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第34章追放
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それからしばらくしてニカは突然、皇帝に呼び出された。
ニカが向かうと、皇帝の隣に見知らぬ人間が立っていた。
ニカは不思議に思い、皇帝に問いかけた。
「陛下。この方はどなたでしょうか?」
皇帝は言った。
「この方は、私の先生だ。名をキキョウと言う。4、5年前に知り合ってな、色々助言を頂いて来た。この度、お前に代わって宰相を勤めてもらう事になる」
それを聞いてニカは驚いた。
「失礼ですが、どの様な実績がおありになるのですか?」
王は言った。
「実績はない。だが明確な戦略を持っている上、若い頃はコリン共和国に騙されて殺されかけるという仕打ちに遭い、それに必死に耐えてここまで来られた方だ。今後は先生の教えどおり、カンテルと結んで二面外交をしているコリンを叩いて完全に手中に入れようと思う」
コリン共和国はルームの南にある小国でルームとカンテルに二面外交を展開している。
ニカはたちの悪い人間が現れたものだと思った。
苦労をしたから偉いのではない。
苦労をして成長するから立派な人間なのである。
ここまで実績を挙げてきた、ニカに対し、なんのねぎらいも無く、取って代わろうとする恥知らずな男が立派な人間であるとは思えなかった。
そこでニカは言った。
「つまり、カンテルと結びコリンを討つという事ですね。コリンはそこのキキョウ先生が辱めを受けた場所だ。戦で破ったらどうなさるおつもりですか。」
キキョウは言った。
「当然、私の事を貶めた男には復讐をするつもりです。」
ニカはそれを聞いて思わず笑ってしまった。
なんてたちの悪い男だろう。
宰相にもなってやることが復讐とは。
結局この男は民よりも自分の事の方が大切なのだ。
するとキキョウは言った。
「私の事よりも問題なのはあなただ。国を私物のように扱い、私腹を肥やしている。この国は陛下のものだ。お前のものでは無い」
ニカは思った。
国は皇帝のものでは無い。
民のものだ。
真の名臣とは王に仕えるのではなく民に仕えるのである。
それには結果を出してきた。
結果を出したものが贅沢をせずに、民が今後の生活に希望を持てるのか。
だがニカは言い返さなかった。
この男の言葉は皇帝の自尊心を満たしてくれる。
この男は皇帝に媚びる意思はない。
ただ無能で、小物であるが故に、皇帝に対して言ったことが、皇帝の満たされない心を満たしてくれるのである。
おそらくニカが何を言おうと決定は覆らないだろう。
そうなるとニカの唯一の気がかりはゼンだった。
そこでニカは言った。
「今、行なっているカンテルとの戦はどうなさるおつもりですか?」
キキョウは答えた。
「倒すべきは義に反するコリンだ。カンテルとは和睦するに決まっているだろう。」
ニカは驚きを通り越して呆れた。
この男は戦というものを知らないのだろう。
しかし、思わず言い返しそうになったが堪えた。
この男と言い争う事は時間の無駄である。
そこでニカは言った。
「しかし、それではゼンは納得しませんよ」
キキョウは言った。
「納得しないだと?国家の決定だぞ。そんな事は許されない。もし、ゼンが命令に逆らうとしたらゼンは国家を支える社稷の臣ではなく、お前におもねる私兵に過ぎなかったという事だ。その時は容赦なく解任する」
ニカは言った。
「何が社稷の臣だ。お前の馬鹿で無知な命令に従うんだから権力におもねる佞臣だろ。ゼンもご苦労な事だな。俺の私兵か、お前の佞臣かどちらかしか選択肢がないなんて。だがどうする気だ?後任は誰にする?」
するとキキョウが言った。
「当面は俺が勤めるがその後はあてがある。マテウスを将軍とするつもりだ。」
ニカは言った。
「マテウス?それは誰だ?」
キキョウは言った。
「コリンで辱めを受けた際、私を庇ってくれた友人だ。大変な人物で人格者だから、ゼンよりも良く将軍を勤めるだろう。」
ニカはあまりの物言いに眩暈を覚えながら言った。
「それは良い人だな。そんなに良い人なら安心だ。」
そしてニカはキキョウとの間合いを計った。
武器はない。
すばやく近づき、首を絞めて殺す他ないだろう。
ニカ自身も死ぬだろうが、それでもこんな男に政治を無茶苦茶にされるよりはましだと思った。
しかし、ニカが動き出すよりも先に、ニカのことを良く知る皇帝が言った。
「もう話は終わりだ。この男をつまみ出せ。」
そしてニカは兵士達に取り押さえられた。
そして皇帝は言った。
「そんなに俺に不満があるのならお前が皇帝になればよかったんだ。お前の人形役はもう沢山だよ。」
