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第七十九話 かなしい国

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「敵は本能寺にあり!」

 天正十年六月二日(一九八二年六月二十一日)未明、丹波亀山城を出た明智光秀の軍勢は、突如方向を変え京の都になだれ込んだ。
 光秀にしてみれば、度重なる信長の仕打ちに耐えかねて、天下の任にあたわずと奮い立ったのである。
 軍勢は、桂川を越えたところで夜明けを迎える。
 モノの本によると、総勢は三千名であったと言われている。
「こは謀反か?いかなる者の企てぞ。」
「明智の軍勢と見え申し候。」
「是非に及ばず!」


 おいおい、舞台がちがうって。


「もとい!敵は王宮にあり!不正の温床である、現王家を妥当し、新たな政権を樹立するのだ!」
 王弟オルレアン公爵は、居並ぶ諸将に檄を飛ばした。
 事前に重臣とは協議がなされ、軍勢の配置は済んでいた。
 オルレアン公爵から見ると、官僚の腐敗は末期の清王朝のようで、我慢がならなかった。
 御用取次ぎの、柳沢吉保のようなわけのわからん軽輩が、偉そうにふんぞり返っているのも業腹だ。
 ここは、一気に体制の転覆を図り、もって政治体制を一新するのだ。
 オルレアン公爵には彼なりの志があったのだ。
 能力的に兄に劣るとも思われないが、長幼の序と言うものは如何ともしがたい。
 そんな理由で、オルレアン公爵に追いやられた己も気に入らない。
 従兄弟のバロア侯爵とも語らって、今回の行動を決めた。

「憂国の志士か…」

 いや、不正の温床ってアンタ、あの人のいい王様にそんなことできますかいな~。

 とは言え、ゆるい王室のおかげで、官僚は国家予算を横領したり、賄賂をとりまくったりして、ろくでもない政治がはびこっている。
 これは、見過ごしにできない状態だ。
 国王陛下の御用取次ぎ、アントン=フェランがその筆頭か。
「見つけたら、ただはおくまい。」

 オルレアン公爵は、口にしたワインとともに吐き出す。
 苦々しい顔が、その憎悪を物語る。

 マートモンスを西に見て、北東に位置するゲルマニア帝国は、イシュタル王国の国境付近に兵士を集めていた。
 不穏な空気に、国境警備のため、五〇〇〇人の国軍兵士を送り出し王国は胸をなでおろした。
 当面は、この兵力で、不穏な動きはけん制できるだろう。
 南西に位置するロマーニャ王国は、その懐にオシリス教の聖都を内包していて、宗教色の濃い政治体制である。
 その聖都から、妙にいやな空気が漂ってきて、イシュタル王国は警戒を強めていた。

 心ある貴族のうち、陸軍の将軍オルクス=マルメは、寡黙で律儀な性格だが、政治には疎かった。
 実直過ぎて、政治的駆け引きがうまくないのだ。
 まじめに、堅実に生きる者には、若干暮らしにくい世の中である。
 その友人、近衛騎士団のシモン=ド=ジョルジュ将軍は、政治にはそこそこ通じていたが、彼もまた政治の世界には興味がない。
 近衛の騎士たちが、働きやすい環境を得るために努力してきたのだ。
 そんな二人は、友人であるカズマをなくして、意気消沈していた。
 なくしたとはいえ、別に亡くなったわけではない、この国がいやになって出奔してしまったのだ。

 それほど、いやになるほど、この国は駄目なのか?

 二人の共通する疑問であった。
 自分たちが守る王家は、実に人が好く自分たちにも良くしてくれる。
 尊敬するに値する王だと思っていた。

 しかし、カズマは違った。
 王家にはもっと非情さが必要だとも言っていた。
 時に、兄弟すら切り捨てる心の持ちようがなければ、政治などするものではないとも。
 今になっても、彼の言いたいことは良くわからない。
 政治とはなんだ?
 領地を運営するだけなら、家にいる執事で十分ではないか。
 家臣たちも、十分数はいる。
 領地を運営して、税収を上げるのになにも苦労はしていない。
 だが、カズマは違う。
 自ら産業を興して、領民を富むように誘導している。

