氷の姫は戦場の悪魔に恋をする。

米田薫

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第22章副将軍とエマ(後編)

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ゼンは夜、明かりをつけて仕事をしていた。
そして仕事が終わると、大きく伸びをした。
「これで、今日の仕事は終わりだな」

ゼンはふと昔の事を思い出した。
エマが仕事を手伝い始める前の事だ。
あの頃は、仕事が終わる事はなく、無限にある仕事を出来る限りこなしていくという感覚だった。

(それが今では夜まで働く事自体、久し振りだからな)
ゼンはエマによって自分の生活が大きく変わったことを感じていた。

(俺は将軍になってから少し視野が狭くなっていたのかもしれないな)
ゼンは過去の自分を客観的に見てその様に思った。
あの当時は部下から舐められないようとにかく必死だった。
昼夜を問わず働き、自分で自分を追い詰めていた。

しかし、今は違う。
今のゼンには余裕がある。
部下からは尊敬を受けていることを実感できているし、補佐官の助力の下、無理なく働く事が出来ている。
そしてそれは全部、エマのお陰なのだろうと思っていた。

ゼンは寝台へ近づくと、ぐっすり眠っているエマを見た。
彼女はどうやら疲れていたようで、先ほどの一件でここに逃げてきた後、すぐに眠ってしまったらしい。
「全く。お前は無茶苦茶だな。さっきは驚いたぞ。」
ゼンはエマに心から感謝した。
そして今の自分が彼女の価値に見合うものを与えられているか少しだけ不安になった。

するとエマが言った。
「大丈夫ですよ。きっと何とかなります」

ゼンは驚いて言った。
「俺の話を聞いていたのか?」

しかし、エマは返事をしなかった。
どうやらただの寝言のようだ。
ゼンは安心して改めてエマの寝顔を見た。

そして言った。
「こう見ると、綺麗で大人しそうなんだがな。実は意外と気が短くて、物怖じしない性格なんだよな。それに意外と、おしゃべりで、大食いだ」

ゼンはなんだかエマが愛おしくてたまらなくなった。
そしてエマの頭を撫でて言った。
「いつもありがとう」

エマの幸せそうな寝顔を見ていると、ゼンはなぜか今は亡き母の事を思い出した。
そして思った。
(そうだ。今度、エマと星を見に行こう)

ゼンはそんな事を思うようになった自分に驚き、改めて、エマに感謝したのだった。
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