その言葉にニカは言った。
「全くだな。」
そしてニカは城の外に追い出されたのだった。
ニカが向かうと、皇帝の隣に見知らぬ人間が立っていた。
ニカは不思議に思い、皇帝に問いかけた。
「陛下。この方はどなたでしょうか?」
皇帝は言った。
「この方は、私の先生だ。名をキキョウと言う。4、5年前に知り合ってな、色々助言を頂いて来た。この度、お前に代わって宰相を勤めてもらう事になる」
それを聞いてニカは驚いた。
「失礼ですが、どの様な実績がおありになるのですか?」
王は言った。
「実績はない。だが明確な戦略を持っている上、若い頃はコリン共和国に騙されて殺されかけるという仕打ちに遭い、それに必死に耐えてここまで来られた方だ。今後は先生の教えどおり、カンテルと結んで二面外交をしているコリンを叩いて完全に手中に入れようと思う」
コリン共和国はルームの南にある小国でルームとカンテルに二面外交を展開している。
ニカはたちの悪い人間が現れたものだと思った。
苦労をしたから偉いのではない。
苦労をして成長するから立派な人間なのである。
ここまで実績を挙げてきた、ニカに対し、なんのねぎらいも無く、取って代わろうとする恥知らずな男が立派な人間であるとは思えなかった。
そこでニカは言った。
「つまり、カンテルと結びコリンを討つという事ですね。コリンはそこのキキョウ先生が辱めを受けた場所だ。戦で破ったらどうなさるおつもりですか。」
キキョウは言った。
「当然、私の事を貶めた男には復讐をするつもりです。」
ニカはそれを聞いて思わず笑ってしまった。
なんてたちの悪い男だろう。
宰相にもなってやることが復讐とは。
結局この男は民よりも自分の事の方が大切なのだ。
するとキキョウは言った。
「私の事よりも問題なのはあなただ。国を私物のように扱い、私腹を肥やしている。この国は陛下のものだ。お前のものでは無い」
ニカは思った。
国は皇帝のものでは無い。
民のものだ。
真の名臣とは王に仕えるのではなく民に仕えるのである。
それには結果を出してきた。
結果を出したものが贅沢をせずに、民が今後の生活に希望を持てるのか。
だがニカは言い返さなかった。
この男の言葉は皇帝の自尊心を満たしてくれる。
この男は皇帝に媚びる意思はない。
ただ無能で、小物であるが故に、皇帝に対して言ったことが、皇帝の満たされない心を満たしてくれるのである。
おそらくニカが何を言おうと決定は覆らないだろう。
そうなるとニカの唯一の気がかりはゼンだった。
そこでニカは言った。
「今、行なっているカンテルとの戦はどうなさるおつもりですか?」
キキョウは答えた。
「倒すべきは義に反するコリンだ。カンテルとは和睦するに決まっているだろう。」
ニカは驚きを通り越して呆れた。
この男は戦というものを知らないのだろう。
しかし、思わず言い返しそうになったが堪えた。
この男と言い争う事は時間の無駄である。
そこでニカは言った。
「しかし、それではゼンは納得しませんよ」
キキョウは言った。
「納得しないだと?国家の決定だぞ。そんな事は許されない。もし、ゼンが命令に逆らうとしたらゼンは国家を支える社稷の臣ではなく、お前におもねる私兵に過ぎなかったという事だ。その時は容赦なく解任する」
ニカは言った。
「何が社稷の臣だ。お前の馬鹿で無知な命令に従うんだから権力におもねる佞臣だろ。ゼンもご苦労な事だな。俺の私兵か、お前の佞臣かどちらかしか選択肢がないなんて。だがどうする気だ?後任は誰にする?」
するとキキョウが言った。
「当面は俺が勤めるがその後はあてがある。マテウスを将軍とするつもりだ。」
ニカは言った。
「マテウス?それは誰だ?」
キキョウは言った。
「コリンで辱めを受けた際、私を庇ってくれた友人だ。大変な人物で人格者だから、ゼンよりも良く将軍を勤めるだろう。」
ニカはあまりの物言いに眩暈を覚えながら言った。
「それは良い人だな。そんなに良い人なら安心だ。」
そしてニカはキキョウとの間合いを計った。
武器はない。
すばやく近づき、首を絞めて殺す他ないだろう。
ニカ自身も死ぬだろうが、それでもこんな男に政治を無茶苦茶にされるよりはましだと思った。
しかし、ニカが動き出すよりも先に、ニカのことを良く知る皇帝が言った。
「もう話は終わりだ。この男をつまみ出せ。」
そしてニカは兵士達に取り押さえられた。
そして皇帝は言った。
「そんなに俺に不満があるのならお前が皇帝になればよかったんだ。お前の人形役はもう沢山だよ。」
その言葉にニカは言った。
「全くだな。」
そしてニカは城の外に追い出されたのだった。
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