 自分たちにはない意識だ。

 この国は、現状維持に慣れすぎているのかもしれない。

 長く、発展や開発というものがなされず、現状維持が当たり前になっていた。
 この五百年と言うもの、大きな飢饉もなく、国は維持されてきた。
 魔物の暴走など、それも自然災害のうちである。
 大規模災害は、なにも水害や、火山の爆発だけではない。
 それでも、町や村は増えもしないが、減りもしない。
 この国は、このまま千年でも過ぎていくのではないか?
 まだまだ、グローバルな考えに至っていない、王国の政治にはカズマの思考が理解できないのだ。



 だが、その夜、静寂を破るファイヤーボールが打ち上げられた。


 どおん!と言う、腹に響く重低音が深夜の王都に響き渡る。

「「「わあああああ!わあああああ!」」」
 王都の城門は、夜間は閉じられているものだが、そこに特大のファイヤーボールが立て続けに十個も打ち込まれれば、たまらず城門も崩れてしまう。
 なんということでしょう。
 その城門をおしひろげて、王都になだれ込んだのは、オルレアン公爵の軍だった。
 もちろん、カズマに完膚なきまでに叩かれてしまったが、死者はあまり出なかったため、再編成された。
 怪我をした兵士は、治癒術士がぶっ倒れるまで治癒術をかけさせられたため、みな復旧している。
 カズマが手加減をした?

 そうかもしれませんねえ、くくく…

 死者を出すより、けが人を多くしたほうが、確かに敵の効率は悪くなるものだ。

 城門から王宮に向けては、一直線にメインストリートが開けている。
 全幅一〇〇メートルもあるメインストリートだ。
 その両脇に、多くの商店はここに店を構えているが、みな寝静まっている。
 そこを、派手にファイヤーボールを打ち上げながら、ライトの魔法で道を照らす。
 ど~ん!
 ぱぱぱ~ん!
 まるで、お祭り騒ぎである。
 君たちは、何をしにきたのだね?
 派手好きな王弟らしいっちゃあらしいが、夜襲に来たのなら、もっと静かに行動すべきじゃないのか?

「「「「レヴォリュシオン!レヴォリュシオン!」」」」

 派手な声を上げながら、進軍するオルレアン兵士たち。

 革命ですか?

 レヴォリュシオン、などと叫びながら、一直線に進む。

 商店には目も向けない。
 一糸乱れず、まっすぐ進む姿は正規な国軍のようだ。
 まあ、私設軍とは言え、オルレアン公爵は王弟なのだから、正規軍の仲間とは言える。
 今回は、徹底的に略奪行為を禁じられた。
 それはそうだ、これから支配する町を、略奪などで痛めつけてどうするのか?
 一応、オルレアン公爵だって、頭はある…というか、側近が徹底したのだが。
 反対方向の城門には、王の従兄弟バロア侯爵。

 こちらも、粛々と進む。

 閉じられた城門は、いきなり魔法攻撃を受けてその障壁ごと破壊された。
 急激にエネルギーを受けると、どうしてもその保護限界を超えてしまうのだ。
 これは、魔法理論で確立されたものだが、実際に破壊するまでの魔法力はその人数に比例する。
 バロア侯爵は、保有する魔法兵士のほぼすべてでやっと破壊に至ったのだ。
 ただし、ここで使用不能になった魔法兵士は約半数に至る。
 その魔法兵士たちは、入り口で待機することとなった。
 簡単に言うと、気絶しているんだが。

 歩兵部隊は、槍を前面に構えて、隊列を整えて街路を進む。
 こちらも、領軍としてはなかなか訓練が行き届いている。
「あちらも派手にやっているようだな。」
 こちら側からも、派手に打ちあがるファイヤーボールが見える。
 見えるようにやっているんだが、夜空に浮かぶ大量のファイヤーボールは、浦安のパレードのようだ。
 五十万人の住民たちは、息を潜めて鎧戸を固く閉ざしている。 
 いきなり現れた軍勢は、オルレアン、バロア合わせて一万二千人。
 近衛の兵士二千人と陸軍五千人を合わせても、数で負けている。

