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第19章仕事
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戦が始まってしばらくするとエマはゼンの仕事の仕方は異常である事を知った。
ゼンという男は他人に仕事を任せる事が出来ないのだ。
そのため全ての事務を一人でこなしており、三日三晩寝ないで過ごす事も珍しくなかった。
そんなある日、エマが目覚めるとゼンが机で眠っていた。
どうやら、あまりの疲労に眠ってしまったらしい。
エマはゼンの寝顔を見て、寝てる姿は王子様みたいなのになと思った。
そしてのエマは自らの仕事がゼンの補佐である事を思い出した。
そこでエマはゼンの前にたまっている書類の山に手を伸ばし、整理を始めたのだった。
それから夕方まで整理を行い、大方の整理が終わった頃、ゼンが目を覚ました。
「何をやっている?」
ゼンはエマが書類に触れている所を見ると、凄い剣幕でエマをにらんだ。
しかし、エマはその反応自体を予測していたので気にせずに作業を続けながら言った。
「積まれていた書類を、期限、性質、重要度に応じて分類しておきました。それと左によけておいたのはあなたが自分でやらなくても良いのでは無いかと思われる書類です。軽く目を通した上で、下の者に割り振るのが良いと思います。」
しかし、ゼンの怒りは収まらなかった。
「俺が聞いているのはそこじゃない。どうして俺が寝ている隙に俺の書類に手を出した?」
「だって起きている間には絶対書類に触れさせてくれないでしょう」
エマは努めて冷静に言い返した。
するとゼンは更に怒り言った。
「さてはお前。書類に何か不正をしたんじゃないだろうな」
エマは書類を勝手に整理した事についてゼンが怒ること自体は想像していた。
だからゼンに怒られても冷静に対処するつもりだった。
しかし、エマを疑うゼンの言葉だけは我慢できなかった。
「あなたが他人を信用しない事は知っているし、それはあなたの自由です。でも私を疑うのは筋違いです。私はやろうと思えばあなたを殺す機会だってあったんですから」
それを聞いてゼンは冷静になったのかエマに諭すような声で言った。
「お前の言い分は分かった。だが今後このような事はするな」
エマは納得が行かなかったため手を止めずにゼンに言った。
「なぜですか?」
するとゼンは厳しい目で答えた。
「これは俺の仕事だからだ。」
「私はあなたの仕事を代わりにやった訳ではありません。あくまであなたの仕事が効率的になる様、整理しただけです。」
「いらない」
「でうして?」
「俺一人で十分出来るからだ」
「そんなの無理に決まっているでしょう!」
エマは思わず厳しい口調で叫んでしまった。
それを聞くとゼンは驚いた様子でエマを見た。
「あなたが人を信用しないのは自由だけど、少なくとも仕事は他人と分担すべきです。そうやって無茶してるとすぐに死にますよ」
するとゼンは笑いながら言った。
「お前は言う事が大げさだ。そんな事で俺が死ぬと思うか。」
エマは真剣な表情で答えた。
「死にますよ。私もそうでしたから」
そしてエマは自分の過去の体験を話し出した。
「私の母は平民の出身でその立場は弱いものでした。ですから私は必死に勉強してニカに頼み込み官僚としての道を歩み始めました。しかし、責任感と劣等感から他人に任せられず気付いた時には倒れていました。」
「それは大変だったな」
ゼンは優しげな顔でエマの話に答えた。
「はい。目覚めた後はひどく後悔しました。結局、守りたかった母は私を心配して死んでしまったのですから。それからは一晩中泣き続けました。死も考えました。でもそのお陰で気付けたんです。人は助け合って生きていて、自分が助ければ相手も助けてくれる。人は一人では生きていけないんだってことに」
ゼンはエマの話をじっと静かに聞いていた。
恐らく何かを考えているのだろう。
するとエマはゼンに近づきゼンの手を握って言った。
「いきなりは難しいでしょう。だからまずは私を頼って下さい」
