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第一部
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脳内にある情報と照らし合わせて日々を過ごしていても、あっという間に時間は過ぎてしまう。
セルニオッド様との約束の日になり、わたしは王城へとやってきていた。いつ見ても、凄い広さと豪華さである。もう一つの世界では、観光名所としての城しか存在していないので、王政が現役の王城を見られるのはこちらの世界でだけ。
かつてはこれが当たり前だと思っていたけれど、今では少しばかり、現実離れした雰囲気を感じてしまう。
王城のメイドに案内されながら、セルニオッド様の私室を目指していると――廊下で、ふと、足を止めてしまう。
吹き抜けになった、二階の廊下部分。そこに、珍しい人を見つけたのだ。
控えめな黒のヘッドドレスと深紅色の花の髪飾りがロングストレートの金髪を見事に彩っている。装飾が少なめな、それでも高級感あるドレス。
――スフィカ様だ。
スフィカ・カルニル。セルニオッド様の姉に当たるお方。姉、と言っても、腹違いなので、ほとんど年齢は変わらない。半年ばかり早い生まれで――……いや、違うかも……。
今までは、スフィカ様の母親は、陛下の『お気に入り』の方だった。でも、今回、彼女はいない。これだけ仲睦まじいと噂されているのなら側室を取らないこともあり得る? いえ、でも、それなら、彼女がここにいるわけ……。
「――……」
ふと、二階の廊下を歩いているスフィカ様も、足を止めた。明らかに、こちらに気が付いている。
わたしは慌てて、スカートの端を持ち、頭を下げた。
「……ごきげんよう。キシュシー家のサネアと申します」
体に染みついた、令嬢としてのお辞儀。
体が勝手に動き――その実、頭の中では、別のことを考えていた。
スフィカ様がこちらを見て、わたしが頭を下げるまでに、彼女の顔をうかがうことができた。その一瞬でしっかり見えてしまったのだ。
今までの彼女とは違う、瞳の色が。
あれは王妃様と同じ色の、明るめの茶色だった。本来なら、『お気に入り』の方と同じ、紫色のはず……。こちらの世界には、もう一つの世界と違ってカラーコンタクトはないはずだし……。
ということは、スフィカ様の母親は、今回、正妃ということに……? でも、そうすると、セルニオッド様の年齢と合わない。セルニオッド様と双子、ということもないだろう。だって、そもそも、彼女は――。
「――、スフィカ? どうかしたの?」
わたしが固まっていると、二階から、また別の女性の声が聞こえてくる。
この声は……っ!
「あら、お客様?」
わたしが顔を上げると、先ほどまで一人だったスフィカ様の近くに、王妃であるデネティア様がいた。
セルニオッド様との約束の日になり、わたしは王城へとやってきていた。いつ見ても、凄い広さと豪華さである。もう一つの世界では、観光名所としての城しか存在していないので、王政が現役の王城を見られるのはこちらの世界でだけ。
かつてはこれが当たり前だと思っていたけれど、今では少しばかり、現実離れした雰囲気を感じてしまう。
王城のメイドに案内されながら、セルニオッド様の私室を目指していると――廊下で、ふと、足を止めてしまう。
吹き抜けになった、二階の廊下部分。そこに、珍しい人を見つけたのだ。
控えめな黒のヘッドドレスと深紅色の花の髪飾りがロングストレートの金髪を見事に彩っている。装飾が少なめな、それでも高級感あるドレス。
――スフィカ様だ。
スフィカ・カルニル。セルニオッド様の姉に当たるお方。姉、と言っても、腹違いなので、ほとんど年齢は変わらない。半年ばかり早い生まれで――……いや、違うかも……。
今までは、スフィカ様の母親は、陛下の『お気に入り』の方だった。でも、今回、彼女はいない。これだけ仲睦まじいと噂されているのなら側室を取らないこともあり得る? いえ、でも、それなら、彼女がここにいるわけ……。
「――……」
ふと、二階の廊下を歩いているスフィカ様も、足を止めた。明らかに、こちらに気が付いている。
わたしは慌てて、スカートの端を持ち、頭を下げた。
「……ごきげんよう。キシュシー家のサネアと申します」
体に染みついた、令嬢としてのお辞儀。
体が勝手に動き――その実、頭の中では、別のことを考えていた。
スフィカ様がこちらを見て、わたしが頭を下げるまでに、彼女の顔をうかがうことができた。その一瞬でしっかり見えてしまったのだ。
今までの彼女とは違う、瞳の色が。
あれは王妃様と同じ色の、明るめの茶色だった。本来なら、『お気に入り』の方と同じ、紫色のはず……。こちらの世界には、もう一つの世界と違ってカラーコンタクトはないはずだし……。
ということは、スフィカ様の母親は、今回、正妃ということに……? でも、そうすると、セルニオッド様の年齢と合わない。セルニオッド様と双子、ということもないだろう。だって、そもそも、彼女は――。
「――、スフィカ? どうかしたの?」
わたしが固まっていると、二階から、また別の女性の声が聞こえてくる。
この声は……っ!
「あら、お客様?」
わたしが顔を上げると、先ほどまで一人だったスフィカ様の近くに、王妃であるデネティア様がいた。
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