 王国軍は二万人を擁するが、国境警備などに向かっているため、即座に対応できるのは現状の七千人でしかないのだ。

 魔法で照らし出された石畳の道は、無骨な軍靴で踏みしめられ、油断なく構えた兵士たちは黙々と進む。
 みな、その額に緊張を貼り付けている。
 兵士たちは、ただひたすら王城を目指している。
 王都は少しずつ育ってきた街である。
 人が増えるごとに、外に向かって城壁が広がり、何重にも城壁が並んでいる。
 王城を中心に、同心円に広がった、まあカタツムリの殻のような格好をしている。

「ご注進!」
 下士官の一人が、近衛将軍の下にやってきた。
「なにごとか!」
 将軍は、仮眠のソファから聞いた。
 かけていたマントを、はがす。
「は、オルレアン公爵、バロア侯爵謀反!」
 下士官が告げる簡潔な報告に、一気に眠気も飛んだ。
「なんと!近衛は全員起床!すぐに持ち場に着け!」
 近衛軍将軍、シモン=ド=ジョルジュは布団代わりのマントを跳ね除けて、当直のソファから立ち上がった。
「まずいな、陛下をどう避難させるか。」

 王弟は、抜け道を知っている。

「ちくしょう、このままでは陛下の御身が…」

 王宮を駆ける侍従の姿があった。
「みなさまー!!みなさまー!謀反!謀反でございます!」
「みなさま、おであいめされー!」
 薄暗い廊下に侍従の声が響き渡る。
 国王陛下は、その寝所にご就寝めされておられたが、侍従の声でご起床あそばされた。

「なにごとか。」
 侍従長が、挨拶もなく寝所に駆け込んでくる。
「オルレアン侯爵が、兵を上げてございます。」
 侍従が、厳かに返答する。
「なんと、謀反であるか。」
「いいえ陛下、革命(レヴォリュシオン)でございます。」

 …完全パクリだな…

「陛下!」
 侍女に伴われて、王妃も姿を見せた。
「うむ、近衛のほかに兵士はどれほどいるか。」

「王宮には近衛二千人、陸軍千人ほどでございます。」
 国王陛下は渋面をお見せになる。
「賊は?」
「王弟オルレアン公爵軍五千でございます。」

「陛下~!」

 国王陛下の寝所には、宰相の青ざめた顔が飛び込んできた。
「陛下、王城を賊軍が取り囲んでございます。」
「王城に攻め込まれたのか?」
「いえ、まだそこまでは。ただいま、賊軍の火魔法をレジスト、水魔法での相殺で防いでおります。」
「住民はどうした。」
「は、賊軍は城門を破壊した後、一般住居には目もくれず、一直線に王城を目指した模様。」
「ふむ、マシューめ、完全にこの城を落とすつもりだな。」
「ただいま、シモン=ジョルジュ将軍が指揮を取ってございます。」
「王城の外にある陸軍屯所はどうか?」
「どうやら、別働隊に攻められ、そこから出られない状態のようです。」

 王城の城門は固く閉ざされ、そのうえ防御魔法により守られている。
 さらに、近衛の兵士たちは入り口に土嚢を積んで、城門を強化した。
 魔法兵士は、城壁の上から警戒をし、賊軍に対して一歩も引かぬ構えである。
 オルレアン兵からの魔法攻撃に、相対魔法で相殺しつつ、けん制も忘れていない。

「やりおるわ。」
「たいまつを持った兵士は、ぐるりと王城を囲んでいるようです。」
「是非もなし!」
 国王陛下は着替えた後、剣を取って立ち上がられた。
「奥と姫はどう避難させるか。」
「それが、抜け道はオルレアン公に押さえられた模様です。抜け道から進入しようとした兵士と、門衛との小競り合いが起こっております。」
「そうか。破壊して、瓦礫でふさいでしまうがよい。」
 ヘルムート王は、静かに命令を出す。
「陛下、わらわもお供申します。」
「ちちうえ~。」
 寝巻きのまま、お二人の姫も寝所にやってきた。
「うむ、安心するが良い、ここは安全じゃ。」

