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第一部

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 ふわ、と開放感に目を開けると、そこは外だった。あたりを見渡すと、アビィさんたちもいる。
 わたしが草を引き抜いてしまった場所とは別のようだ。当然ながらエーリングさんはいない。
 ダンジョンに入る前はまだ日が沈み切っていなかったけれど、すっかり夜になっている。今何時なんだろう。
 わたしはポケットの中を探る。懐中時計を入れておいたはずだ。数少ない、盗まれなかった私物の一つ。

「――っ、と」

 ポケットから出そうとして、わたしはバングルを落としてしまう。そういえば、これもポケットに入れておいたままだったっけ。
 わたしは持ち主に返すべく、それを拾い上げ、ザムさんへと渡した。

「……この辺りって、どう街へと帰るんですかね?」

 返しながらわたしはザムさんへと聞く。多分、そう遠くはないと思うのだが、いかんせん、地理を知らないわたしは見当もつけられない。
 礼を言いながらバングルを受け取ったザムさんは「そう遠くないさ」と教えてくれた。

「君と俺の怪我を考えてゆっくり歩いたとしても、一時間もあればつくと思う」

「一時間……」

 なんとも絶妙な時間。足を引きずって歩くのも慣れたといえば慣れたが、一時間歩きっぱなしって結構しんどいぞ。

 ……ん? 一時間ってことは、もしかして、野営なし? なしになっちゃうよね? そうしたら、リリファちゃんと一緒に寝られないってこと!?
 嘘、かなり楽しみにしてたのに!

 勿論、早く帰ることができたらできたで、ショドーとひいさまと会える時間が早まるということだから、悪いことばかりじゃないんだけど……。それはそれ、これはこれ。
 うちのこが一番かわいいのは常識として、猫を吸うチャンスがあるのなら、逃したくない。

「……とりあえず、エーリングさん、探しましょうか」

 彼女と合流しないことには、リリファちゃんとの野営もしようがない。それに、足のねん挫と擦過傷だらけのわたしはともかく、ザムさんは一刻も早く手当をした方がいいのも事実。ゆっくりでも自分で歩けて、会話もしっかりできているあたり、命に別状はないんだろうけど、怪我がひどいことに変わりはない。
 エーリングさんが多少は手当のための道具を持っているとは思うけど、ちゃんとした治療ができるのなら、そっちのほうがいいしね。

 アビィさんが魔法で治してくれれば、と思わないでもないのだが、土の精霊ということは、光属性の魔法が使えないかもしれないし、仮に使えたとしても快くやってくれるような性格にも思えない。

 わたしは、エーリングさんの特徴と、分かれてしまった場所をザムさんに伝え、エーリングさんを探しに行くのだった。
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