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第八話 ばかやろうはお前だ その③
しおりを挟む約三〇〇キロはありそうなイノシシは、買い取り係りのコステロによって秤に乗せられた。
「三〇〇と五〇キロだな、銀貨二五枚。」
すげえ稼ぎだな。
「やったー!」
ミレーとジャックは小躍りしながらギルドの受付で叫んだ。
「コステロ、安くねえか?」
俺は少し不満だ。
「ああ?」
「血抜きもしっかりしてきたイノシシだぞ、銀貨が足りないんじゃないか?」
「おい、ユフラテ、俺の査定が気に入らんのか?」
コステロは、俺の方を向いて声を荒げた。
「ああそのとおりだ、やけに安い。」
俺がそう言うと、コステロはやけに強気だ。
「ギルドが買わないって選択もあるんだぞ。」
無精ひげがいやらしく歪む。
それを見て俺は真正面から目を合わせた。
そらしたら負けだぜ。
そのうち、コステロの方が目をそらした。
「そうか…じゃあそうしよう。ギルドにゃ売らねえ。その辺で解体して、たたき売ってくる。」
「ちょ!ちょっと待て!」
コステロはあわてて手を出した。
「ギルドが冒険者をないがしろにするのなら、俺たちも信用しない。」
「ユフラテ!」
ジャックが、真っ青になっている。
「ギルドと冒険者はウインウインでなければならないはずだ。それを買いたたく?ギルドマスターの方針か!」
ジャックが取り成そうとする。
「そう怒るな、ユフラテ。」
「冒険者は命かけてイノシシ取ってきたんだ、お前ら命がけで査定しろ!」
俺は、コステロを睨みつけて言った。
「なんだ、なんの騒ぎだ?おお!イノシシじゃないか!」
ギルドマスターが出てきた。
「何の騒ぎもねえ、ギルドは冒険者をばかにしてるのか!」
俺は、マスターにも聞く。
「そんなことはないぞ。」
しれっと嘯くマスター。
「じゃあ、なんでこのイノシシが銀貨二五枚なんだよ。」
「ああ?悪くない金じゃないか。相場だぞ。」
「市場で売ってるイノシシ肉の相場から逆算したら、三五枚ないとおかしい。」
「それは組合の儲けも…」
「組合の儲けは、三五枚でも十分出るよな。どれだけハネる気だ!」
マスターはキョドる。
「バカ言うな。」
「バカはどっちだ!これ以上冒険者をいじめるなら、おれは殿様に直訴するぞ!」
「なんだと!」
マスターは、顔色をドス黒くしている。
「みんなのいる前で釈明してみろ、これはコステロの独断か、マスターの指示か!」
「…」
「はっきりしろい!」
「わかった、銀貨三五枚で買い取る。」
「そうじゃねえ!マスターの指示なのかって聞いてるんだ!ぶっ殺すぞ!」
ふだん温厚なユフラテの激高に、まわりはドン引きだ。
昼間とはいえ、組合員は三〇人くらいはいる。
ギルドの職員は、見えるだけで二〇人。
マスターは、自分の不利があからさまになって慌てている。
受付からマリエが飛んできた。
「ユフラテ、その辺で押さえて!」
マリエは、必死になって俺の腕をとらえて引っ張る。
「…わかった、じゃあこのイノシシはマリエに卸す。」
「よかった、ありがとうユフラテ。」
「この措置は、俺に対してだけなんだろうな、コステロ。組合全体だったら許さんぞ。」
「…」
この騒ぎは、すぐに組合の連中に広がった。
ギルドマスターが、ユフラテに対してひどいピンハネをしていたと、おもしろおかしく語られたんだ。
まあ、事実だろう。
やがて、もっと大きな騒動に発展するのだ。
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