 陸軍大臣エマヌエル侯爵は、その邸宅でいきなり拘束された。
 これにより、陸軍の命令系統に齟齬が出て、兵士が右往左往することとなり、オルレアン軍に有利にはたらいている。
 陸軍歩兵連隊第五隊長アルマン=ボルドーは、兵士二百名を率いて王宮を目指していたが、厚い守りに賊軍を破れずにいた。
「ちくしょう、ダメだ!」
「どうします?」
「全軍退避!兵舎まで引くぞ!」
 陸軍らしく、走って逃げる。
 レジオで鍛えて来た者たちだが、いかんせん数には勝てん。

 いきなり街中で火炎が巻き上がった。
「どこだ!」
「は!大聖堂方面ですね。」
 副官は、立ち上がる炎を見つめた。
「大聖堂か…なにがあった?」
 アルマン=ボルドーは、額に汗を流した。
「あの色は、ファイヤーボールですね。」

「「「わああああ!」」」

 バロア侯爵軍は、大聖堂に乱入していた。
「くそ坊主どもを根切りにしろ!」
 皆殺しと言うことだな…
「生臭坊主は全部殺せ!」
 なんと言うことか、バロア侯爵軍は、大聖堂の制圧でなく虐殺を目的としていた。
「やつらは、政治に口出ししすぎたからな。」
 坊主のやり口にイライラとしていたらしい。
「まことに、くそ坊主どもには辟易しておりました。」
 なるほど、大聖堂のみなさんはけっこう嫌われておりましたか…
 第六天魔王もかくやという狼藉で、老若男女かまわず根切りにされた。
「みなのもの!乱取りを許す、隅から隅まで奪え!」
 大聖堂にはいきなり、盗賊に襲われたようになった。彼らは、教会の専横を許すつもりはないようである。
 蜀台だの皿だの、持てる限りの財を手に外に出て来た。

「見ろよ!金貨だぜ!」
「こっちは宝玉だ。」
 兵士は、目をぎらぎらさせて、奪った財宝を自慢している。
 士官もそれを止める気もない。
 奪った財宝は、奪ったもののポケットに入れてかまわないらしい。
 その方が、より根こそぎにできるので。

 くそ坊主どもは、教会前の広場に山積みにされた。
 その数、約五百人。
 前代未聞の事態である。

「教会は空になったか!」
「「「ははー!」」」
「よし、それでは政治犯を閉じ込めている、バスチーユに向かえ!」
「「「ははー!」」」
 バスチーユ監獄は、サンタントワーヌにある古い砦跡だが、壁が分厚いため政治犯をまとめて放り込んでいる。
 もともと、王都の西を守る城塞であったが、王都の拡張により取りのこされた。
 城壁が分厚くて、砲撃にもびくともしない、石づくりの重い建物である。
 一室はあまり広くはないが、天井までの高さが五メートルを越える。
 サイテ中洲の川をはさんだ北西側にある。

「市民には、極力怪我をさせるな!」

『ファイヤーボール!』

 バスチーユ監獄を守る兵士は、三〇〇人ほどしかいない。
 施設の堅牢さから、脱出が困難なこともあって、看守は少ないのだ。
 それが今回は、アダとなった。
 城壁から叩き込まれる魔法に弓矢に、辟易としながらも、バロア軍は数を頼りに攻め込む。
 バロア侯爵軍は五〇〇〇人近い人数である。
 まとめて打ち込まれる攻撃魔法に、城壁にいる兵士はひとりまたひとりと打倒されて行った。
「それ!城門を打ち破るのだ!」
 がんがんと、うちこまれるファイヤーボールに対抗する防御魔法と、相殺する水魔法。
 城門前には、水蒸気の厚い壁が上がっている。
 さすがに、バロア軍の魔法使いの方が、数が多かったようで、防御側は押されぎみである。
 徐々に、防御魔法の限界が訪れて、少しずつはがれて行く。 
 いつしか城門は倒れて行った。

