやー。お互い年貢の納め時だな。俺達を懲らしめる正義の味方が現れたらしい。」

ゼンはニカを睨みつけて言った。
「随分気楽だな」

するとニカは真面目な顔で言った。
「冗談を言うな。正直あれ程無茶苦茶とはな。初対面の時点であいつと刺し違えなかった俺の不明を恥じるよ。」

そこにはニカの無念さが現れていた。
そしてその事はゼンにも伝わったらしくゼンはため息をついた。
ニカもゼンもあれ程の事をやったのだ。
二人の頭には深い罪悪感がかけめぐっていた。

するとエマが笑顔で言った。
「過ぎた事は仕方が無いわ。しばらく遊んで暮らしましょう。」

すべてを諦めたようなエマの言葉にゼンは驚いた表情を見せた。
それに対してニカはエマと長い付き合いである。
ニカはエマが、優秀な官僚として自分たちの今後に見切りを付けた事を感じ取った。
そして言った。
「そうだな。それが良い。俺もしばらくのんびりするさ。」

ニカの言葉にエマが言った。
「本当ですか。じゃあ、贅沢が出来るほどの大金を下さい。」

するとニカは答えた。
「断る。俺の金だ」

それに対してエマは言った
「私達を利用して稼いだお金でしょ。という事は私のものです」

エマはそう言うとゼンの腕に抱きついて言った。
「これからはずっと一緒にいられるわね。２人で沢山楽しい事を見つけていきましょう。」

ゼンはエマの顔を見ると観念したのか言った。
「そうだな」

その様子を見てニカは笑って言った。
「町の噂だぞ。あの氷の姫の鉄壁の守りをを戦場の悪魔が溶かしてしまったとな。少し寂しいな。俺とお前は生涯独り身かと思っていたがお前に先を越されるとは。」

その言葉にエマはニカをにらみつけた。
「余計なお世話です。勝手に仲間にしないでください。」

そして三人は笑い合った。
その声はどこか虚しく屋敷中に響いたのだった。