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第18章温かい朝

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次の日の朝、エマはかつて無いほどの安心感を感じて目覚めた。
そして驚いた。
なんとゼンに抱きしめられていたのである。

エマは驚いて言った。
「私から言った事ですが、まさかこんな大胆な事をしてくるとは思いませんでした。」

しかし、ゼンに反応は無かった。
そこでエマはゼンが眠っている事に気づいた。
眠っているなら仕方が無い。
一緒に眠っている以上ねぼけて抱きしめてしまう事もありうることだ。
怒るようなことではない。

エマは静かにゼンの腕をほどき、寝台から起き上がった。
そしてゼンの顔を見た。
その寝顔は普段のゼンからは想像も出来ないほどに安らかな顔だった。
「全く。いつも寝ていれば良いのに」

エマはそのまま起き上がると、水で体を清め、服を着替えた。
そしてゼンの体を揺すっていった。
「もう朝ですよ。起きたらいかがですか。」

ゼンはエマの声が聞こえたのか、ゆっくりと目を覚ました。
そしてしばらくは寝ぼけているのか、安らかな笑みを浮かべていたが目が覚めてくると驚いたような表情をして言った。
「俺は寝ていたのか」

エマはゼンが何に驚いているのか分からず言った。
「はい。さっきまでぐっすり眠っていましたよ」

するとゼンは立ち上がると、エマをにらみつけた。
「お前。俺に何かしただろう。何が目的だ」

エマは突然の言われない非難に逆に腹が立って言った。
「何かするわけ無いじゃないですか。あなたを眠らせて私に一体何の得があるんですか」

ゼンはエマの言葉を聞いて、冷静になったのか、反省した様子で言った。
「そうだな。すまない。変な事を言った。」

そして、不思議そうに言った。
「俺は、本来少しの音でも目覚めるほど眠りが浅いし、朝日が差し込んだらどんなに疲れていても、はっきりと目が覚めるんだがな。不思議な事もあるものだ」

エマにはゼンが深く眠ってしまった理由が分かっていた。
なぜならエマも同じだったからである。
つまりゼンがエマの存在に安心した事と同じ様に、エマもゼンの存在に安心していたのだ。
勿論、その事をゼンに言うつもりは無い。

だがなぜかエマにはその事が凄く嬉しかった。
するとエマの様子に気付き不審に思ったのか、ゼンが言った。
「何を笑っている。もしかしてお前が何かしたのか」

「別に。私は何もしてませんよ。ただあなたが勝手に眠っただけじゃないですか」
エマは、ゼンに向かって笑顔でその様に答えたのだった。
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