「「「「わああああああ!」」」」

 すでに監獄を守る兵士はなく、監獄は解放されて行った。

 オルレアン公爵と、バロア侯爵は、ようようにして合流かなった。

「ゲルマニアに情報を流して、国境を固めさせたおかげで、国軍の兵士が減っているのもよかったな。」
「左様、オルレアン公爵殿の思惑通りと言うことでござる。」
「ふむ、さて、王城を落として、くされ官僚どもを一掃してやろうかのう。」
「さても、痛快でござる。」
「まことに、このくには末期的な腐敗にまみれておる。それを放置している国王<あにうえ>も捨ててはおけんのだ。」
「そのとおりだな、昔はよく三人で遊んだものだがな。」
「それを言うな。」
 幼馴染の兄弟と従兄弟である、さまざまな思惑が入り乱れて、この挙兵に至ったのだ。
 街に兵士はあふれているが、みな鎧戸を固く締めて、息をひそめている。
 そんななか、兵士たちも狼藉には及ばず、整然と王宮広場に集まってきた。

『レヴォルシオン!レヴォルシオン!』

 兵士たちの叫びは、王都の夜空を焦がしていった。



 その夜、カズマは左手の聖痕に熱を帯びて目を覚ました。
「な、なにごと。」
 手の甲には、じりじりした熱い刺激がある。
 はっきり言って、痛い!
 隣のティリス、アリスが目を覚ます。
「殿、いかがなさいました?」
「お屋形さま?」
「聖痕が熱い、どうしたんだジェシカ!」
 寝室の天井が光を持って、ジェシカが舞い降りて来た。」
「大変ですカズマ、オルレアン公爵が謀反を起こしました。」
「へえ、あのおっさん、とうとうやったか。」
「従兄弟のバロア侯爵も兵をあげています。」
「そうか、王都は落ちたのか?」
「いえ、王城まで兵士が迫っていますが、攻めあぐねているようです。」
「ふん、さすがに王都で狼藉をしては、後の統治がやりにくくなるくらいの頭はあるんだな。」

 ジェシカは、ため息のように聞いた。
「ずいぶん落ち着いていますね。」

「慌てたってしょうがあんめぇ。」
「まあ、それは…」
「オシリスさまは、あいかわらず見守っているだけか。」
「ここで手を出すことはできませんよ。」
「まあ、神様だからな。」
 神様ってそんなものですよ。

「ええ、ただ、今回は大聖堂が襲われて、総主教以下すべての聖職者が殺害されました。」
「なんだって?あいつら、そこまで徹底したのか。」
「ええ、オシリスさまはお嘆きです、国教を排除するつもりでしょうか。」
 ジェシカの声が悲痛に響く。
 神は否定されたのか?
「いや、クソ坊主が政治に口出しするのが、あいつらは嫌だったんだよ。それはわかる。」
 宗教が否定されたわけではない、その伝道者が否定されたのだ。
 これは、教会にとっては打撃である。
「まあ、彼らはやりすぎた感がありますね。」

「まあいい、王さまはどうするんだ?」
「いまは、宰相たちと城の中にいますね。」
「しょうがねえ、助けてやるか。」
 カズマは、自分の黒い服を身につけて、ユリの刺繍の入ったマントをはおった。
「お前たちは、ここで待機。少し大人数を連れてくる、トラたちを使って食事の用意をしてくれ。」
「「かしこまりました。」」
「ジェシカ、俺は俺のやりたいようにやる。」
「かまいませんよ、オシリスさまの導きがありますように。」
「うん。あとは任せてくれ。」
 ジェシカは、来たときのようにゆっくりと天井に消えて行った。

「何人になるか…」
 カズマは、瞬間移動の魔法を発動させ、一〇〇〇キロを一気に飛んだ。

「な!なにごと!」
 宰相は、いきなり現れた白いマントに、その杖を向けた。
 マントは、くるりと渦を巻くようにカズマの体にからみつく。
 攻撃魔法の詠唱に入るが、時間がかかる。
「よせやい、宰相。」
 カズマは、手のひらを出して、トルメスを止めた。
「か!カズマ!」
 トルメス宰相は、カズマと気づいて杖を下ろした。
 詠唱途中の魔力が、杖の先で小さな渦を作って霧散する。

