氷の姫は戦場の悪魔に恋をする。

第１章物語の始まり

エマ・ハウエル
長く美しい銀髪に女性にしては珍しい高身長と人形のような美しい外見を持つ。
第３０皇女であり、国家に仕える官僚として働いていた。
もっともその有能さと他を寄せ付けない孤高な性格から「氷の姫」として恐れられている。
そんな彼女は今日も仕事に精を出していた。

「クラウス。この書類を作ったのはあなたですか？」
エマは部下のクラウスを呼び出し問いただした。

これに対してクラウスはひどく恐れた様子で言った。
「エマ様。申し訳ありません。その通りです。」

その言葉を聞いてエマはため息をついた。
「そうですか。あなたには期待していたのですが残念です。あなたに渡した資料を全て返しなさい。残りは全て私がやります。」

エマの言葉にクラウスは食い下がった。
「しかし、エマ様はもう何日も寝ていなかったのではありませんか？　どうか私にもう一度チャンスを下さい」

しかし、エマはクラウスを冷たく引き離した。
「口ごたえはやめなさい。それこそ時間の無駄です。それに私達の仕事は国家の根幹に関わるものです。疲れたなどという戯言は許されません。あなたが渡さないというのなら今から取りに行きます。」

そしてエマは立ち上がると、クラウスの机に向かって歩き出した。

「エマ様。お待ち下さい。」
クラウスはエマの行動に驚き、エマに食い下がった。

そんな時だった。
エマは突然歩みを止めるとそのまま地面に倒れ込んだ。

「エマ様。大丈夫ですか？」
クラウスは驚き、エマを呼びかけた。
しかし、エマは一向に返事をせず気を失ったように倒れ込んでいた。

「大変だ。誰か。医者を呼んでくれ。」
クラウスは叫び、必死に周りの助けを呼んだのだった。