ゼンは観念したように言った。
「分かった。よろしく頼む」
エマはゼンの言葉を聞いて嬉しそうに微笑んだのだった。
ゼンという男は他人に仕事を任せる事が出来ないのだ。
そのため全ての事務を一人でこなしており、三日三晩寝ないで過ごす事も珍しくなかった。
そんなある日、エマが目覚めるとゼンが机で眠っていた。
どうやら、あまりの疲労に眠ってしまったらしい。
エマはゼンの寝顔を見て、寝てる姿は王子様みたいなのになと思った。
そしてのエマは自らの仕事がゼンの補佐である事を思い出した。
そこでエマはゼンの前にたまっている書類の山に手を伸ばし、整理を始めたのだった。
それから夕方まで整理を行い、大方の整理が終わった頃、ゼンが目を覚ました。
「何をやっている?」
ゼンはエマが書類に触れている所を見ると、凄い剣幕でエマをにらんだ。
しかし、エマはその反応自体を予測していたので気にせずに作業を続けながら言った。
「積まれていた書類を、期限、性質、重要度に応じて分類しておきました。それと左によけておいたのはあなたが自分でやらなくても良いのでは無いかと思われる書類です。軽く目を通した上で、下の者に割り振るのが良いと思います。」
しかし、ゼンの怒りは収まらなかった。
「俺が聞いているのはそこじゃない。どうして俺が寝ている隙に俺の書類に手を出した?」
「だって起きている間には絶対書類に触れさせてくれないでしょう」
エマは努めて冷静に言い返した。
するとゼンは更に怒り言った。
「さてはお前。書類に何か不正をしたんじゃないだろうな」
エマは書類を勝手に整理した事についてゼンが怒ること自体は想像していた。
だからゼンに怒られても冷静に対処するつもりだった。
しかし、エマを疑うゼンの言葉だけは我慢できなかった。
「あなたが他人を信用しない事は知っているし、それはあなたの自由です。でも私を疑うのは筋違いです。私はやろうと思えばあなたを殺す機会だってあったんですから」
それを聞いてゼンは冷静になったのかエマに諭すような声で言った。
「お前の言い分は分かった。だが今後このような事はするな」
エマは納得が行かなかったため手を止めずにゼンに言った。
「なぜですか?」
するとゼンは厳しい目で答えた。
「これは俺の仕事だからだ。」
「私はあなたの仕事を代わりにやった訳ではありません。あくまであなたの仕事が効率的になる様、整理しただけです。」
「いらない」
「でうして?」
「俺一人で十分出来るからだ」
「そんなの無理に決まっているでしょう!」
エマは思わず厳しい口調で叫んでしまった。
それを聞くとゼンは驚いた様子でエマを見た。
「あなたが人を信用しないのは自由だけど、少なくとも仕事は他人と分担すべきです。そうやって無茶してるとすぐに死にますよ」
するとゼンは笑いながら言った。
「お前は言う事が大げさだ。そんな事で俺が死ぬと思うか。」
エマは真剣な表情で答えた。
「死にますよ。私もそうでしたから」
そしてエマは自分の過去の体験を話し出した。
「私の母は平民の出身でその立場は弱いものでした。ですから私は必死に勉強してニカに頼み込み官僚としての道を歩み始めました。しかし、責任感と劣等感から他人に任せられず気付いた時には倒れていました。」
「それは大変だったな」
ゼンは優しげな顔でエマの話に答えた。
「はい。目覚めた後はひどく後悔しました。結局、守りたかった母は私を心配して死んでしまったのですから。それからは一晩中泣き続けました。死も考えました。でもそのお陰で気付けたんです。人は助け合って生きていて、自分が助ければ相手も助けてくれる。人は一人では生きていけないんだってことに」
ゼンはエマの話をじっと静かに聞いていた。
恐らく何かを考えているのだろう。
するとエマはゼンに近づきゼンの手を握って言った。
「いきなりは難しいでしょう。だからまずは私を頼って下さい」
ゼンは観念したように言った。
「分かった。よろしく頼む」
エマはゼンの言葉を聞いて嬉しそうに微笑んだのだった。
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