「陛下はどうよ、無事なのか?」
「ああ、まだここまでは攻め込んでこない。」
「そうか、非常時だまかり通るぞ。」
「ああ、こっちだ。」
 宰相は、蒼い顔をしてカズマを先導した。
 会議用の小部屋には、国王一家と近衛のジョルジュ将軍がいた。
「カズマ!」
 ジョルジュ将軍は、その白皙の顔をもちあげて、カズマに微笑みかけた。
「おう、久しぶりだ。」
 カズマは、乱暴に手を上げて、

「何者だ!」
 御用取次ぎの、アントン=フェランが誰何する。
 豪華な刺繍の入った上着がうっとおしい。
「なんだてめぇは、コッパ役人が偉そうにするな!」
「な!」
 アントン=フェランは、目を見開いた。
「この非常時に、剣のひとつも持たずに、陛下のそばにいるとは、役立たずが!」
「…」
 フェランは、視線を下に向けて舌打ちした。
「下郎!男爵に向けて、平民が舌うちとは偉くなったものだな。」

「げ、下郎?」
 フェランは、顔を上げてカズマを見た。
 カズマの目は、燃え盛るように力強い。

「カズマよ、そのくらいで。」
「ああ、陛下…失礼しました。」
 陛下は、鷹揚にうなずいた。
「元気そうで何よりだ。」
 カズマは、幼い姫たちを覗き込んだ。
 姫たちは、夜も深いが、ふたり抱き合って震えている。
「姫様、プリンですよ、どうぞ。」
 二人に、甘いプリンを渡す。
 スプーンが付いているところが、芸が細かい。

 カズマは、姫様の横から王様に顔を向けた。
「陛下、そろそろそのクソ重たい王冠を捨ててもいいんじゃないですか?」
「カズマ…」
「あなたは、今まで十分に苦しんできた、動かない官僚をなんとか動かしてきた。それは、俺も認めるところです。」

 カズマは、アントン=フェランをにらみつけた。
 それだけで、フェランは失神しそうである。
「…」
 国王は、やせた顔をカズマに向けている。
 自慢の黒いお髭が、今はしょげたように下を向いている。
「もういいですよ、肩の荷はオルレアン公爵が肩代わりしてくれるようですし。」
「カズマ、私は…」

「私が許してあげます。神の使徒たる、このカズマが。」
「いいのか?」
「はい、ですからもう逃げてしまいましょう。」
 陛下は、両目からぼろぼろと涙をこぼしている。
「いいのか…本当にいいのか…」
 宰相は、酢を飲んだような顔をしている。
 いままで祭り上げてきたものが、目の前で崩壊していくのだ。
 悔しさも、せつなさも、ないまぜになった表情をしている。
「陛下…」
 宰相の声は、たまらなく弱々しい。

「宰相、もういいだろう。陛下を楽にしてやっても。」
 カズマも、そんな宰相に説得するような声音で話しかけた。
「ワシの力が足りず、申し訳ない…」
 だれに言うでもなく、宰相の目は虚空に踊る。
「あんたも苦労したんだから、それは言うなよ。じゃあ、陛下はさらっていくが、あんたはどうする?一緒に行くかい?」
 宰相は、カズマの耳元でささやいた。
「それは言うな、首を差し出すものが一人くらい必要だ。」

「…」
 カズマは、まじまじと宰相を見つめた。
 宰相は黙って頷く。
 表情は硬い。


 そのまま、カズマは国王一家を連れて飛んだ。
 部屋には、宰相だけが残された。



「何をする!はなせ!はなせ!」
 アブラきった声がする。
「何事だ騒がしい。」
「はっ!大僧正さまを発見しました。安全のため、こちらにお連れしました。」
「ごくろうだった、お前も逃げるがいい。もう、ここはもたん。」
「は、しかし。」
「いいのだ、王国は終わった。」
「宰相さま…」
「さ、行け。」
 兵士は振り返り振り返り、廊下を走っていった。


