氷の姫は戦場の悪魔に恋をする。

米田薫

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第10章内乱

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ニカは宰相として独自の政策を実施していた。
それは端的に言えば富めるものをさらに富ませるというものである。
自ら賄賂を受け取り、そこに、特権を与えて、商業を大きく発展させた。
しかし、独特のバランス感覚で貧しい民の援助や、身分にとらわれない人材の登用も行なったため結果的には国全体が栄えていった。

もっとも、他の貴族たちは事実上独裁を行なうニカに対する不満を強めていた。
そんな中、王が危篤であるという情報が流れた。
そこでニカに不満を持っている貴族たちは一斉に反乱を起こしニカを打倒する事を目論んだ。

そんな中、ニカは密かにゼンとエマの住む屋敷を訪れていた。
エマはニカを見ると愉快な様子で言った。
「ついに天下の悪党も年貢の納め時のようですね。」

ニカは言った。
「悪党とは酷いな。俺は国のためを思って行動しているだけだ」

それに対してゼンが言った。
「それで?お前は俺に何を望む」

ニカはゼンの言葉に笑みを浮かべた。
「既に、新しい皇帝は準備してある。敵国に人質に行っている俺の実兄だ。奴を王にする事が出来れば、内政は全て俺の思いのままとなる」

エマはそれを聞いて喜んだ様子で行った。
「そうか。やっとですね。これで、この国は少しはまともになります。」

エマの言葉にニカは言った。
「そうだ。ゼン。宰相の名の元に命じる。逆賊を討て」

するとゼンは言った。
「実はお前が敵対する貴族達からも同様の要請があったぞ。お前を討てば俺は貴族になれるらしい」

それを聞くとニカは焦っていった。
「お前は貴族になりたいのか?」

ゼンは首を横に振った。
「全く。地位に興味は無い。だが貴族の誘いを断って、お前に付くんだ。それ相応の見返りは必要だぞ」

ニカは言った。
「何が欲しい?」

ゼンはニカの言葉を受け、エマを見つめると言った。
「俺はこいつが欲しい。」

ゼンの言葉にニカはため息をついた。
「そういうのは本人に言え。俺は知らん。」

そしてニカはエマの方を見た。
エマは言った。
「構いませんよ。」

その言葉にゼンは喜んだ様子で言った。
「本当か?」

しかし、エマは答えた。
「はい。軍事には関心があります。内乱に関しても起用して下さればお役に立てるでしょう。」

その言葉にゼンは深くため息をついた。
するとニカが言った。
「他にはないのか。ゼン。お前は何を求める?」

ゼンは何も言わなかった。
するとエマが言った。
「目標がないのであれば平和な世の中を目指すというのはどうでしょうか。」

その言葉を聞くとニカはため息をついた。
「もう何百年も乱世が続いているんだぞ。それを終わらせる事は容易ではないだろう。」

その言葉にエマは笑みを浮かべた。
「だから面白いんじゃないですか。」

ニカは渋い顔をした。
するとゼンが言った。
「俺の要求も一緒だ。平和な世の中を作れ」

ニカは驚いた表情でゼンとエマを見た。
(短期間で随分と信頼しあったものだ)

そしてニカは言った。
「分かった。だが確認したい。平和な世を目指すための最も現実的な方法は、今まででは考えられない程の数の敵を殺すことだと思う。それでも良いのか?」

エマはニカの言葉に少し躊躇いを見せた。
するとゼンが言った。
「ああ。覚悟は出来てる。」

そしてゼンは優しい表情でエマを見た。
「安心しろ。やるのは俺とニカだ。俺はお前や、多くの人々のためにこの世界を平和にする。」

ニカはゼンの言葉を聞いて覚悟を決めた。
そしてゼンに向かって右手を差し出した。
ゼンはそれを見て、自らも右手を出し、ニカの右手を強く握った。
他国を震撼させることとなる、最強コンビの誕生の瞬間だった。

そしてエマはその様子をどこか悔しそうに唇をかみ締めていたのだった。
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