「ふん、さて大往生と行きますか、大僧正殿。」
「なななにをおっしゃる、宰相殿。」
 大僧正は、財産を詰め込んだかばんを大事そうに抱えている。
「ははは、この五百年栄えたイシュタル王国も、内部から崩壊するとは思いもしませんでした。」
 宰相の目には、涙が浮かんでいた。
「なにより、宗教の腐敗、官僚の腐敗、ふっふふ、材料にはことかきませんな。」
「宗教の腐敗など!」
「ジェシカ様に指摘されたのに、その絹の衣はどう言い訳なさる?」
「うう!」
「まあ、国の腐敗の責任を取って、お互い首を差し出そうではありませんか。」
 清々した顔をする宰相と、対照的に、どす黒く執着する大僧正。
 本来なら、反対だろうにな。
「なぜわしが!」
 大僧正は、未練たらしく叫ぶ。


「あなたが、この国の宗教の頂点だからにほかなりませんな。」
「では!では!国王はどうした!」
「ま、陛下は、十分にその責を果たされたと思いますよ。」
「ちくしょう!国王だけ逃がしたな!」
「ひょっとしたら、王国が復興するかもしれませんからな。」
「納得できん!」
「ま、それでもですよ、ここで自害するか、やつらに首を切られるか、どちらがよろしいかな?」
「…」
「まあねえ、ワタシも痛いのはいやだなあ。」
 大僧正は、がっくりと首を落とした。
「ワシもだ。」
 その足元には、金貨の詰まったかばんが落ちた。



「ここは?」
 国王は、狭い部屋に転移されたので、カズマに聞いた。
「仮の我が家です、まずは落ち着いてください。俺は、もう一度王都に飛びます。」
 そう言って、カズマは再度王都を目指す。


「陛下、どうぞこちらに。」
 アリスティアが前に出て、国王とその家族をソファに座らせた。
「姫さまたちは、おねむですね、トラ、ゾフィーとライラに寝所の準備を。」
「はいにゃ、奥方さま。」
 トラは、二人に合図を送ると、二人は姫たちを抱き上げて、寝所に運んだ。
「国王陛下、王妃殿下、まずはお飲み物でもいかがですか?」
「ああ、ありがとう。」
 二人は、差し出されたリンゴ酒を手に取った。
 銀のコップは、よく冷えて霜が降りている。

「お疲れでございましょう?おなかは空いていらっしゃいませんか?」
 そう言って、ティリスはサンドイッチの乗った皿を持ってきた。


「心づくし、かたじけない。」
 国王は、サンドイッチをかみ締めて、ほろりと涙をこぼした。
「陛下…」
 王妃は、労わるように国王の背中をなぜた。
「無念だ…」
「カズマは、どう言いました?」
 アリスティアは、そんな国王に伏し目がちに聞いた。
「俺が許すと…」
「さようですか、でしたらそれはオシリス女神の言葉と、お受け取りください。」
 アリスは、国王の前に跪いて、そう告げた。
「いいのか?」
「カズマの言葉ですから。」

 アリスにしてみれば、自分の家を没落させたのも、この国王である。
 腹の中には、ぬぐいきれない黒いものもあろう。
 だが、この国の第二聖女でもある。
 腹の中の黒いものは、いっさい顔には出さず、国王を労わることにした。



 玉座の前の広い部屋は、薄暗く、宰相と大僧正のほかは誰もいない。
 部屋に入ってきたのはジョルジュ将軍だった。
「宰相、いいんですか?」
「ああ、ジョルジュ将軍、君たちも逃げろ。もう、この王国はダメだ。」
「しかし。」
「なに、一般の兵士にまで類は及ぶまいよ。君と、陸軍将軍のマルメと、二人がいなくなれば何もできまい。」
「不名誉な役ですね。」
「なに、名誉で腹は膨れん。クサレ官僚を放置してきたのは、ワシも同罪だ。」

 しゅんと、音がしたかどうかは別にして、カズマが姿を現した。

「シモン=ジョルジュ、奥方を連れて来た。」
「カズマ!」
「オルクスの奥方も子供もいっしょだ。」
「手回しがいいな。」

「なに、ついでだ。」
「カーミラ、無事か?」
「はい、取るものもとりあえず、あなたの着替えや家財など、袋に詰めてまいりました。」
「それはけっこう。」
「マリーアンどの、御同様か?」
 マリーアンは、小さな皮袋を持ち上げて、カズマに答えた。
 その腕には、幼子が抱かれている。
「はい、とにかく持てるものはすべて詰めて来ましたわ。」
「大変結構ですな。」
 オルクス=マルメは、兵士に連れられて会議室にやってきた。

「か、カズマ!」
「よう、待たせたな。」
「マリーアン!」
 マリーアンは、黙ってうなずいた。
「いくぞ。」
 イシュタル王国の貴族百二十家のうち、どれほどが生き残るのかはわからないが、ここに三家が脱出するのだ。
 長い歴史を誇る王国も、下克上の波がくれば、明日はわからない。
 イシュタル王国五〇〇年の歴史が、ここで終わってしまうのか?
 長い夜が明けようとしていた。

 シモン=ジョルジュ夫妻とオルクス=マルメ夫妻を伴って、峡谷に戻ってきたカズマは、若干脂汗をかいていた。
 さすがに、跳躍距離が長いと、魔力の消費が多い。

 カズマは、国王と目が合うと、にっこりと笑った。
 そのまま、また飛ぶ。
「カズマ!」

「宰相、行こうぜ。」
「レジオ男爵!」
 また飛んできたカズマに、宰相は驚いた。
「なに、アンタみたいな人間も、必要だ。」
 カズマは、どさりと荷物を降ろした。
「なんだこれは?」
「なに、こんな状況だ、死体はいくらでもある。こいつにアンタのローブを着せて転がしておけばいい。」
「そんな…」
「オルレアン公爵が欲しいのは、あんたの首だけだ。あんたかと見えれば、文句も言うまいよ。」
「…」
「だまって、ローブを脱げ。」
「わかった。」

 宰相は、勢い良くローブを脱いで、死体に着せた。
「そそそ、それではワシの身代わりがいないではないか!」
「あ?あんた、生き残るつもりかよ。」
 カズマは、無感動に大僧正を見た。
「たたた頼む!レジオ男爵どの、助けてくれ!」
「ああ?しょうがねえなあ。そこにローブを置けよ。」
「ひ、ひいい。」
 大僧正は、ローブを脱いで、そこに置いた。
「ファイア。」
 ローブは、半分こげてそこに炭を作った。
「ま、これでごまかされてくれればな。」

 カズマは、二人を連れてレアンの町まで飛んだ。

「ここは?」
 大僧正は、夜中の肌寒さに少し震えたようだ。
「なに、レアンの町だ。あんたは、ここから落ちのびるがいい。」
「か、かたじけない!」
 そう言ってすぐに駆け出す大僧正、安全かどうかは知らんぞ。
「さて、俺たちも逃げようかね、あんた家族は?」
「家にいるのは、使用人だけだ。」
「そうか、そのうち所帯でも持ったらどうだ?ゴルテスもロフノールもやる気いっぱいだぞ。」
「なんと、あの二人が?」
「さて、どうする?ここでわかれるか、陛下のそばに行くか?」
「陛下のそばがいい。」

 長年の苦労人は、ぼそりとそう言った。
 これもまた、忠義のひとつの形か。


 こんどこそ、カズマの魔力は打ち止めだ。
 やはり、かなり無理してしまった。
 王都までの往復は、むっちゃ消耗がはげしいんだ。
 カズマは、館に着くと同時に、意識を失った。
「お屋形さま!」
 一番に飛びついたのは、ティリスだった。
 アリスと二人で、寝所に運び込む。
「あ、あ~早すぎて、手が出せませんでした。」
 メイドたちは、トラに言い訳をしている。
「まあしょうがないにゃ、奥方さまたちにはかなわないのにゃ。」

 トラも、苦笑いしか出てこなかった。
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